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2.恋
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なんでこんなに彼に何度も会いたかったのかも、まるで必死に次のデートに誘うように毎回話題を繋いでいたのかも、すべてが腑に落ちた。
俺はこの人が好きになってしまっていた。
それまで男を好きになったことはなかったし、伊佐島さんはどう見ても完璧に男だ。
この上等な大人の男に対する憧れかなとも思ったけど一瞬で心が違うと否定してくる。
この人の特別になりたい。
ただの知り合いでも、少し歳の離れた友人でも嫌だ。
彼が笑うところを見ていたいし、笑う理由が俺ならもっと嬉しい。
いつか彼が他の誰かと付き合って、俺と会ってくれなくなるかもしれないと考えると嫌だ嫌だと叫びたくなる。
頭が悪すぎると思うんだけど、恋心を自覚して3回目の飯で、俺は自分の気持ちを吐露してしまった。
いつも以上に酔っ払ってたせいだと思う。
俺がどれだけ飲んでも伊佐島さんは何も言わないし調子に乗って今迄にないくらいに杯を重ねていた。
そうして頭のネジがどこかへ飛んでいってしまった俺は、個室の飯屋のテーブルに突っ伏して、泣きながら彼に『付き合ってください』と懇願していた。
そんな俺があまりに憐れだったせいだろうか。
金も地位もなくて顔も微妙な俺があまりに惨めだったせいだろうか。
それとも何度も何度も同じことを繰り返し言いながら泣く俺がしつこかったせいだろうか。
驚いたことに彼は頷いてくれた。
別に『俺も好きだ』とか『付き合いたかった』とか言われなかったけど、それでも彼は頷いてくれた。
天にも昇る気持ちとは、ああいうことを言うんだろうな。
信じられなくて何度も何度も『本当に、いいの?』って聞いて。
律儀に頷いてくれる彼に、俺はまた少し泣いた。
嬉しくて仕方なかった。
高校の時に初めてできた彼女と付き合った時だって、こんなに嬉しくはなかった。
泣くほど喜ぶなんてこと人生でそれまでになかった。
ああ、これは奇跡なんだ。
良いことのない俺の人生で偶然に当たった宝くじみたいなものだ。
俺の実力でも努力でもなくて、偶然手に入った幸運。
彼が俺のことを好きじゃないのは分かっていたけど、それでも付き合ってくれるということが嬉しかった。
やっぱり男は無理だとすぐに振られるかもしれない。
好き合っているわけじゃないから大事にされないかもしれない。
俺ばっかり喜んで空回りするかもしれない。
それでもいい。
それでも付き合えることが、少しの間でも一緒にいられることが嬉しい。
そう思って俺は、テーブルの上に置かれた彼の手に恐る恐る手を伸ばした。
それが、今からもう5ヶ月も前のことだ。
付き合うようになっても伊佐島さんの態度は変わらなかった。
メッセージを送れば返してくれるけど、内容も口調も特に変化は見当たらない。
まぁ好きじゃなくて付き合っている相手にはそんなもんだろう。
そう思って相変わらず俺から押した。
せっかく手に入れた一筋のチャンスなんだから、ちょっとでも彼に俺と一緒にいて楽しいと思って欲しかった。
付き合って2度目に会った時にセックスした。
その時俺はとにかく焦っていて、早く体をつなげたかった。
やっぱり俺とは付き合えないって振られる前に彼に触れてみたかった。
ネットでやり方を調べてそこを綺麗にして、男同士でも入れるラブホを調べて彼を引き摺り込んだ。
伊佐島さんは当たり前だけど戸惑っていたし難色を示していたけど、大したことじゃないと何度も言ったら黙ってついてきてくれた。
ベッドに座らせた彼の股間に顔を突っ込んでフェラして勃たせて、その間に自分で慣らして彼に跨った。
彼が萎えないようにシャツは羽織ったままにしたし、ボクサーパンツも履いたままずらして後ろに咥え込んだ。
彼の手が俺を引き剥がそうと何度も伸びてきたけど、それを振り払って。
なんとか彼を射精させることができた時は本当に嬉しかった。
そうしてそれからは、彼との食事の後にセックスすることが増えた。
毎回俺はホテルに行っていいか聞いて、断られると落ち込んだけどめげずに誘った。
しばらくしたらホテルじゃなくて彼の家に連れて行ってもらえるようになった。
ホテルだと毎回金がかかるし、それはそうだよなと俺は遅ればせながらその時に気が付いた。
飯だって安い所じゃないし毎回奢ってくれるしホテル代だって出してくれる。
俺が言っても出してくれるってのはあるけど、言い出しづらかったのか。
惚れた相手でも毎回飯に行きたい、ホテル行きたいって言われたら負担なのに、俺みたいな間に合わせ程度にそんなの要求されたら俺だったら別れてる。
今までムカついてたのかなって思ったらちょっと落ち込んだけど、それでも捨てられることはなかったから、俺は彼の部屋に通い出した。
飯に誘うのはやめて、部屋に行っていいかどうかだけ聞くようにした。
顔が見れる時間が減ったのは悲しかったけどウザがられるよるはマシだ。
何度か部屋に訪れた時に、鍵を渡された。
『俺……こんなのもらっちゃったら、入り浸っちゃうよ。引っ越してくるかも』
いつでも来ていいって言葉を期待してそう言ったら、伊佐島さんは首を傾げてほんの少しだけ笑った。
まぁ冗談で言ったし、きっと俺が部屋の前で待ってたりして噂になったら困るからだろうなとは分かってたけど。
つきりと胸に小さな棘が刺さるのを感じながら、それでも生まれて初めてもらった好きな人からの合鍵を大事にキーケースに仕舞った。
俺はこの人が好きになってしまっていた。
それまで男を好きになったことはなかったし、伊佐島さんはどう見ても完璧に男だ。
この上等な大人の男に対する憧れかなとも思ったけど一瞬で心が違うと否定してくる。
この人の特別になりたい。
ただの知り合いでも、少し歳の離れた友人でも嫌だ。
彼が笑うところを見ていたいし、笑う理由が俺ならもっと嬉しい。
いつか彼が他の誰かと付き合って、俺と会ってくれなくなるかもしれないと考えると嫌だ嫌だと叫びたくなる。
頭が悪すぎると思うんだけど、恋心を自覚して3回目の飯で、俺は自分の気持ちを吐露してしまった。
いつも以上に酔っ払ってたせいだと思う。
俺がどれだけ飲んでも伊佐島さんは何も言わないし調子に乗って今迄にないくらいに杯を重ねていた。
そうして頭のネジがどこかへ飛んでいってしまった俺は、個室の飯屋のテーブルに突っ伏して、泣きながら彼に『付き合ってください』と懇願していた。
そんな俺があまりに憐れだったせいだろうか。
金も地位もなくて顔も微妙な俺があまりに惨めだったせいだろうか。
それとも何度も何度も同じことを繰り返し言いながら泣く俺がしつこかったせいだろうか。
驚いたことに彼は頷いてくれた。
別に『俺も好きだ』とか『付き合いたかった』とか言われなかったけど、それでも彼は頷いてくれた。
天にも昇る気持ちとは、ああいうことを言うんだろうな。
信じられなくて何度も何度も『本当に、いいの?』って聞いて。
律儀に頷いてくれる彼に、俺はまた少し泣いた。
嬉しくて仕方なかった。
高校の時に初めてできた彼女と付き合った時だって、こんなに嬉しくはなかった。
泣くほど喜ぶなんてこと人生でそれまでになかった。
ああ、これは奇跡なんだ。
良いことのない俺の人生で偶然に当たった宝くじみたいなものだ。
俺の実力でも努力でもなくて、偶然手に入った幸運。
彼が俺のことを好きじゃないのは分かっていたけど、それでも付き合ってくれるということが嬉しかった。
やっぱり男は無理だとすぐに振られるかもしれない。
好き合っているわけじゃないから大事にされないかもしれない。
俺ばっかり喜んで空回りするかもしれない。
それでもいい。
それでも付き合えることが、少しの間でも一緒にいられることが嬉しい。
そう思って俺は、テーブルの上に置かれた彼の手に恐る恐る手を伸ばした。
それが、今からもう5ヶ月も前のことだ。
付き合うようになっても伊佐島さんの態度は変わらなかった。
メッセージを送れば返してくれるけど、内容も口調も特に変化は見当たらない。
まぁ好きじゃなくて付き合っている相手にはそんなもんだろう。
そう思って相変わらず俺から押した。
せっかく手に入れた一筋のチャンスなんだから、ちょっとでも彼に俺と一緒にいて楽しいと思って欲しかった。
付き合って2度目に会った時にセックスした。
その時俺はとにかく焦っていて、早く体をつなげたかった。
やっぱり俺とは付き合えないって振られる前に彼に触れてみたかった。
ネットでやり方を調べてそこを綺麗にして、男同士でも入れるラブホを調べて彼を引き摺り込んだ。
伊佐島さんは当たり前だけど戸惑っていたし難色を示していたけど、大したことじゃないと何度も言ったら黙ってついてきてくれた。
ベッドに座らせた彼の股間に顔を突っ込んでフェラして勃たせて、その間に自分で慣らして彼に跨った。
彼が萎えないようにシャツは羽織ったままにしたし、ボクサーパンツも履いたままずらして後ろに咥え込んだ。
彼の手が俺を引き剥がそうと何度も伸びてきたけど、それを振り払って。
なんとか彼を射精させることができた時は本当に嬉しかった。
そうしてそれからは、彼との食事の後にセックスすることが増えた。
毎回俺はホテルに行っていいか聞いて、断られると落ち込んだけどめげずに誘った。
しばらくしたらホテルじゃなくて彼の家に連れて行ってもらえるようになった。
ホテルだと毎回金がかかるし、それはそうだよなと俺は遅ればせながらその時に気が付いた。
飯だって安い所じゃないし毎回奢ってくれるしホテル代だって出してくれる。
俺が言っても出してくれるってのはあるけど、言い出しづらかったのか。
惚れた相手でも毎回飯に行きたい、ホテル行きたいって言われたら負担なのに、俺みたいな間に合わせ程度にそんなの要求されたら俺だったら別れてる。
今までムカついてたのかなって思ったらちょっと落ち込んだけど、それでも捨てられることはなかったから、俺は彼の部屋に通い出した。
飯に誘うのはやめて、部屋に行っていいかどうかだけ聞くようにした。
顔が見れる時間が減ったのは悲しかったけどウザがられるよるはマシだ。
何度か部屋に訪れた時に、鍵を渡された。
『俺……こんなのもらっちゃったら、入り浸っちゃうよ。引っ越してくるかも』
いつでも来ていいって言葉を期待してそう言ったら、伊佐島さんは首を傾げてほんの少しだけ笑った。
まぁ冗談で言ったし、きっと俺が部屋の前で待ってたりして噂になったら困るからだろうなとは分かってたけど。
つきりと胸に小さな棘が刺さるのを感じながら、それでも生まれて初めてもらった好きな人からの合鍵を大事にキーケースに仕舞った。
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