私は元カレの都合のいい女です

鈴ーりんー

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●踏み出す努力

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「まどか・・・」


まどかはしばらく見ないうちに、ずいぶん雰囲気が変わっていた。

髪の毛はふわふわの茶髪のロングヘアで少女っぽいかわいいイメージだったのだけど、今は黒髪の顎の下くらいに切りそろえられたボブヘアで少し大人な雰囲気に変化していた。

隆也の影響なのだろうかと、ぼんやりと思う。


「由希、見たよ!今の彼氏?」


まどかが、からかうように笑いながら聞いてくる。

笑顔も何となく、以前と違っている感じがした。


「うん、彼氏だよ」

「そっか、由希にすごくあってる感じの人だね!お似合いだよ」

「そう?」


私は複雑な気分になって、曖昧に笑った。


「まどかは隆也とはどう?うまくいってる?」


口に出してしまってから、聞かなければよかったと後悔した。

何でこんな事、自分から聞いてしまったんだろう・・・


無意識に私はまだ隆也とまどかの事、気になって仕方がないのだろうか。

まどかはそんな私の投げかけた質問に、少し迷ったように答えた。


「実は、隆也君からプロポーズされた」

「・・・・・・!」


驚きで、言葉が出なかった。


こんなにすぐまどかにプロポーズしてたなんて。

よっぽど隆也は、まどかを離したくないんだろう。

本当にまどかの事を愛しているんだ―――



こんな話は、人がたくさん通る校門の前でする話ではない。

だけど私はここから動く事はできなかった。


そしてまどかも『場所を移そう』とは言わなかった。


「・・・で、どうするの?」


私はようやくの思いで、そう聞いた。

まどかは困ったように笑った。


「うん。返事はまだいいって言うから、考えるつもり・・・」

「そっか」

「さすがに私、まだ大学1年だしね。まだ結婚とか早いよ」

「まぁ、確かにそうだよね」


私は何て言葉を返したらいいのかわからなくて、気のないような相槌を打つしかできなかった。


本当は心の中でグルグルといろいろな想いがうずまいていた。


「でもさ、隆也はまどかの事を本当に愛してるんだと思う。だから真剣に考えてあげてね」


私はそう言った。

私はまだ隆也の事をつい思いやってしまう。

隆也の苦しむ姿や悲しむ姿は見たくないと思っている。


「わかってる・・・。でも結婚って私、よくわからないよ・・・実は男の人とつきあうっていうこと自体もよくわからないのかも・・・」

「え?」

「私、ずっと母子家庭で育ったじゃない?だから父親の事ってわからない。結婚の意味もよくわからないんだよ」


まどかは困ったように笑った。


私はまどかの言葉に口を閉ざすしかなかった。



「でも、まどかのお母さん、まどかが高校に入る直前に再婚したじゃない?」


当時のまどかの話では、その人はすごく優しくて、いいお父さんになってくれそうな人だと言っていた。

その人と高校時代の3年間は一緒に暮らしたはずだ。


「うん。でもね、お母さんが再婚して余計結婚の意味がわからなくなってしまった感じ・・・」


まどかがうつむいて言った。


まどかが引っ越して会わなくなってからの高校の3年間に、まどかに何があったんだろう・・・


もしかして何かすごくつらい事や、悲しい事があったのだろうか。

詳しく聞きたいと思ったけど、私は深くは聞けなかった。


「そういえば、由希のお母さんは元気?」


まどかが唐突に聞いてきた。

まどかの意外な質問に、私は戸惑いながらも答える。


「うん、最近はあんまり実家に帰ってないけど、電話はしょっちゅうしてるよ。
相変わらず元気で、テンション高い。趣味の料理とかしまくってるって」

「そっか・・・」


まどかはうつむく。

何だかすごく寂しそうな表情だ。


「由希のお母さんみたいな人が、きっとお母さんなんだと思うよ。もし私のお母さんが、由希のお母さんだったら、結婚の意味もわかるかもしれないのになぁ・・って思う」

「・・・・・・」


ボソリとつぶやいたまどかの言葉に、私は何も言葉を返す事ができない。



先ほどまでは校門には人が行き交っていた。


だけど、もう授業が始まる時間なのか、校門の前にいるのは私とまどかだけになってしまった。


「由希、最近よく思い出すんだよ。由希のお母さんが作ってくれたハンバーグの味。あれが家庭の味っていうんだなぁ・・・って思ったよ。うちはいつも買ってきたハンバーグだったからさ」


まどかはそう言うと、腕時計を見て、ニッコリ笑った。


「ごめんね、引き止めちゃって。もう授業始まってるよ。そろそろ行かないと!じゃぁ」


まどかはそう言って、軽く右手を上げると、背を向けた。


まどかが校門をくぐっていく。


そしてゆっくりとまどかの背中が遠くなっていく。
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