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12. 告白
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「え……?」
手首に巻き付いたのはおそらくロープかなにかだろう。
皮膚に少しだけ食い込んで痛みが走るが、それ以上に頭を混乱が襲う。
目を瞬かせているとそのままひょいと子供のように抱え上げられた。
「俺の気持ちを分かっててしらばっくれているんだな? 連れ去るのはせめてこの旅が終わってからにしようと思っていたが、お前が逃げるつもりなら容赦しない」
「つ、連れ去る?」
「そうだ。俺の故郷に。周りもオークしかいないからな、お前を閉じ込めておいても咎める者なんていない」
「は!?」
ウォーレンの故郷。
それってまさかオークの村なんだろうか。
人間とは離れて暮らす彼らだけの社会。
噂には聞いたことがある。
だけど冒険者であっても彼らの世界に足を踏み入れることは危険でなかなかできなくて、実際に行ったことがある人間なんて滅多にいない。
そんなところに俺を連れて行ってどうするつもりだ。
俺がそこで役に立てることなんてないだろう。
「は……? なんで? 俺を連れてってどうするんだよ」
「決まっているだろう。嫁にする」
首を傾げていると、強い口調で言い切られる。
そのきっぱりとした言葉に、俺は固まった。
「へ……?」
「怖いか? だけどお前に選択肢はない。悪いがずっとそこで俺と一緒に暮らすんだ。何年かして抵抗しなくなったら、庭先くらいには出してやる」
嫁?
彼は何を言っているんだ。
嫁ってあの嫁だよな。
しかもウォーレンとずっと一緒に暮らすってどういうことだ。
理解できなくて無言で口を開けている俺に、彼は剣呑な表情で瞳を細めた。
「毎日泣くまでぐちゃぐちゃにしてやろうな。今までは壊さないように手加減してたけど……もういいか」
彼は怖い顔をしてほほ笑むとぺろりと唇を舐めた。
分厚く赤いしたが動く様に背筋にぞくりと粟立って唾を飲み込む。
そのどこか暴力的な危うさを持つ色気に腰が抜けてしまいそうだけど、そのまま歩き出そうとするウォーレンの腕の中でもがいた。
「ま、待ってよ……俺の相手なんて、冗談でも嫌だって言ってたじゃないか」
そうだ。
彼は俺のことを好きどころか、手を出すのすら嫌がるほど好みじゃないと言っていた。
話題に上るのさえ嫌だと言いたげだったじゃないか。
なのに……嫁?
彼の言葉が理解できない。
俺をどこかに連れ去って売り飛ばすとかなら分かるけど、まるで俺を傍に置きたがるような彼の言葉に混乱して、何度も彼の台詞を頭の中で反芻してそれでも分からない。
路地裏から出ようとしていたウォーレンは、足を止めて片方の眉を吊り上げた。
「何を言ってるんだ?」
「俺は簡単に股を開きそうだけど、それでも俺の相手なんて冗談でも馬鹿げてるって、」
確かにそう言っていたじゃないか。
いつも穏やかなウォーレンが、不愉快そうに冷たくそう言い放ったじゃないか。
その時のことを思い出して目に涙がじわりと浮かび、だけど一度開いた口は塞がらずにぽろぽろと言葉を零す。
俺が隠れて聞いていたことを、二人の会話を覚えていることをありったけ伝えると。
「待ってくれ。違う」
ウォーレンは焦ったように首を横に振った。
違う、そんなわけないと何度も否定の言葉を繰り返し呟く。
それからなぜか覚悟を決めたような顔をして俺の瞳を強く見つめた。
「本当のことを言うと……ギルドでお前に声を掛けた時から可愛いと思っていたんだ。細くて小さくて華奢なのに瞳が生命力で燃えるようで、とんでもなく好みだと……。だけど旅をするうちに、ロルドは真面目で努力家で、俺なんかが相手をと望んではいけないと思った。だから欲望を必死で押し殺していた」
抱き上げられている腕に力が籠る。
低く囁かれる言葉がするりと耳に入り込んで来て、それを少しづつ俺は飲み込んでいく。
「俺は他の奴が、お前をそういった冗談の話題にするのが嫌だったんだ。俺自身がオークの本能を抑えているから余計に腹が立った。俺が必死で目を逸らしていることを意識させられることに苛立った」
だから決して、お前のことを嫌がったわけじゃない。
そう耳元で低く囁かれる。
甘く、だけど真剣な響きを持って。
本当だろうか。
そんな、そんなこと……ウォーレンが俺のことを最初からいいと思っていたなんてこと、あるんだろうか。
確かに彼は最初から優しかったけど、僧侶も言っていた通り彼は誰にでも優しい気がするし。
突如として告げられた内容を信じ切ることなんてできなくて俺が黙っていると彼は言葉を重ねた。
「だがあの月の夜に、お前が俺を誘ったんだ。それまで俺は我慢していた……なのに、お前が箍を外したんだ。ずっとぎりぎりで堪えていたものを、お前は犬に餌でも投げるように明け渡したんだ。お前の気持ちは分からなかったが、あの時にお前は必ず俺のものにすると決めた」
「で、でも……」
まるで俺に執着しているかのような、本当に俺を求めているかのような甘い言葉。
真っすぐな瞳い射抜かれて心が震える。
だけど。
だけど、俺はそんなはずないと首を横に振る。
だって俺はずっとウォーレンに恋してたけど彼は違うはず。
誰にでも優しい彼は、俺を特別なんかにしない。
だって。
「俺、ウォーレンに好きとかって言われたことないよ?」
俺を好きなら、ウォーレンが好きなら一言そう言ってくれれば。
俺みたいな奴から彼を好きっていうのは勇気がいるけど、でも強くて格好良くて何でも持ってる彼なら、そう言えば俺はいくらでも彼に付いて行っただろう。
今までそんな言葉を欠片も言わなかったじゃないか。
そう思って零した言葉に、ウォーレンは一瞬ぴたりと動きを止めて。
それから大きくため息をついた。
「ロルド。……オークはこの相手を嫁にするって決めたら、その人を無理やり奪う。醜いオークに求婚されても嫌がられるのは分かってるから、人間みたいに悠長に口説いたりしない。力づくで、相手の意思なんか関係なくオークの村に連れて帰って孕むまで種付けする。それが俺たちの求愛で……すまない、あまり愛の言葉というのがなくて……だが言葉でちゃんと伝えるべきだった」
まるで逃がさないと言わんばかりに強く抱きしめられて、彼の顔に近づいてしまってそのことに少しどきりと心臓が鳴る。
至近距離でひたりと視線が合わせられて、それから本当に優しく囁かれた。
「好きだ。初めて会った時から惹かれていたし、内面を知ってからはもっと好きになった。触れてしまってからはどうしても諦めることはできない。だから……俺と一緒に、オークの村まで来てほしい。そっちが嫌なら、母方のエルフの郷でもいい。エルフは少々気難しい年寄りが多いが、住むには悪くない」
好き。
その言葉がウォーレンの口から出てくるのが信じられない。
絶対にそんなことないって何十回も否定していたのに。
それに一緒に彼の故郷へ行くだなんて、そんな夢みたいなことが起こっていいんだろうか。
「お……俺、男だから嫁にはなれないよ? 子供も産めないし……」
「傍にいてくれるだけでいい」
「あと、でも、その、遺跡は……? みんなと行くんじゃないの?」
「あんなの戦士が行きたいと喚いていたから付いてきてやっただけだ。本当に行く気なら、俺一人と……あとはシーフがいれば事足りる」
確かに肉体的に強くて、魔力もあるウォーレンがいれば戦士も魔術師も回復係だって要らない。
手先が器用なシーフが遺跡の罠を見つけて鍵さえ開けば、彼一人で踏破できるだろう。
たしかにそうだけど。
俺が口をぱくぱくさせていると、ウォーレンは俺を片手で抱えたまま、もう片方の掌で俺の頭をぐりぐりと撫でた。
「行ってみたかったのか? だったら俺の両親にお前を会わせた後に行こうか。優秀なシーフがいれば、どこへだって行けるからな」
「優秀な、シーフ……」
「ああ、ロルド。お前は体力がないことを気にしているみたいだったが、シーフの強さは感覚の鋭さだ。武器を持って敵に斬りかかるのは戦士の役目なのに、勘違いする奴が多いけど、お前は本当に優秀なシーフだよ」
頭を撫でていた掌がするりと俺の頬まで降りてくる。
大きくてかさついた手に頬をすっぽりと包まれて、俺はただ茫然と呟いた。
「本当に……?」
「もちろんだ」
柔らかく微笑まれて心が暖かくなる。
本当に俺は優秀なんだろうか。
どのパーティーでも俺は体が小さいし戦えないだろうって軽んじられてきた。
だけどウォーレンの役には立っていたんだろうか。
信じがたいけど彼のその穏やかな笑顔に、心の奥で凍っていた何かがゆっくりと溶けていくのを感じる。
「ロルド、お前の返事を聞きたい。……一緒に、俺と共に暮らしてくれるか?」
穏やかに、だけど低く確かな強さをもった声で尋ねられる。
その瞳は真剣そのもので嘘を言っているようには思えなくて、心を堰き止めていたものが溢れ出す。
俺は消えそうな声で『好き』と『一緒にいたい』と何度も呟いて、彼の太い首に顔を擦り付けた。
ウォーレンはどこかほっとしたように息を吐くと、優しく縛られた俺の腕を解いてくれる。
自由になった腕で彼の首に抱き着く。
温かい肌の感触。
抱き返してくれる優しい腕。
安心して帰ることのできる場所。
どれもが俺がずっと前になくして、それから焦がれ続けたものだった。
好きな人と故郷を一気に手に入れて、俺はただその幸せに打ち震えた。
-------------
ロルド:二流だと自分では思ってるけど腕前は良い。オークの村でもエルフの郷でも年寄りに可愛がられまくって幸せに。独占したいウォーレンはちょっと複雑な気分。将来は二人で冒険に出たり郷でまったりしたりと楽しく過ごす。
ウォーレン:オーク父とエルフ母のハイブリッド。普段は穏やかだけど、オークの狂暴さとエルフの狡猾さを持っている。そのためにちょっとロルドに手を出すのを躊躇していた。ロルドが最後に嫌がったら誘拐監禁&快楽堕ちエンド(番外編)
他のパーティーメンバー:主戦力のウォーレンが抜けてしまって、遺跡に辿り着くもののデッドエンド。僧侶はウォーレンのことが好きで捻くれてしまった。
手首に巻き付いたのはおそらくロープかなにかだろう。
皮膚に少しだけ食い込んで痛みが走るが、それ以上に頭を混乱が襲う。
目を瞬かせているとそのままひょいと子供のように抱え上げられた。
「俺の気持ちを分かっててしらばっくれているんだな? 連れ去るのはせめてこの旅が終わってからにしようと思っていたが、お前が逃げるつもりなら容赦しない」
「つ、連れ去る?」
「そうだ。俺の故郷に。周りもオークしかいないからな、お前を閉じ込めておいても咎める者なんていない」
「は!?」
ウォーレンの故郷。
それってまさかオークの村なんだろうか。
人間とは離れて暮らす彼らだけの社会。
噂には聞いたことがある。
だけど冒険者であっても彼らの世界に足を踏み入れることは危険でなかなかできなくて、実際に行ったことがある人間なんて滅多にいない。
そんなところに俺を連れて行ってどうするつもりだ。
俺がそこで役に立てることなんてないだろう。
「は……? なんで? 俺を連れてってどうするんだよ」
「決まっているだろう。嫁にする」
首を傾げていると、強い口調で言い切られる。
そのきっぱりとした言葉に、俺は固まった。
「へ……?」
「怖いか? だけどお前に選択肢はない。悪いがずっとそこで俺と一緒に暮らすんだ。何年かして抵抗しなくなったら、庭先くらいには出してやる」
嫁?
彼は何を言っているんだ。
嫁ってあの嫁だよな。
しかもウォーレンとずっと一緒に暮らすってどういうことだ。
理解できなくて無言で口を開けている俺に、彼は剣呑な表情で瞳を細めた。
「毎日泣くまでぐちゃぐちゃにしてやろうな。今までは壊さないように手加減してたけど……もういいか」
彼は怖い顔をしてほほ笑むとぺろりと唇を舐めた。
分厚く赤いしたが動く様に背筋にぞくりと粟立って唾を飲み込む。
そのどこか暴力的な危うさを持つ色気に腰が抜けてしまいそうだけど、そのまま歩き出そうとするウォーレンの腕の中でもがいた。
「ま、待ってよ……俺の相手なんて、冗談でも嫌だって言ってたじゃないか」
そうだ。
彼は俺のことを好きどころか、手を出すのすら嫌がるほど好みじゃないと言っていた。
話題に上るのさえ嫌だと言いたげだったじゃないか。
なのに……嫁?
彼の言葉が理解できない。
俺をどこかに連れ去って売り飛ばすとかなら分かるけど、まるで俺を傍に置きたがるような彼の言葉に混乱して、何度も彼の台詞を頭の中で反芻してそれでも分からない。
路地裏から出ようとしていたウォーレンは、足を止めて片方の眉を吊り上げた。
「何を言ってるんだ?」
「俺は簡単に股を開きそうだけど、それでも俺の相手なんて冗談でも馬鹿げてるって、」
確かにそう言っていたじゃないか。
いつも穏やかなウォーレンが、不愉快そうに冷たくそう言い放ったじゃないか。
その時のことを思い出して目に涙がじわりと浮かび、だけど一度開いた口は塞がらずにぽろぽろと言葉を零す。
俺が隠れて聞いていたことを、二人の会話を覚えていることをありったけ伝えると。
「待ってくれ。違う」
ウォーレンは焦ったように首を横に振った。
違う、そんなわけないと何度も否定の言葉を繰り返し呟く。
それからなぜか覚悟を決めたような顔をして俺の瞳を強く見つめた。
「本当のことを言うと……ギルドでお前に声を掛けた時から可愛いと思っていたんだ。細くて小さくて華奢なのに瞳が生命力で燃えるようで、とんでもなく好みだと……。だけど旅をするうちに、ロルドは真面目で努力家で、俺なんかが相手をと望んではいけないと思った。だから欲望を必死で押し殺していた」
抱き上げられている腕に力が籠る。
低く囁かれる言葉がするりと耳に入り込んで来て、それを少しづつ俺は飲み込んでいく。
「俺は他の奴が、お前をそういった冗談の話題にするのが嫌だったんだ。俺自身がオークの本能を抑えているから余計に腹が立った。俺が必死で目を逸らしていることを意識させられることに苛立った」
だから決して、お前のことを嫌がったわけじゃない。
そう耳元で低く囁かれる。
甘く、だけど真剣な響きを持って。
本当だろうか。
そんな、そんなこと……ウォーレンが俺のことを最初からいいと思っていたなんてこと、あるんだろうか。
確かに彼は最初から優しかったけど、僧侶も言っていた通り彼は誰にでも優しい気がするし。
突如として告げられた内容を信じ切ることなんてできなくて俺が黙っていると彼は言葉を重ねた。
「だがあの月の夜に、お前が俺を誘ったんだ。それまで俺は我慢していた……なのに、お前が箍を外したんだ。ずっとぎりぎりで堪えていたものを、お前は犬に餌でも投げるように明け渡したんだ。お前の気持ちは分からなかったが、あの時にお前は必ず俺のものにすると決めた」
「で、でも……」
まるで俺に執着しているかのような、本当に俺を求めているかのような甘い言葉。
真っすぐな瞳い射抜かれて心が震える。
だけど。
だけど、俺はそんなはずないと首を横に振る。
だって俺はずっとウォーレンに恋してたけど彼は違うはず。
誰にでも優しい彼は、俺を特別なんかにしない。
だって。
「俺、ウォーレンに好きとかって言われたことないよ?」
俺を好きなら、ウォーレンが好きなら一言そう言ってくれれば。
俺みたいな奴から彼を好きっていうのは勇気がいるけど、でも強くて格好良くて何でも持ってる彼なら、そう言えば俺はいくらでも彼に付いて行っただろう。
今までそんな言葉を欠片も言わなかったじゃないか。
そう思って零した言葉に、ウォーレンは一瞬ぴたりと動きを止めて。
それから大きくため息をついた。
「ロルド。……オークはこの相手を嫁にするって決めたら、その人を無理やり奪う。醜いオークに求婚されても嫌がられるのは分かってるから、人間みたいに悠長に口説いたりしない。力づくで、相手の意思なんか関係なくオークの村に連れて帰って孕むまで種付けする。それが俺たちの求愛で……すまない、あまり愛の言葉というのがなくて……だが言葉でちゃんと伝えるべきだった」
まるで逃がさないと言わんばかりに強く抱きしめられて、彼の顔に近づいてしまってそのことに少しどきりと心臓が鳴る。
至近距離でひたりと視線が合わせられて、それから本当に優しく囁かれた。
「好きだ。初めて会った時から惹かれていたし、内面を知ってからはもっと好きになった。触れてしまってからはどうしても諦めることはできない。だから……俺と一緒に、オークの村まで来てほしい。そっちが嫌なら、母方のエルフの郷でもいい。エルフは少々気難しい年寄りが多いが、住むには悪くない」
好き。
その言葉がウォーレンの口から出てくるのが信じられない。
絶対にそんなことないって何十回も否定していたのに。
それに一緒に彼の故郷へ行くだなんて、そんな夢みたいなことが起こっていいんだろうか。
「お……俺、男だから嫁にはなれないよ? 子供も産めないし……」
「傍にいてくれるだけでいい」
「あと、でも、その、遺跡は……? みんなと行くんじゃないの?」
「あんなの戦士が行きたいと喚いていたから付いてきてやっただけだ。本当に行く気なら、俺一人と……あとはシーフがいれば事足りる」
確かに肉体的に強くて、魔力もあるウォーレンがいれば戦士も魔術師も回復係だって要らない。
手先が器用なシーフが遺跡の罠を見つけて鍵さえ開けば、彼一人で踏破できるだろう。
たしかにそうだけど。
俺が口をぱくぱくさせていると、ウォーレンは俺を片手で抱えたまま、もう片方の掌で俺の頭をぐりぐりと撫でた。
「行ってみたかったのか? だったら俺の両親にお前を会わせた後に行こうか。優秀なシーフがいれば、どこへだって行けるからな」
「優秀な、シーフ……」
「ああ、ロルド。お前は体力がないことを気にしているみたいだったが、シーフの強さは感覚の鋭さだ。武器を持って敵に斬りかかるのは戦士の役目なのに、勘違いする奴が多いけど、お前は本当に優秀なシーフだよ」
頭を撫でていた掌がするりと俺の頬まで降りてくる。
大きくてかさついた手に頬をすっぽりと包まれて、俺はただ茫然と呟いた。
「本当に……?」
「もちろんだ」
柔らかく微笑まれて心が暖かくなる。
本当に俺は優秀なんだろうか。
どのパーティーでも俺は体が小さいし戦えないだろうって軽んじられてきた。
だけどウォーレンの役には立っていたんだろうか。
信じがたいけど彼のその穏やかな笑顔に、心の奥で凍っていた何かがゆっくりと溶けていくのを感じる。
「ロルド、お前の返事を聞きたい。……一緒に、俺と共に暮らしてくれるか?」
穏やかに、だけど低く確かな強さをもった声で尋ねられる。
その瞳は真剣そのもので嘘を言っているようには思えなくて、心を堰き止めていたものが溢れ出す。
俺は消えそうな声で『好き』と『一緒にいたい』と何度も呟いて、彼の太い首に顔を擦り付けた。
ウォーレンはどこかほっとしたように息を吐くと、優しく縛られた俺の腕を解いてくれる。
自由になった腕で彼の首に抱き着く。
温かい肌の感触。
抱き返してくれる優しい腕。
安心して帰ることのできる場所。
どれもが俺がずっと前になくして、それから焦がれ続けたものだった。
好きな人と故郷を一気に手に入れて、俺はただその幸せに打ち震えた。
-------------
ロルド:二流だと自分では思ってるけど腕前は良い。オークの村でもエルフの郷でも年寄りに可愛がられまくって幸せに。独占したいウォーレンはちょっと複雑な気分。将来は二人で冒険に出たり郷でまったりしたりと楽しく過ごす。
ウォーレン:オーク父とエルフ母のハイブリッド。普段は穏やかだけど、オークの狂暴さとエルフの狡猾さを持っている。そのためにちょっとロルドに手を出すのを躊躇していた。ロルドが最後に嫌がったら誘拐監禁&快楽堕ちエンド(番外編)
他のパーティーメンバー:主戦力のウォーレンが抜けてしまって、遺跡に辿り着くもののデッドエンド。僧侶はウォーレンのことが好きで捻くれてしまった。
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