悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。

ふまさ

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 パーシーは街で見つけた馬車に乗り込み、ペトロフ伯爵領にある、ペトロフ伯爵の屋敷を目指した。

 馬車の中。パーシーが頭を抱える。パーシーはパニック状態だった。アデルのことはむろんのこと、カーラの科白が頭をめぐる。


『──誰もあなたの行動を見張ってないとは思わない方がよいですよ』


(……どういう意味だろう。だって、屋敷には誰もいない。使用人は全て父上が連れ帰ってしまって……)


『アデル・イリックとは縁を切り、二度とかかわるな! 他のどの女ともな! お前の結婚相手は私が決める! これを破れば、お前をすぐさまペトロフ伯爵家から除籍するぞ!!』


 父親の怒号を思い出し、パーシーの肝が冷える。もしも、アデルと寝たことがばれたら。アデルを屋敷に泊めたことがばれたら、全てが終わる。

「……大丈夫、大丈夫だ。きっとカーラは、ぼくを困らせようとして、あんなことを……」

 言い聞かせるように、ぶつぶつと呟く。


 ──が。

「お前がここにくるより前に、雇った探偵から、伝書鳩で報告が届いてな」

 ペトロフ伯爵は、椅子に座るなり、開口一番にそう言いはなった。パーシーがペトロフ伯爵の屋敷の応接室で、目を見開く。汗が止まらず、パーシーは震えていた。

「……ち、父上」

「お前がカーラに婚約破棄を言い渡されたあと、何をしていたのか。事細かく書かれていたよ。しかし、カーテンも窓も閉めずにあの女を抱くとは。隠す気すらなかったと見える」

「あ、あれは……あの女が、どうしてもと泣いてすがってきて……」

 ドンッ!!
 ペトロフ伯爵は、応接室のテーブルにこぶしを振り下ろした。

「──追加で報告がきた。その女が、お前に暴行されたあげく、強姦されたと周囲に言いまわっているとな」

「な……っ! そ、そんなことはしていません! 父上だって知っているでしょう?! あの女はっ」

「それを信じなかったのはどこのどいつだ!!」

「……そ、それは」

「おかげで我が家の評判は悪くなる一方だ──カーラの読みが、見事に的中したというわけだな」

 パーシーは顔面蒼白になりながら、項垂れた。とめどなく、後悔と絶望の涙を流す。けれど全ては手遅れで、許されるはずもなく。


 パーシーは身一つで、屋敷を追放されたのだった。

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