魔法の剣とエド

アズ

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第一章 魔法の剣

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 首のない馬がこっちに向かってくるのを見てどうしたらいいのかエドは頼るようにミアの方を見たが、ミアは首のない馬には見覚えがあるのか、むしろ別のことで驚いていた。
「普段大人しい首切れ馬が人を襲ってる!」
 白い馬もいれば黒色、茶色、様々な色の馬がいた。首がないのにどうやってあの生き物は生きているのか不思議だった。
「大丈夫。逃げる必要はないわ。木の後ろに立って避けるのよ」
 ミアに言われた通り木の影に入ると、男も同じように木の影に入った。
 首切れ馬達は木を避けるようにその場を勢いよく走り去っていった。
 その過ぎ去っていくのを三人は見届けると、ミアはさっきの男に近づいた。
「首切れ馬が興奮していたわ。あなた、なにをやらかしたの」
「単に調べたかっただけだよ」
「調べたかった?」とミアは聞いた。
「俺はこの大地を長いこと研究しているサイモンだ。宜しく」
 サイモンは革の手袋をした手を出した。だが、ミアはそれを無視した。
 サイモンは気にする素振りを見せずに手を引っ込めた。
「さっきは助かった。俺は主に生息する生き物の調査だ。あの馬がどうやって生きているのか、どうして首がないのか生物学的に調べたかったんだ。だが、ゆっくり近づいて触れた瞬間、奴らは怒りだしたんだ」
「怒ったんじゃない。興奮していたのよ。あなたが、それ以外のことをしてなければね」
「悪かったよ。君まで怒らないでくれ」
「だから、怒ってないわ。あなた、生物学者なの?」
「専門家っていうわけじゃない。あくまでも助手。雇われた身さ。ここにあるものを出来るだけ持ち帰りラボで調べるのさ」
「どうして調べる必要があるの?」
 それを聞いてサイモンはフッと笑った。
 ミアは機嫌を悪くし、サイモンは笑うのをやめた。
「いや、すまない。だが、研究者は知らないことを解明するのが仕事なんだ。それを何故と聞かれておかしなことを聞くと思っただけだ。だが、君はよく見れば魔女だね」
「ええ」
「魔女は歳をとらないのかな? 君は見た目と年齢が合っていないとみた。どうかな、僕の予想は?」
「女性に年齢を聞くなんて失礼ね。大人にしては常識がないのかしら」
「あはは、その答えで確信したよ。若い女性なら年齢を聞いても失礼だとは感じないよ。なにせ、若いんだからな。でも、君は違う」
「エド、この人を置いて行きましょう」
「いやいや待ってくれよ! 魔女と会うのは初めてなんだ。魔女ならここのことをよく知っているだろ?」
「あなた忘れたの? エドは人間。二人以上が長時間一緒にいるのはよくないことなのよ」
「知ってるよ。錬金術師の呪いだろ? だが、あれは直ぐにかかる呪いじゃないだろ。それに、質問に答えるぐらいいいだろ」
「あなたに教えてあげられるのは一つだけ。もう雪山へは戻れないわ」
「え? どうして」
「門が壊されてしまった」
「おい! 嘘だろ」
 彼は頭を抱えた。
「ふざけるなよ。それじゃ、先へ進むしかないだろ」
「ええ、そうよ。それじゃ、さよなら」
「待ってくれよ。俺はこの先への行き方までは知らないんだ。知ってるだろあんた達は。この先がどれだけ危険かを。燃える山だぜ? 噴火している山へ向かうなんでどうやってあの山を越えろって言うんだ」
「それぐらい自分でなんとかしなさい」
「意地悪なこと言わないでくれよ。魔女なら魔法が使えるだろ? あの山を越えられるならどんな魔法だっていい。俺にそれをかけてさえくれば、俺は一人だって構わないさ」
「魔法は使えない」
「なんだって!?」
「魔法を使い果たしてしまった。もう、魔法を使う為に必要な水がない。それも単なる水ではだめよ。汚れのない水でないと」
「汚れのない水ならこの大地にあるだろ」
「ええ。それにはもっと先へ行く必要がある」
「なら、それまでは俺も同行させてもらうからな」
 困ったことになった。ミアは面倒そうに愚痴をこぼしたくなる表情をしたが、最後はため息をついた。
「分かったわ」
「よし! それじゃお二人さんそれまで宜しくな」
 サイモンは今度は自分に握手を求めてきた。
 しかし、彼が近づいた時、酷い悪臭が鼻を襲ってきた。
 エドは後退りして拒否した。
「なんだよ、失礼だな。お前だって臭う筈だぞ。俺達はなにせ風呂に暫く入っていないんだからな」
「一緒にしないで」
 直ぐにミアは否定した。



◇◆◇◆◇



 暫くだろうがここからは三人の旅になった。
 サイモンはその間、よく喋る男だった。
「ここの森の樹齢を知っているか? 1万年以上だぞ」
「どうしてそんなことが分かるんですか」
 エドがそう聞くと、彼は嬉しそうに答えた。
「放射性炭素年代測定法だよ。昔は誤差もあったもんだが、今ではかなり改善されてきたよ。まぁ、氷河期より前は流石にないだろうが。自然は変化するものだ。人間が手を加えなくても、それが全く同じままとは言えないだろう。恐竜が現れ、絶滅し、新たな生物が誕生し、そうやって変化するものなんだ。だから、この森が長いこと生きてきたことは凄いことなんだ」
「あなたの話しだと、まるで近くにラボがあったみたいだけど」
「ああ、あったよ。空からラボを運ぶんだ。簡易的な設備になってしまうが、それは仕方ないことだよ。いちいちサンプルを持ち帰ってまた潜ってを繰り返すよりかは遥かに効率的だ。しかし、ラボがあっても基本的に錬金術師の呪いがあるから、沢山の研究者を置いておくわけにはいかない。だから、ほとんどは機械がやる。研究者が遠隔で調べようとしたが、この森は電波を遮断してしまうから、人間が必ず潜る必要がある」
「機械人間は?」とエドはサイモンに聞いた。
 すると、ミアは機械人間という言葉を知らないのか「機械人間?」と聞いてきた。
「少年が言っているのは人工生命体のことだよ。サイボーグ。言い方は様々だが、比較的人間の頭脳に近いロボットが人間の代わりにリスク無しで何故やらないのかって言いたいんだろう。確かに、彼らにあらかじめ仕事内容を命令しておけば、電波に関係なく彼らは人間より長く仕事をしてくれるだろう。だが、機械人間はどうしてか分からないが、途中で破壊されたんだ。何者の仕業かは不明だ。仕方なく、人間を送り込むことになった。それが俺さ。だが、ラボも今は失った。この土地はどうかしてる。なんだ、あの巨大な鳥は。あいつのせいで、次のラボを移送するヘリすら近づけない。しかも、此方の武器は通用しない」
「当たり前でしょ」
 サイモンの言う巨大な鳥にエドは覚えがあった。雪山で見たあの鳥のことだろう。
「それじゃ、サイモンさんはなんでまだこの森に?」
「当てましょうか? 迷った」
「違う! 迷ってなんかいない。俺はプロだ」
「ここではあなたは素人よ」
 ミアはキッパリとそう言いきった。
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