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「……ぼくは、どうなるのですか」
小さく呟かれた問いに、国王は一度目を伏せてから、答えた。
「会議の結果。お前には、ネストキア王国の第二王女と結婚してもらうことにした」
とたん、イライジャの顔から血の気が引いた。
「ネ、ネストキアって……確かにあそこは友好国ではありますが……だ、第二王女って、あの顔も身体も醜い女のことですよね?」
国王は、右手で顔を覆った。
「……お前。ネストキア王国は、わが国とは比べものにならんほどの大国だぞ。そんなことを第二王女の前で言ってみろ。すぐに処刑されるぞ」
「し、知りませんよ。ぼくは絶対、嫌ですからね!」
真っ青な顔で、イライジャが首を左右にふる。子どものような駄々のこねかたに、国王の心が冷えていく。
「そんなこと、許されるはずないだろう。もう決まったことだ。諦めろ」
「嫌です! それに、ぼくがあの女と結婚することに何の意味があるのですか?!」
「──二年前。第二王女がわが国に視察に来たことがあっただろう。そのとき、お前に案内を頼んだな?」
「……え、ええ」
「完璧なエスコートに惚れた。結婚したい。第二王女に、そう直談判されてな」
「! は、初耳ですよ?!」
言ってないからな。国王は苦笑した。
「いくら大国の王女の頼みとはいえ、次期国王であるお前をやるわけにはいかなかった。だから丁重にお断りをした──が、こうなった今となっては、ネストキア王国と繋がる良い機会となったわけだ。今も想いは変わらないかと手紙を送ったところ、いい返事を貰えてな」
イライジャはボロっと、涙を流した。
「……ひどい……あまりにひどすぎます、父上……それではぼくを売ったのと変わりないではありませんか……」
国王は、まだ自分の立場を理解していないようだなと、顔を大きく歪ませ、薄く笑った。
「安心しろ。女好きのお前と、男好きで有名な第二王女は、さぞや気が合うことだろうからな」
「……お、男好きって」
「後は自分の目で確かめろ」
言い捨て、国王はくるりとイライジャに背を向けた。連れていけ。国王に命じられた兵たちによって、イライジャは両腕を掴まれ、謁見の間の出入口まで引きずられていく。
「ち、父上! 父上!」
泣き叫んでも、国王は振り向かない。悟ったイライジャは、クラリスに視線を向けた。
「クラリス! 助けてくれ! お願いだ!!」
クラリスは口元を手で覆ったまま。こちらを見ようともしない。けれど愛されていると自覚しているイライジャは、諦めきれない。
「クラリス! クラリス!!」
イライジャは声が枯れるまでクラリスの名を呼び続けたが、クラリスがそれに応えることは、ついになかった。
小さく呟かれた問いに、国王は一度目を伏せてから、答えた。
「会議の結果。お前には、ネストキア王国の第二王女と結婚してもらうことにした」
とたん、イライジャの顔から血の気が引いた。
「ネ、ネストキアって……確かにあそこは友好国ではありますが……だ、第二王女って、あの顔も身体も醜い女のことですよね?」
国王は、右手で顔を覆った。
「……お前。ネストキア王国は、わが国とは比べものにならんほどの大国だぞ。そんなことを第二王女の前で言ってみろ。すぐに処刑されるぞ」
「し、知りませんよ。ぼくは絶対、嫌ですからね!」
真っ青な顔で、イライジャが首を左右にふる。子どものような駄々のこねかたに、国王の心が冷えていく。
「そんなこと、許されるはずないだろう。もう決まったことだ。諦めろ」
「嫌です! それに、ぼくがあの女と結婚することに何の意味があるのですか?!」
「──二年前。第二王女がわが国に視察に来たことがあっただろう。そのとき、お前に案内を頼んだな?」
「……え、ええ」
「完璧なエスコートに惚れた。結婚したい。第二王女に、そう直談判されてな」
「! は、初耳ですよ?!」
言ってないからな。国王は苦笑した。
「いくら大国の王女の頼みとはいえ、次期国王であるお前をやるわけにはいかなかった。だから丁重にお断りをした──が、こうなった今となっては、ネストキア王国と繋がる良い機会となったわけだ。今も想いは変わらないかと手紙を送ったところ、いい返事を貰えてな」
イライジャはボロっと、涙を流した。
「……ひどい……あまりにひどすぎます、父上……それではぼくを売ったのと変わりないではありませんか……」
国王は、まだ自分の立場を理解していないようだなと、顔を大きく歪ませ、薄く笑った。
「安心しろ。女好きのお前と、男好きで有名な第二王女は、さぞや気が合うことだろうからな」
「……お、男好きって」
「後は自分の目で確かめろ」
言い捨て、国王はくるりとイライジャに背を向けた。連れていけ。国王に命じられた兵たちによって、イライジャは両腕を掴まれ、謁見の間の出入口まで引きずられていく。
「ち、父上! 父上!」
泣き叫んでも、国王は振り向かない。悟ったイライジャは、クラリスに視線を向けた。
「クラリス! 助けてくれ! お願いだ!!」
クラリスは口元を手で覆ったまま。こちらを見ようともしない。けれど愛されていると自覚しているイライジャは、諦めきれない。
「クラリス! クラリス!!」
イライジャは声が枯れるまでクラリスの名を呼び続けたが、クラリスがそれに応えることは、ついになかった。
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