悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。

ふまさ

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 カーラたちが去っていった屋敷に、パーシーは、一人でいた。使用人たちは、ペトロフ伯爵が連れ帰ってしまったので、本当に一人だった。

 知らぬ間に昼になり、夕刻になる。現実が受け止めきれず、ただただ呆然とするパーシーの耳に、玄関扉のノッカーの音が微かに響いた。

 一回。二回。そこで、もしやカーラなのではとはっとしたパーシーは、応接室から飛び出した。玄関扉を開けたそこに立っていたのは、アデルだった。

「……ああ、きみか」

 あからさまにがっかりと肩を落とすパーシー。いつもの様子と明らかに違う様子に、アデルが戸惑う。

「あの……学園を休まれていたようで、風邪でも引かれたのかと」

「……だったらよかったんだけどね」

 きみのせいで、ぼくの人生は滅茶苦茶だ。そう叫びたい気持ちをぐっとこらえ、パーシーは重く口を開いた。

「……悪いけど、ぼくはもう、きみとかかわることはできないんだ。だから帰ってくれないかな」

 扉を閉めようとするパーシーに、アデルは焦り、声をあげた。

「あ、あの! お母様から、今日も絶対にパーシー様とお茶をしてくるようにと言われていて……っ」

「……イリック子爵夫人が?」

「はい……駄目、でしょうか?」

 上目遣いで、アデルがパーシーを涙目で見つめる。そうしないと、どんな目に遭わせられるかわからない。そんな風に暗に訴えられている気がした。

 パーシーがため息をつく。それほどまでにイリック子爵夫人は、伯爵令息との繋がりがほしいのだろう。

 アデルと一切かかわるなと命じられたが、幸か不幸か、屋敷にはパーシーを見張る者は誰もいない。

(……学園を卒業すれば、父上が決めた令嬢と結婚することになる。そうなればきっと、ぼくに自由などなくなるだろう)

 更に言えば、複数の女性と遊べるのは、誰とも婚約していない今のうちだけなのではないだろうか。

 なら──。


「……わかりました。そういうことなら、仕方ないですね」

 パーシーは薄く笑いながら、アデルを屋敷に招き入れた。

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