ハロウィントリップ!〜異世界で獣人騎士に溺愛された話〜

のらねことすていぬ

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失踪

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天にも昇るような気持ちで部屋に戻ると、黒猫はいなくなっていた。



たしかに、外側からカギはかけなかった。
見張りだってつけていない。

残した手紙はなくなっているから、きっと読んだんだろう。
それでもいなくなったということは……番になるのは、俺のそばに居るのは嫌だということだろう。

昨日の従順な様子から、急に番になることは了承しなくとも、まさか逃げないだろうと勝手に思い込んでいた。
だがよく考えれば彼はあの容姿で、それにも関わらず男娼をしている。
結局頑なに言わなかったが、公にしたくない事情があるのだろう。
意に染まない相手から逃げてきたか、それとも悪い番に働かさせられてるか。

己の不手際を呪いながら、騎士団の団長室へ戻る。
派手な音を立てて扉を開けると、副団長が驚いた顔をして立ち上がった。
定時と共に飛び出していった上官が息せき切って帰ってきたんだ、何事か顔に書いてある。

「なにか、緊急事態でも?」

緊急事態。
そう言われればそうだが、多大に私情が入っている。
そのことを苦々しく思いながらも、止められない。


「今日の演練は中止だ」

「は?」

「騎士団は第一隊から第四隊まで、市井の特別警邏だ。第五、六隊は通常通りの警備に回せ」

「特別警邏、ですか?」

「……ああ。未成年の娼婦、男娼がいないか隈なく探せ。スラム街の隅まで、一斉にあたるよう指示しろ」


副団長はいぶかし気に眉を上げる。
確かにそうだろう。
大きな国の行事でもあるならともかく、通常は娼婦狩りなんて滅多に行わない。
だがこうして話している時間すら惜しかった。


「質問でもあるのか?」

「いえ! 各隊長へ伝令して参ります」


目線でうなずくと、副団長は小走りで部屋を出ていく。

仕事に私情を持ち込んだことなんてなかった。
私欲にまみれ自分を律することを知らない者を、軽蔑していた。
ましてや俺は騎士だ。どんな状況でも冷静かつ公平で、正義と国のために生きてきていた。

だというのに、今は自分ができること全てを使ってでもあの少年を捕まえたい。
いや、捕まえないと気が狂ってしまいそうだ。
今だってどこで、誰となにをしているのかと考えただけでおかしくなりそうだ。

またこの寒空の下、その日の客を探して危険な目にあっていないか?
それともどこかの男の腕の中で眠ってる?
嫌な思考ばかりがぐるぐる頭の中を巡るが……なんにせよ次に会ったら、絶対に逃がしはしない。

警邏用の厚手のマントを羽織ると、直属の部下とともに馬に飛び乗った。



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