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「──で?」
二人の姿が見えなくなるやいなや、リタが口を開いた。ラナは思わず、視線を遠くに逃がしてしまった。
「ラーナー?」
リタに詰め寄られ、ラナが後ずさる。ラナの目は泳ぎまくっていて、リタは呆れながら腕を組んだ。
「なにあれ。あからさま過ぎる態度の変化。ニックの姿を見つけるだけで頬を赤く染めていたあなたが、いったいどうしたの?」
「……わたし、そんなだった?」
「そうよ。最初のころなんて、ニックがちょっと甘い科白を吐いただけで、腰がくだけそうになっていたこともあったじゃない」
うう。ラナは思わず、机に突っ伏した。お金だけが目当てだとまるで気付かずにいた、昨日までの愚かな自分が情けなく、恥ずかしかった。いっそ死んでしまいたいほどに。
「ちょっと、ラナ? 本当にどうしたの?」
心配そうな声音のリタに、ゆさゆさと身体を揺すられる。それでもラナは、顔を上げようとしない。
「なにかあったんでしょう? 幼馴染みの私にも話せないことなの?」
「……違う。むしろ、あなたにしか話せない。でも、ここじゃ言えない。絶対に、誰にも聞かれたくないの。だからお昼に、誰もいないところで話すわ」
ぼそぼそとラナが呟く。リタは「わかった。それまでは待つわ」と大きく息を吐いた。ありがとう。ラナは小さく笑った。
昼休憩の鐘が校内に鳴り響く。リタは教師が教室を出て行ってすぐ、ラナの腕を引っ張りながら教室を出た。
「何処に行くの?」
引っ張られながら、ラナが訊ねる。
「誰にも聞かれたくないんでしょう? だから、誰もいないところに行くのよ」
「そんなところ、あるの?」
「特別教室」
「確かにこの時間、誰もいないけど……鍵がかかってるんじゃないの?」
リタは鍵をラナに見せ「大丈夫。先生から預かってきたから」と口角を上げた。
「こんなときこそ、公爵家の力を使わなくてわね」
音楽を学ぶ特別教科の扉の鍵をリタが開ける。ラナとリタが教室に入ると、リタは内側から鍵をかけた。窓もきっちりと施錠されている。加えて、この教室は二階にある。
「さあ。心置きなく話してもらいましょうか」
リタがラナの前で、仁王立ちする。
「……えーっと」
何処から話そうか。考えを巡らせるうちに、ラナはあまりに自分が情けなく、また、人を見る目が無さすぎる自分に腹が立ってきた。
一人で落ち込み、一人で憤慨するラナ。リタはどうしたらよいのかわからず「…………なに?」と、ただ困惑するしかなかった。
二人の姿が見えなくなるやいなや、リタが口を開いた。ラナは思わず、視線を遠くに逃がしてしまった。
「ラーナー?」
リタに詰め寄られ、ラナが後ずさる。ラナの目は泳ぎまくっていて、リタは呆れながら腕を組んだ。
「なにあれ。あからさま過ぎる態度の変化。ニックの姿を見つけるだけで頬を赤く染めていたあなたが、いったいどうしたの?」
「……わたし、そんなだった?」
「そうよ。最初のころなんて、ニックがちょっと甘い科白を吐いただけで、腰がくだけそうになっていたこともあったじゃない」
うう。ラナは思わず、机に突っ伏した。お金だけが目当てだとまるで気付かずにいた、昨日までの愚かな自分が情けなく、恥ずかしかった。いっそ死んでしまいたいほどに。
「ちょっと、ラナ? 本当にどうしたの?」
心配そうな声音のリタに、ゆさゆさと身体を揺すられる。それでもラナは、顔を上げようとしない。
「なにかあったんでしょう? 幼馴染みの私にも話せないことなの?」
「……違う。むしろ、あなたにしか話せない。でも、ここじゃ言えない。絶対に、誰にも聞かれたくないの。だからお昼に、誰もいないところで話すわ」
ぼそぼそとラナが呟く。リタは「わかった。それまでは待つわ」と大きく息を吐いた。ありがとう。ラナは小さく笑った。
昼休憩の鐘が校内に鳴り響く。リタは教師が教室を出て行ってすぐ、ラナの腕を引っ張りながら教室を出た。
「何処に行くの?」
引っ張られながら、ラナが訊ねる。
「誰にも聞かれたくないんでしょう? だから、誰もいないところに行くのよ」
「そんなところ、あるの?」
「特別教室」
「確かにこの時間、誰もいないけど……鍵がかかってるんじゃないの?」
リタは鍵をラナに見せ「大丈夫。先生から預かってきたから」と口角を上げた。
「こんなときこそ、公爵家の力を使わなくてわね」
音楽を学ぶ特別教科の扉の鍵をリタが開ける。ラナとリタが教室に入ると、リタは内側から鍵をかけた。窓もきっちりと施錠されている。加えて、この教室は二階にある。
「さあ。心置きなく話してもらいましょうか」
リタがラナの前で、仁王立ちする。
「……えーっと」
何処から話そうか。考えを巡らせるうちに、ラナはあまりに自分が情けなく、また、人を見る目が無さすぎる自分に腹が立ってきた。
一人で落ち込み、一人で憤慨するラナ。リタはどうしたらよいのかわからず「…………なに?」と、ただ困惑するしかなかった。
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