姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。

ふまさ

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 まだ一言も発していないマイラに、ヘイデンが一方的に告げる。

「いいか、よく聞け。王妃教育が終了するまで、教育係に見放されないこと。これが条件だ」

 条件も何も。と言い返したいところだったが、マイラは全く違う疑問を口にする。どう転ぼうが、自分に明るい未来などない。それにどうせ、自分の意見が通ることはない。これは決定事項なのだ。そのことを嫌というほど理解していたから。

「見放される、とは」

「お前では駄目だ。見込みがない。そう思われないように、必死に勉学に励め。教育係がお前を認めないと判断したら、即刻お前との婚約は破棄する。いいな?」

「…………」

 マイラは黙ってパメラを見た。教育係にそう告げられたのは、この人なのだろうなと。それをパメラはどう受け取ったのか。

「大丈夫よ。あなたの取り柄なんて、勉学だけじゃない。だからきっと平気よ。頑張って!」

 両親に視線を移す。表面上はにこやかだったが、断ることなど許さないという圧を感じた。

(……どにらにせよ、断る道などないのなら)

 マイラはぴんと姿勢を正した。

「お話はわかりました……けれど、王妃になるための勉学は、とても大変なことと聞きます。それこそ、僅かな時間すら惜しむほどでないとならないでしょう」

 ヘイデンが「だから何だ。まさか、断るつもりか?」と眉をひそめる。

「いいえ、とんでもありません。わたしは殿下に、どうしても認めてもらいたい。そのためには、移動の時間すら惜しいのです」

「移動?」

「はい。王妃の教育は、宮殿で受けることになりますでしょう? 屋敷への行き帰りの時間がもったいないと思うのです。ですからどうか、宮殿の端にある小部屋でもよいので、教育を受ける間だけでも、住まわせてもらうことはできないでしょうか?」

 この提案に真っ先に声を荒げたのは、パメラだった。

「まあ! マイラったら、あつかましい!」

「そう言うな、パメラ。王妃になるための教育がどれほど大変かは、お前が一番知っているはずだろう?」

「……ですが。あたしでさえ、宮殿にお部屋などないのに」

「私の部屋には、毎日のように来ているではないか」

 見た目だけは良い二人が、身体を寄せ合う。あらゆる意味で似た者同士だと、マイラは頭の片隅で思った。
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