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「エセルお嬢様。お茶が入りました」
「ありがとうございます、ルイザ」
にっこりと返したエセルが、紅茶の入ったカップに口をつける。それを、ルイザがにこにこと見守る。
エセルは微笑みながら、自室のテーブルの上にカップを置いた。
「仕事にはもう慣れましたか?」
「はい。みなさんお優しくて、丁寧に教えてくださるので……毎日が、楽しくて仕方ないです」
「それは良かったです」
エセルがルイザを使用人として雇ってから、ひと月が経とうとしていた。はじめて会ったときは泣いてばかりだった彼女はいま、毎日を、笑顔で過ごしている。
「エセルお嬢様には、感謝してもしきれません。あたし、お嬢様のためならこの命、いつ投げ打っても惜しくはありません」
大袈裟でも冗談でもなく、本気で語るルイザに、エセルは「いいえ、それでは駄目です」と笑った。
「必ず、幸せになること。それがあなたにできる、わたしへと恩返しですよ」
「……エセルお嬢様」
「そしてわたしも、幸せを手にいれます。それが何よりの、デレクへの嫌がらせになるのですから」
ルイザは「まあ、お嬢様ったら」と泣き笑いを浮かべた。
「……けれど。あたし、今となってはデレク様に感謝しているんです。だって、あの方がいなければ、エセルお嬢様とは出会えていなかったのですから」
「あなたなら、もっといい出会いがあったかもしれませんよ?」
「そうでしょうか……会ったばかりの、しかも婚約者の浮気相手の女を、あんな風に守ってくださるお優しい方なんて、そうはいないと思うのです。だからあたし、どんな目にあったとしても、やっぱりエセルお嬢様に出会えてよかったと、胸を張れます」
晴れやかに、ルイザが微笑む。エセルが少し照れくさそうに、笑い返す。
──そんな二人が運命の出逢いをはたすのは、それから少し、後のこと。
─おわり─
「ありがとうございます、ルイザ」
にっこりと返したエセルが、紅茶の入ったカップに口をつける。それを、ルイザがにこにこと見守る。
エセルは微笑みながら、自室のテーブルの上にカップを置いた。
「仕事にはもう慣れましたか?」
「はい。みなさんお優しくて、丁寧に教えてくださるので……毎日が、楽しくて仕方ないです」
「それは良かったです」
エセルがルイザを使用人として雇ってから、ひと月が経とうとしていた。はじめて会ったときは泣いてばかりだった彼女はいま、毎日を、笑顔で過ごしている。
「エセルお嬢様には、感謝してもしきれません。あたし、お嬢様のためならこの命、いつ投げ打っても惜しくはありません」
大袈裟でも冗談でもなく、本気で語るルイザに、エセルは「いいえ、それでは駄目です」と笑った。
「必ず、幸せになること。それがあなたにできる、わたしへと恩返しですよ」
「……エセルお嬢様」
「そしてわたしも、幸せを手にいれます。それが何よりの、デレクへの嫌がらせになるのですから」
ルイザは「まあ、お嬢様ったら」と泣き笑いを浮かべた。
「……けれど。あたし、今となってはデレク様に感謝しているんです。だって、あの方がいなければ、エセルお嬢様とは出会えていなかったのですから」
「あなたなら、もっといい出会いがあったかもしれませんよ?」
「そうでしょうか……会ったばかりの、しかも婚約者の浮気相手の女を、あんな風に守ってくださるお優しい方なんて、そうはいないと思うのです。だからあたし、どんな目にあったとしても、やっぱりエセルお嬢様に出会えてよかったと、胸を張れます」
晴れやかに、ルイザが微笑む。エセルが少し照れくさそうに、笑い返す。
──そんな二人が運命の出逢いをはたすのは、それから少し、後のこと。
─おわり─
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