悪役令嬢として、愛し合う二人の邪魔をしてきた報いは受けましょう──ですが、少々しつこすぎやしませんか。

ふまさ

文字の大きさ
10 / 15

10

しおりを挟む
「──なにを待てと?」

「ぼくになにかあれば、誰より哀しむのはマイナ嬢です! それはシェーベリ公爵の望むところではないでしょう?!」

 シェーベリ公爵は、片眉をぴくりと動かした。

「これまで数々の嫌がらせを受け、あげくあのような大怪我を負わせたあなたを、マイナがまだ愛していると……?」

「そうです。疑うなら、本人に確認してみてください。ぼくの罰は、被害者であるマイナ嬢が決めるべきです!」

 そもそも。ローランドは続けて、訴えるように声を張り上げた。

「なぜこれまで学園の者たちが口を閉ざしてきたのか、それもきちんと聞きましたか? 確かに今回はやり過ぎたかもしれませんが、マイナ嬢が婚約者がいるぼくにアプローチしてきたことが、すべてのはじまり。つまり元凶は、マイナ・シェーベリなのです。相手が公爵令嬢なのでこれまできつく言うことができませんでしたが、事ここに至っては、はっきりと言わせてもらいます!」

 肩で息をするローランドに対し、シェーベリ公爵は不愉快そうに腕を組んだ。

「──それはあなたが、側妃にならしてあげられると娘に言ったからでしょう」

 誰より驚愕していたのは、リリアンだった。

「ど、どういうことですか? そんなの、初耳ですよ?!」

 問い詰められているはずの当の本人はぽかんとしていたが、すぐにはっとしたように顔を青ざめさせた。

「ほ、本心じゃない! あまりにしつこいから、一度だけ、そのようなことを仄めかしたことがあるだけだ! まさか本気にするとは──」

 シェーベリ公爵の射るような視線から逃れるように、ローランドはさっと顔を背けた。

「……い、いや。その」

「私の大切な娘を側妃になどとは思いましたが、マイナはあなたを心から愛していましたから。シェーベリ公爵家の後ろ盾がほしいだけかもしれないと話しても、マイナはそれでもかまわないと言っていたのでね……しかし、まさか側妃にもする気がなかったとは」

「リ、リリアンとのあいだに子ができなければ、誰より先に、マイナ嬢を側妃として迎えるつもりだったのです。決して、騙そうとしていたわけではなくて、ですね……あの」

 俯き、冷や汗をダラダラ流しはじめたローランドを、シェーベリ公爵が冷たく見下ろす。

 耐えきれなくなったように、ローランドは小さく口を開いた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね

柚木ゆず
恋愛
 ※今後は不定期という形ではありますが、番外編を投稿させていただきます。  あらゆる手を使われて参加を余儀なくされた、侯爵令嬢ヴァイオレット様主催のパーティー。この会には、先日婚約を破棄された私を嗤う目的があるみたいです。  けれど実は元婚約者様への好意はまったくなく、私は婚約破棄を心から喜んでいました。  そのため何を言われてもダメージはなくて、しかもこのパーティーは侯爵邸で行われる豪華なもの。高級ビュッフェなど男爵令嬢の私が普段体験できないことが沢山あるので、今夜はパーティーを楽しみたいと思います。

婚約者とその幼なじみがいい雰囲気すぎることに不安を覚えていましたが、誤解が解けたあとで、その立ち位置にいたのは私でした

珠宮さくら
恋愛
クレメンティアは、婚約者とその幼なじみの雰囲気が良すぎることに不安を覚えていた。 そんな時に幼なじみから、婚約破棄したがっていると聞かされてしまい……。 ※全4話。

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。

ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」  オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。 「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」  ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。 「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」 「……婚約を解消? なにを言っているの?」 「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」  オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。 「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」  ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。

王子様への置き手紙

あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...