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「きみに、是非とも紹介したい人がいるんだ」
婚約者のデレクにそう言われ、エセルが連れてこられたのは、王都にある街外れ。平民が暮らす家々からは少し外れたところに馬車を停めさせたデレクは、少しここで待っていてくれと言い、一人外に出ていった。ほどなくデレクは、一人の女性を連れて戻ってきた。
馬車の中。エセルの向かい側に座るデレクと、身なりからして平民であろう女性が、そのデレクの横に座る。
「はじめまして。あたしは、ルイザと申します」
少し緊張した面持ちで、ルイザはエセルにあいさつしてきた。事前に何も聞かされていないエセルは、戸惑いながらも「……わたしは、エセルです」と、返した。ちらっとルイザの横に座るデレクを見れば、満面の笑みを浮かべていた。
「彼女とは、半年前に、街にあるカフェで知り合ってね。ほら、きみとも行ったことがあるところだよ。そこで彼女は働いていて」
「はあ……」
おそらくは、紹介したい人とはこの女性のことなのだろう。そこまでは察しがついたものの、その先がまるで読めなかった。
「彼女は、小さいころに父親を亡くしていてね。母親も、つい最近亡くなられたそうなんだ。むろん、暮らしに余裕なんかなくて、カフェだけでなく、夜は酒屋でも働いていて」
「それは……大変ですね」
「だろう? しかも、彼女はきみに負けず劣らず魅力的だから、男に言い寄られたりしていて、とても怖い目に合っているそうなんだ……ね?」
デレクがルイザに目を向けると、ルイザは目を伏せながら、こくりと頷いた。
「……そうなのです。さいわい、まだ大事に至ったことはないのですが……」
「そう、ですか……」
気の毒だとは思う。だが、エセルはまるで話に入り込めずにいた。デレクはこの女性を自分に紹介して、どうしたいのだろう。そこが解決しなければ、いつまで経っても気持ちが追い付けない。
エセルは意を決し、話を断ち切るように口火を切った。
「あの、デレク。わたしに紹介したい人とは、この方なのですよね?」
「そうだよ」
「どうしてわたしに会わせようと思ったのですか?」
うん。
デレクは、姿勢をぴんと正した。
「ぼくときみは、半年後には王立学園を卒業する。それと同時に、結婚することになっているよね?」
「はい」
「結婚すれば、ぼくときみは一緒に暮らすことになる。そこに、彼女を迎えいれたいと思っているんだ」
エセルは「……え?」と、目をまん丸にした。
「迎えいれる、とは……使用人として雇うということですか?」
違うよ。
デレクは笑った。
「いわゆる、愛人として迎えいれたいと思っているんだ」
婚約者のデレクにそう言われ、エセルが連れてこられたのは、王都にある街外れ。平民が暮らす家々からは少し外れたところに馬車を停めさせたデレクは、少しここで待っていてくれと言い、一人外に出ていった。ほどなくデレクは、一人の女性を連れて戻ってきた。
馬車の中。エセルの向かい側に座るデレクと、身なりからして平民であろう女性が、そのデレクの横に座る。
「はじめまして。あたしは、ルイザと申します」
少し緊張した面持ちで、ルイザはエセルにあいさつしてきた。事前に何も聞かされていないエセルは、戸惑いながらも「……わたしは、エセルです」と、返した。ちらっとルイザの横に座るデレクを見れば、満面の笑みを浮かべていた。
「彼女とは、半年前に、街にあるカフェで知り合ってね。ほら、きみとも行ったことがあるところだよ。そこで彼女は働いていて」
「はあ……」
おそらくは、紹介したい人とはこの女性のことなのだろう。そこまでは察しがついたものの、その先がまるで読めなかった。
「彼女は、小さいころに父親を亡くしていてね。母親も、つい最近亡くなられたそうなんだ。むろん、暮らしに余裕なんかなくて、カフェだけでなく、夜は酒屋でも働いていて」
「それは……大変ですね」
「だろう? しかも、彼女はきみに負けず劣らず魅力的だから、男に言い寄られたりしていて、とても怖い目に合っているそうなんだ……ね?」
デレクがルイザに目を向けると、ルイザは目を伏せながら、こくりと頷いた。
「……そうなのです。さいわい、まだ大事に至ったことはないのですが……」
「そう、ですか……」
気の毒だとは思う。だが、エセルはまるで話に入り込めずにいた。デレクはこの女性を自分に紹介して、どうしたいのだろう。そこが解決しなければ、いつまで経っても気持ちが追い付けない。
エセルは意を決し、話を断ち切るように口火を切った。
「あの、デレク。わたしに紹介したい人とは、この方なのですよね?」
「そうだよ」
「どうしてわたしに会わせようと思ったのですか?」
うん。
デレクは、姿勢をぴんと正した。
「ぼくときみは、半年後には王立学園を卒業する。それと同時に、結婚することになっているよね?」
「はい」
「結婚すれば、ぼくときみは一緒に暮らすことになる。そこに、彼女を迎えいれたいと思っているんだ」
エセルは「……え?」と、目をまん丸にした。
「迎えいれる、とは……使用人として雇うということですか?」
違うよ。
デレクは笑った。
「いわゆる、愛人として迎えいれたいと思っているんだ」
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