上 下
77 / 83
●後悔

1

しおりを挟む
顔に眩しさを感じて、私は目を覚ました。


ゆっくり目を開ける。

そして、頭を抱えながら、上半身を起こす。


ベッドの枕側のカーテンを昨日閉め忘れたから、こんなに眩しかったんだ。


「あ・・・!!」


昨日の出来事を思い出して、私は慌てて、隣を見る。

隆也は、隣にはいなかった。

シーツが隆也の寝ていた形に、皺になっていた。


私はその皺になった部分を、そっと手で撫でた。


昨日私と隆也は抱き合った。

シュンとも抱き合っている、このベッドで。


隆也は不安や悲しさを全部私にぶつけてきた。

全身が苦しくなるくらい、
息ができなくなるくらいに、
強く抱き合った。


私はため息をつくと、どうにか起き上がった。


裸の体に、側にあったタオル地のワンピースをすとんと羽織って、台所に行く。


ソファーのある部屋にも隆也はいなかったし、台所にも隆也はいなかった。


冷蔵庫からミネラルウォーターを出して、ボトルからそのまま飲んだ。

冷たい水が体内に入って、少し気分がしゃっきりする。


ふと、ソファーのところのテーブルを見ると、1枚のメモが乗っていた。

私が小走りで、テーブルに近づいて、メモを取る。


メモには、

『ごめん』

一言だけ書いてあった。


私は力が抜けてしまった。

その場に崩れるように、へたりこむ。


『ゴメン』って何!?

後悔してるって事?

なかったことにしたいって事?


たぶん隆也はこのメモを1枚置いて、始発で帰ってしまったんだろう。


私はテーブルに置いてあったスマホがチカチカしてるのに気づいた。

画面を見ると、留守電がはいっていた。

そっと再生ボタンを押す。



『由希ちゃん?シュンです。もしかして何かあった?心配です。連絡下さい』



シュンの優しい声が流れてきた。


留守電を聞いた途端、両手が細かく震え出した。


“私は昨日何てことをしてしまったの・・・?”


シュンが電話をくれた時、私は隆也と抱き合っていた。

あの時ならまだ引き返せたのに。


以前、元彼女の事で、すごくつらい想いをしたシュン。


私は又、シュンに同じような想いをさせてしまった。


もうつらい想いはさせない、

隆也を忘れて、ずっと側にいる、

・・・・そうシュンに約束したくせに。


私は頭を抱えた。



私を支えてくれたシュンを裏切るなんて・・・

最低だ・・・私。





でも、私はもっと最低だ―――

だって、昨日でわかってしまった。




私は隆也を忘れてなんかいない。
忘れられるはずがないんだって事を・・・



やっぱり、私隆也が好きだ。



どうしようもないくらい。

忘れたと思ったのは、ただ好きだという気持ちを無理やり押し込めてしまっただけ。


隆也の顔を見てしまうと、どうしようもなくなってしまう。

隆也のつらい顔を見ると、なんとかしてあげたくなってしまう。


隆也以外の事や、人がどうでもよくなってしまう。



本当に、
本当に、

最低だ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,572pt お気に入り:139

五分の奇跡

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:0

俺に着いてこい〜俺様御曹司は生涯の愛を誓う

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,669pt お気に入り:13

エスメルダ王国婚姻解析課~おひとりさま令嬢の婚活事変~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:12

元彼に捨てられた私はイケメンツンデレ彼氏と幸せに暮らしてます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:49

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,455pt お気に入り:3,013

夫たちのデスノート

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:198pt お気に入り:3

処理中です...