私は元カレの都合のいい女です

鈴ーりんー

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●花火大会

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花火大会当日―――


昨日は雨が降ってかなり不安だったけど、今日は晴れてほっとした。


ひそかに前日にてるてる坊主を作ってしまった私はアホだろうか。



私は早起きして、今住んでるアパートから1時間半かけて、実家に帰った。


電話はしょっちゅうしているけど、あまり実家に帰らない私がいきなり実家に帰ったので、母親がすごく驚いていた。


そして、母親に浴衣の着付けをしてもらった。


浴衣は花火大会に行く事が決まった次の日に、シュンに内緒で買ったものだ。

水瀬に、買うのをつきあってもらったんだ。


白地にピンクの大きな花柄のカラフルな明るい柄。
所々金魚が泳いでいる。



水瀬はこの浴衣を『すごく由希らしくて似合う』と、強く薦めてくれた。



シュンは似合うって言ってくれるだろうか?


実は初めての浴衣なのだ。

少し緊張してしまう。



実家にいきなり帰ってきて、着付けをしてもらったと思ったらすぐ帰ろうとする私に、母親はかなり不満そうだった。

だけど、
「彼氏と花火大会に行く」
と言ったら、いきなり上機嫌になった。


そして、すごくうれしそうに、
「今度連れて来なさい」
と、何度も言った。


シュンの事、絶対母親は気に入るだろうなぁ・・・と思う。


“シュンに会わせたいなぁ・・・”って思った。


いつか絶対隆也の事を忘れられたら、シュンをお母さんに会わせたいなって思ったんだ。



シュンとの待ち合わせは17時半。


花火大会の会場の最寄り駅の改札前で―――


みんなこの花火大会に行くのか、電車はすごく混んでいた。

私は浴衣の着付けが崩れないように、必死に体をガードする。


ようやく待ち合わせの駅について、私は改札に向かう。

もうホームから改札への道はすごい人で、まともに歩けないほど。


他のホームの電車からも、どんどん浴衣を着た人や家族連れ、そしてカップルが吐き出されてくる。


その人たちも一斉に改札を出ようとするのだから、どんどん人が密集して、混んでいく。



どうにか改札に着くと、目立たないところで、立っているシュンを見つけた。


「シュン~~!!」


私は大声でシュンを呼びながら、私の場所がわかるように大きく手を振る。


シュンは私のでかい声に気づいて、あせったように私の姿を探している。


そして私の姿を見つけると、驚いたような顔をして、視線を止めた。


私はゆっくりとシュンの側に、近づいていく・・・


「シュン、お待たせ」

「・・・・・・」


シュンは何も言わない。

ただ私を黙って、見ているだけだ。


“もしかして浴衣似合っていないのかな??”


ちょっと不安になる。



「シュン?」


私は思わず不安になって、シュンの顔を見る。


シュンは驚いたような顔で私の顔をしばらく見て、それからくしゃくしゃの笑顔になった。


「すげー!!かわいい!!」

「え?」

「すげー浴衣かわいい!!ちょー似合ってるじゃん!」


シュンはそう言って、私の頭を優しく撫でてくれた。


「えー嘘・・・」

「まじで!!すげーかわいいよ!俺、由希ちゃんが浴衣着てきてくれるなんて思わなかった!」

「シュンが着てこいって言ったんじゃん。実家に帰って着付けてもらって大変だったんだからね」


私は口をとんがらせて、つい憎まれ口を叩いてしまう。



「本当に着てきてくれたんだな。すげーうれしい」



シュンがあまりにも喜んでくれているから、私はすごくうれしかった。


こういう風に素直に私を褒めてくれるのって、隆也には絶対なかったことだ。


私の事を好きじゃなかったからかもしれないけど、隆也は私の服装や外見にはあまり関心がなかったような気がする。


隆也もまどかには、こうやって褒めたりするのかな・・・?



“あ!いけない!!”



また隆也の事を考えてしまった。


私は、そんな考えを振り払うように、軽く首を振った。


「由希ちゃん、行こう!」


隆也が私に手を差し出して、笑った。

私は笑顔でうなずいて、差し出された手を握った。


そう、今はシュンと一緒。

シュンの隣にいるんだ。


シュンの温かい手のぬくもりだけを感じていよう・・・
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