ハロウィントリップ!〜異世界で獣人騎士に溺愛された話〜

のらねことすていぬ

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ルアン

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「ルアンさん!」


軽くなった身体を起こして、目の前に現れた長身の名を呼ぶ。
するとルアンはレオンを腕からぶら下げたまま俺に視線を落としてにやりと笑った。


「このガキ猫は、前からちょろちょろ近衛兵団の周りで客取ってたからな、何度か注意してたんだよ。で、顔は覚えてたんだけど、そいつが真昼間から騎士団に殴り込もうと門の前で騒いでてな。このままだと揉め事になるなって思ってここに連れてきたわけ」

「おい、ルアン!放せよ!」


ルアンに首根っこを掴まれたレオンは、かろうじて足がついているが身動きが取れないようだ。
必死に背中に手を回してルアンの手を放させようとしているが、じたばたともがくばかりで一向に自由にならない。
そんなレオンを見下ろしながら黒豹は呆れたように呟いた。


「若いって怖いよな。絶対敵わないのに突っ込もうとするし。もうちょっと大人になるまで待てって説得するのも骨が折れたよ」

「そう、だったんですか?」


レオンは、俺のことを心配して会いに来ようとしてくれていたってことか?
それにしてもなぜか確実に喧嘩になるとでも言いたげな口調。
確かにレオンは若干血気盛んだけど、アズラークだって別に無下にすることも俺と会わせないなんてこともないだろうに。
首を傾げる俺に、ルアンはふっと小さく笑った。


「あのアズラークと番を取り合うなんて馬鹿な子だよね」

「いや……いやいや、俺、番じゃないんだけど」


……もしかして、俺がアズラークの番だとまだ勘違いしてるのか。
だから俺がアズラークの屋敷から出られないと思ってたんだろうか。
そしてレオンも。
そのせいで、俺が逃げてきたとか、まるで閉じ込められてたみたいなことを言っているんだろうか。

そんなわけないし、いい加減話を聞いて欲しいと首を横に振る。
だけどそんな俺を見てレオンは悔し気に顔をゆがめた。


「……今の俺だと、アズラーク団長には敵わないのは分かってる……この黒豹はムカつくけど、それは本当のことだから、こいつのとこに居るって決めた。飯もくれるし闘い方も教えてくれるし」

「ね、そういう訳。俺もお人よしだよね」


ルアンが、目の前のレオンを庇って匿ってくれたのは分かった。
それが彼の親切心であることも。

だけどもどかしそうに言葉を吐き出したレオンは、ルアンに釣り上げられたような恰好のまま、俺の方へ手を伸ばす。
なぜだろうか。
瞳がやけに熱っぽい。


「でも、でもサタがここに来てくれるなら、もう一緒に、逃げ_____」


その、俺に比べたらだいぶ大きな手のひらが俺の腕をつかむ、一歩手前で。
ルアンが子猫の首根っこと、それから腰を掴むと。


「感動の再会は済んだよね。じゃあ、レオンはちょっと外に出ていようか」

「____ッ!」


一気に外へと放り投げた。


「え、ちょ、ルアンさん!?何してるんですか!」

「大丈夫だよ。猫に見えるけどあれでも肉食獣だし。ちょっとやそっとじゃ掠り傷も負わないでしょ」

「いやいやいや、それでも危ないですよ!怪我しますって!」


ここは2階。
窓の下は芝生か花壇かだろうけど、それでも俺だったら骨の一本や二本は折れるだろうし頭でも打ったら大変じゃないか。
それにいくら獣人でも彼は子供だ。
慌てて窓辺へと駆け寄ろうとすると、ルアンが俺の腕を掴んで『心配ないよ』とのんびりと呟いた。


「そんなことより、ねぇサタ君。俺、君と話がしたいんだよね。レオンがいないところで」

「先にレオンが無事か確認させてください」

「俺とのお喋りが終わったら庭まで連れていってあげる」


金色の瞳で顔を覗きこまれる。
アズラークの冷たそうな薄青の瞳もなかなか感情が読めないけど、ルアンのそれもどこか恐ろしい。
彼が黒豹だからだろうか、まさに捕食者に捕まったような気分だ。
俺が頷くまで譲らないだろうという頑なさを感じて、俺はしぶしぶ首を縦に振った。




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