21 / 46
21
「おはようございます。ところでお二人は、いつからそこに……?」
オリヴィアが問うと、二人は、最初の方からですわ、と声を揃えた。
「とはいえ、状況はあまり理解できてはいませんけど」
「けれど、そこの伯爵令息と別れたのは合っていますよね?」
オリヴィアは、ええ、と笑った。
「ですが、いまのデイル様は男爵令息です。まずはそこだけ訂正しておきますね。詳しい話は、のちほど」
それからオリヴィアは、グレースに視線を戻した。
「あなたはもう、なにも理解しなくていいですから、とにかくもう、二度とわたしに近付かないでください」
「……どうしてそんな酷いことが言えるんですか? あたしのこと、本当は嫌いだったんですか?」
目を潤ますグレースに、オリヴィアは少しの間のあと、はい、と答えた。グレースは目を瞠り、わあっと泣き声を上げながらデイルの胸に飛び込んだ。
そんなグレースを、デイルが強く抱き締める。
「……いくらなんでもっ」
睨み付けてくるデイルに、けれどオリヴィアは、なにも感じることはなかった。
「デイル様。あなたはグレース様と、とてもお似合いだと思います。どうか、お二人でお幸せに。そしてグレース様のためを想うなら、彼女に、もうわたしとかかわらない方がよいときちんと説得しておいてください」
「……ああ、よくわかったよ」
オリヴィアの学友の一人に「言葉遣いに気をつけなさい」と注意されると、デイルは奥歯を噛み締めた。デイルは男爵令息で、オリヴィアはいまや、伯爵令嬢だ。
理解せざるを得ないデイルは、すみませんでした、と呟き、グレースを連れてその場を去って行った。
クラスメイトでもある学友二人に、オリヴィアは夏期休暇のあいだで起こった出来事を語った。教室内だったので、これらの話は、他の生徒の耳にも入っていた。
グレースが王立学園に入学してから、少しずつ、グレースを優先するようなっていったデイル。あげく正式の場で婚約者であるオリヴィアを放ってグレースをエスコートしたデイルに、学友二人はオリヴィアの代わりに強く憤ってくれた。
しかしオリヴィアから、グレースに強くでられない理由──少し複雑な家庭の事情を聞かされていた二人は、グレースに下手な口出しができず。
また、学園を卒業すれば、きっとデイルはまた、わたしだけを愛してくれるはずと依存していたオリヴィアが言うものだから、二人はデイルにも、ろくな注意ができずにいた。
思い返せば、見捨てられても仕方ないほど、二人の学友には心配と苛々を長らくさせてしまっていた。依存から解き放たれたオリヴィアは、学友二人に謝罪と礼を述べた。
二人は呆れ、少し怒りながらも、それでも最後は良かったですと笑いながら許してくれた。
温かな心に、いかに自分の視野が狭くなっていたか、オリヴィアはあらためて思い知ったのだった。
オリヴィアが問うと、二人は、最初の方からですわ、と声を揃えた。
「とはいえ、状況はあまり理解できてはいませんけど」
「けれど、そこの伯爵令息と別れたのは合っていますよね?」
オリヴィアは、ええ、と笑った。
「ですが、いまのデイル様は男爵令息です。まずはそこだけ訂正しておきますね。詳しい話は、のちほど」
それからオリヴィアは、グレースに視線を戻した。
「あなたはもう、なにも理解しなくていいですから、とにかくもう、二度とわたしに近付かないでください」
「……どうしてそんな酷いことが言えるんですか? あたしのこと、本当は嫌いだったんですか?」
目を潤ますグレースに、オリヴィアは少しの間のあと、はい、と答えた。グレースは目を瞠り、わあっと泣き声を上げながらデイルの胸に飛び込んだ。
そんなグレースを、デイルが強く抱き締める。
「……いくらなんでもっ」
睨み付けてくるデイルに、けれどオリヴィアは、なにも感じることはなかった。
「デイル様。あなたはグレース様と、とてもお似合いだと思います。どうか、お二人でお幸せに。そしてグレース様のためを想うなら、彼女に、もうわたしとかかわらない方がよいときちんと説得しておいてください」
「……ああ、よくわかったよ」
オリヴィアの学友の一人に「言葉遣いに気をつけなさい」と注意されると、デイルは奥歯を噛み締めた。デイルは男爵令息で、オリヴィアはいまや、伯爵令嬢だ。
理解せざるを得ないデイルは、すみませんでした、と呟き、グレースを連れてその場を去って行った。
クラスメイトでもある学友二人に、オリヴィアは夏期休暇のあいだで起こった出来事を語った。教室内だったので、これらの話は、他の生徒の耳にも入っていた。
グレースが王立学園に入学してから、少しずつ、グレースを優先するようなっていったデイル。あげく正式の場で婚約者であるオリヴィアを放ってグレースをエスコートしたデイルに、学友二人はオリヴィアの代わりに強く憤ってくれた。
しかしオリヴィアから、グレースに強くでられない理由──少し複雑な家庭の事情を聞かされていた二人は、グレースに下手な口出しができず。
また、学園を卒業すれば、きっとデイルはまた、わたしだけを愛してくれるはずと依存していたオリヴィアが言うものだから、二人はデイルにも、ろくな注意ができずにいた。
思い返せば、見捨てられても仕方ないほど、二人の学友には心配と苛々を長らくさせてしまっていた。依存から解き放たれたオリヴィアは、学友二人に謝罪と礼を述べた。
二人は呆れ、少し怒りながらも、それでも最後は良かったですと笑いながら許してくれた。
温かな心に、いかに自分の視野が狭くなっていたか、オリヴィアはあらためて思い知ったのだった。
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
わたしさえいなければ、完璧な王太子だそうです。
ふらり
恋愛
人並外れた美貌・頭脳・スタイル・武勇を持つウィンダリア王国の25歳の王太子は、完璧な王太子だと言われていた。ただし、「婚約者さえいなければ完璧な王太子なのに」と皆が言う。12歳の婚約者、ヴァイオレット・オルトニーは周囲から憐みの目を向けられていた。
「私との婚約は、契約で仕方なくなのかい? もう私に飽きてしまっている? 私は今でも君にこんなに夢中なのに」
13歳年下の婚約者少女に執着溺愛する美貌も能力も人間離れした王太子様と、振り回される周囲のお話です。小説家になろうにて完結しております。少しずつこちらにもあげていくつもりです。ファンタジー要素はちょっぴりです。
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
見捨てられたのは私
梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。
ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。
ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。
何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。
『愛人を連れて帰ってきた翌朝、名前すら呼ばれなかった私は離縁状を置いて旅に出ます。これからは幸せになります――そう思っていました。』
まさき
恋愛
夫に名前すら呼ばれず、冷たく扱われ続けた私は、ある朝、ついに限界を迎えた。
決定打は、夫が見知らぬ女性を連れて帰ってきたことだった。
――もういい。こんな場所に、私の居場所はない。
離縁状を残し、屋敷を飛び出す。
これからは自由に、幸せに生きるのだと信じて。
旅先で出会う優しい人々。
初めて名前を呼ばれ、笑い、温かい食事を囲む日々。
私は少しずつ、“普通の幸せ”を知っていく。
けれど、そのたびに――背中の痣は、静かに増えていた。
やがて知る、自らの家系にかけられた呪い。
それは「幸せを感じるほど、命を削る」という残酷なものだった。
一方その頃、私を追って旅に出た夫は、焦燥の中で彼女を探し続けていた。
あの冷たさも、あの女性も、すべては――。
けれど、すべてを知ったときには、もう遅くて。
これは、愛されていなかったと信じた私が、
最後にようやく“本当の愛”に気づくまでの物語。
尽くしてきた婚約者に裏切られたので、婚約を解消しました〜彼が愛に気づいたのは、すべてを失ったあとでした〜
ともどーも
恋愛
「今回で最後だ。誓うよ」
これは二度目の『結婚式キャンセル』の時に言われた言葉。
四年間、愛する婚約者ディートリッヒのため尽くし続けてきたイリス。
だがディートリッヒは、イリスの献身を当然のものとし、やがて初恋の令嬢エレノアを優先するようになる。
裏切り、誤解、そして理不尽な糾弾。
心も身体も限界を迎えた夜、イリスは静かに決意した。
──もう、終わらせよう。
ディートリッヒが「脅しのつもり」で差し出した婚約解消の書類を、イリスは本当に提出してしまう。
すべてを失ってから、ようやく自分の愛に気づいたディートリッヒ。
しかしもう、イリスは振り返らない。
まだ完結まで執筆が終わっていません。
20話以降は不定期更新になります。
設定はゆるいです。
嫌いなところが多すぎるなら婚約を破棄しましょう
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私ミリスは、婚約者ジノザに蔑まれていた。
侯爵令息のジノザは学園で「嫌いなところが多すぎる」と私を見下してくる。
そして「婚約を破棄したい」と言ったから、私は賛同することにした。
どうやらジノザは公爵令嬢と婚約して、貶めた私を愛人にするつもりでいたらしい。
そのために学園での評判を下げてきたようだけど、私はマルク王子と婚約が決まる。
楽しい日々を過ごしていると、ジノザは「婚約破棄を後悔している」と言い出した。