追放されたシーフは、ハーフオークに溺愛される~森の奥~

のらねことすていぬ

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9.新しいシーフ

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「俺の、代わり……?」

どういうことだろうか。
俺の代わり。

腹の奥がぞわぞわとして落ちつかない。
せり上がってくる嫌な気配に飲み込まれそうになりつつ、俺は僧侶の言葉を繰り返す。

すると彼は唇の端を吊り上げて小さく首を横に傾けた。
彼の前髪がさらさらと額を流れる。

「そう。こんな遺跡まであと僅かなところでシーフが見つかるなんて、本当についてるよ。君もそう思わない? そうだ、紹介してあげる」

そう言った僧侶の背後から、一人の男が前に一歩踏み出して来た。
ざり、と地面を踏みしめる重たい足音がする。

僧侶の横に立った男は、俺よりも頭が一つ分くらいは背の高い屈強そうな青年だった。
褐色の肌と太い腕はシーフというよりも戦士のよう。身に着けている防具も一流のもの。
彼は鋭い目付きで俺のことを睨みつけると鼻でふんと嗤った。

「随分弱そうな奴を仲間にしてたんだな」
「どう、見える?彼は君とは違ってゴールドバッジだし、僕たちの足を引っ張らないだろうね」

男の馬鹿にしたような声が聞こえるけど、それよりも俺の心臓が嫌な音を立てていてやかましい。
屈強そうなシーフ。
その胸に光るのは、長年シーフをしてきた証拠のゴールドバッジ。

つまり彼は俺なんかよりもずっと格上だってことだ。
体力もありそうだしあれだけ太い腕なら戦うこともできるだろう。

代わりとはそういうことか。
中途半端な俺なんかよりも、確かにずっと彼の方が良さそうだ。
その事実が胸に落ちて来て、でも受け止めたくなくてシャツの胸元を握りしめる。

「ね、ロルド。君はもうギルドにも来なくていいよ。私から皆に伝えるよ。ちゃんと、君は文句も言わずに立ち去ったって」

顔色を失って蒼褪める俺に、僧侶がまるで唆すように囁いた。

「で、でも……俺、ウォーレンに、」

でも俺は、ウォーレンにメンバーとして選んでもらった。
道中も戦闘中も守られてばっかりだったけどそれでも少しは罠の解除や敵の察知やらで役に立っていた、はず。
少しは役に立っていたと思いたい。
それなのに急にいなくなってしまうなんて。
挨拶もせずに立ち去るなんてあまりにも悲しい。
俺を引き上げてくれてありがとうと伝えたいし、少しの間だったけど楽しかったとも言いたい。
さよならと言うのは辛いし、もしかしたら情けない顔をしてしまうかもしれないけど、それでも最後になるなら顔が見たい。
それに、もしかしたら。
もしかしたらだけど、……シーフが二人パーティーに居てもいい、って言ってくれるかもしれない。

縋るように呟いた俺の言葉に、僧侶は細い眉を片方だけ器用に釣り上げた。

「あれ、ウォーレンに直接言われたい? クビだってこと」

冷たく突き放すように言われて、その言葉に心が凍る。
ウォーレンに要らないものを見るように冷たく見つめられ、クビだと言われる。
そのことを想像するだけで涙がじわりと滲みそうだった。

たしかに、俺はウォーレンに感謝しているし好きだけど、それは俺の勝手な想いだ。
最後に挨拶がしたいなんて建前で、本当はウォーレンに引き留めて欲しいんだ。
俺よりも強くて都合のいいシーフが見つかったんなら、そっちを選ぶのは当たり前でどうしようもないことなのに。
最後の最後まで迷惑を掛けようとするなんて……やっぱり俺は二流だし弱い人間みたいだ。

僧侶の言う通り、ウォーレンに冷たくもう要らないと言われたらきっと弱い俺は泣いてしまう。
惨めに泣き喚いて縋りついてそれでも突き放されて、きっととんでもない醜態をさらすだろう。
そんな姿は見せない方がいいのかもしれない。

「後のことは、私に任せてくれれば大丈夫。ウォーレンだって君のことなんてすぐに忘れるよ。そうだね、君は……精々、その体を使って日銭でも稼いできたら?」

真っすぐ立っていられなくてふらりとその場でよろめく俺の胸元に、僧侶が視線を這わせる。
それが明らかに俺がウォーレンに抱かれていることを指しているのが分かって、顔からますます血の気が引いていくのが分かった。








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