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●花火大会
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隆也との別れから、2ヶ月たった。
季節はいつのまに夏になっていた。
毎日蝉の泣く声がうるさくて、太陽がジリジリと容赦なく肌に照りつける季節。
大学では、初めての試験が終った。
隆也との事があって、授業もさぼりがちだったから心配してたけど、シュンが勉強を教えてくれたり、レポートを一緒にまとめてくれたりした。
そのおかげで単位を落とすこともなく、無事に夏休みを迎えることができた。
“夏休み”
言葉の響きだけで、テンションが上がる。
ウキウキしてしまう。
今年の夏休みは、シュンとたくさん遊んで、楽しもうと決めている。
シュンは来年大学4年生なので、今年が夏休みをめいいっぱい満喫するチャンスなのだ。
シュンとは相変わらず一緒にいる。
喧嘩もしないし、毎日穏やかだ。
毎日のように会って、いろんなとこに行ったり、お互い一人暮らしなので家に泊まりあったりしている。
だけどまだエッチはしてない。
ほっぺにチューと、ギューっと抱きしめてくれるだけ。
シュンは隆也を忘れる事をせかしてきたり、聞いたりしてはこなかった。
ゆっくりと、私の心の整理がつくのを待ってくれているんだろう・・・
相変わらず、私はシュンの大きい愛に包まれている。
隆也の事は、少しづつ私の心の中から小さくなっていってる。
当然隆也とはずっと会っていないし、なぜかまどかとも最近大学でも会わなかった。
会わなければ、
声を聞かなければ、
どんどんこうやって消えていくんだ。
このまま全部記憶の中から消えてしまえばいい―――
そうしたら私の隆也への気持ちは、100%消えてくれるだろう。
夏休みが始まって、最初の週のある日。
私とシュンはあまりの暑さに外に出る気になれず、私の家でまったりしていた。
「本当に暑いね」
「暑いなぁ。後でアイスでも買いに行くか?」
「うん」
私はそう答えながら、「TOKYOHAPPY」という、タウン情報誌をパラパラとめくっていた。
そしてあるページで、私の手は止まる。
「シュン!見て!!これ」
私はシュンに無理やりそのページを押し付けるように、見せた。
「お!花火大会か」
シュンが明るい顔を見せた。
そのページに乗っていたのは、花火大会の記事。
ここの近くの川で、毎年比較的大きい花火大会が開催されるのだという。
それは今週の土曜日だと書いてあった。
「行きたいの?」
シュンが聞いてくる。
「うん!行きたい!この花火大会行ったことないもん!!それに夏といったら花火でしょ?」
私はかなり行く気満々になっていた。
夏の夜空に明るく広がる花火・・・、
色とりどりの花火・・・、
すごく見たい!!
「よし!行くか」
「うん!」
「その代わり、浴衣着て行かないと、連れていかないからな」
「えぇ」
シュンはニヤニヤしながら、私を見ている。
「でもさ、浴衣着られないし、トイレ行くのも不便だもん・・・」
「ゴチャゴチャ言わない!もう約束だからな♪」
私はシュンの言葉にプーッとふくれて見せる。
そんな私のふくれたほっぺたに、シュンが軽くチュッとキスした。
「バカ!」
思わず赤くなって叫んだ私を、シュンがぎゅっと抱きしめた。
「由希ちゃんの浴衣姿、すごくかわいいんだろうなぁ・・・」
つぶやくように、耳元で言うシュン。
私は密かに、実家でお母さんに浴衣を着せてもらおうと決意した。
季節はいつのまに夏になっていた。
毎日蝉の泣く声がうるさくて、太陽がジリジリと容赦なく肌に照りつける季節。
大学では、初めての試験が終った。
隆也との事があって、授業もさぼりがちだったから心配してたけど、シュンが勉強を教えてくれたり、レポートを一緒にまとめてくれたりした。
そのおかげで単位を落とすこともなく、無事に夏休みを迎えることができた。
“夏休み”
言葉の響きだけで、テンションが上がる。
ウキウキしてしまう。
今年の夏休みは、シュンとたくさん遊んで、楽しもうと決めている。
シュンは来年大学4年生なので、今年が夏休みをめいいっぱい満喫するチャンスなのだ。
シュンとは相変わらず一緒にいる。
喧嘩もしないし、毎日穏やかだ。
毎日のように会って、いろんなとこに行ったり、お互い一人暮らしなので家に泊まりあったりしている。
だけどまだエッチはしてない。
ほっぺにチューと、ギューっと抱きしめてくれるだけ。
シュンは隆也を忘れる事をせかしてきたり、聞いたりしてはこなかった。
ゆっくりと、私の心の整理がつくのを待ってくれているんだろう・・・
相変わらず、私はシュンの大きい愛に包まれている。
隆也の事は、少しづつ私の心の中から小さくなっていってる。
当然隆也とはずっと会っていないし、なぜかまどかとも最近大学でも会わなかった。
会わなければ、
声を聞かなければ、
どんどんこうやって消えていくんだ。
このまま全部記憶の中から消えてしまえばいい―――
そうしたら私の隆也への気持ちは、100%消えてくれるだろう。
夏休みが始まって、最初の週のある日。
私とシュンはあまりの暑さに外に出る気になれず、私の家でまったりしていた。
「本当に暑いね」
「暑いなぁ。後でアイスでも買いに行くか?」
「うん」
私はそう答えながら、「TOKYOHAPPY」という、タウン情報誌をパラパラとめくっていた。
そしてあるページで、私の手は止まる。
「シュン!見て!!これ」
私はシュンに無理やりそのページを押し付けるように、見せた。
「お!花火大会か」
シュンが明るい顔を見せた。
そのページに乗っていたのは、花火大会の記事。
ここの近くの川で、毎年比較的大きい花火大会が開催されるのだという。
それは今週の土曜日だと書いてあった。
「行きたいの?」
シュンが聞いてくる。
「うん!行きたい!この花火大会行ったことないもん!!それに夏といったら花火でしょ?」
私はかなり行く気満々になっていた。
夏の夜空に明るく広がる花火・・・、
色とりどりの花火・・・、
すごく見たい!!
「よし!行くか」
「うん!」
「その代わり、浴衣着て行かないと、連れていかないからな」
「えぇ」
シュンはニヤニヤしながら、私を見ている。
「でもさ、浴衣着られないし、トイレ行くのも不便だもん・・・」
「ゴチャゴチャ言わない!もう約束だからな♪」
私はシュンの言葉にプーッとふくれて見せる。
そんな私のふくれたほっぺたに、シュンが軽くチュッとキスした。
「バカ!」
思わず赤くなって叫んだ私を、シュンがぎゅっと抱きしめた。
「由希ちゃんの浴衣姿、すごくかわいいんだろうなぁ・・・」
つぶやくように、耳元で言うシュン。
私は密かに、実家でお母さんに浴衣を着せてもらおうと決意した。
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