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アカデミーはカロンの玄関とも呼ばれる港と大都市の中心にある城と、国で一番大きな教会、この3つの点を結ぶとトライアングルが地図上に出来上がる。アカデミーはそのトライアングルの中心に位置する神聖な場所で、歴史ある建物から沢山の有名画家を出してきた。
中庭を取り囲む列柱や、マンサード屋根が特徴的な建物には、沢山の画家を学びに来る様々な年齢層、国籍が集まるカロンの中でも大きなアカデミーとなる。
クレアがそこをすすめた理由もエマが国籍で気にする必要がないと判断したからだ。
アカデミーに入るのに国籍で差別してはならない。これは、アカデミー創設の際に創設者達によって決められたルールであり、職員はその創設者のルールを厳守するからだった。
国際的な場所であって欲しいと創設者が決めた意思に背くことは出来ない。
エマはクレアから貰った推薦状を持ってそのアカデミーに来ていた。
受付の所で待つよう言われ、エマは待っている間に近くの壁に飾られた絵画を見ていた。
大きさはそれ程でもないにしても、迫力のあるダイナミックな筆使いで描かれたその絵は、戦争で圧勝していくカロン兵士達の勇敢さを讃えるような絵だった。
横長の額縁の下には作者と卒業生記念作品とあった。
エマはこの絵を見て素直に好きになれなかった。それはエマがカロンの民でないからというのもあったが、単純に人が人を殺し合う戦争というものを美化したような絵で、それが好きになれなかった。
だが、命がけで戦場に出るカロンの兵士達にとってはこの絵は名誉なことなのだろう。
「いやいや、待たせて済まなかった」
顔に汗を流す小太りなおじさんが現れてきた。口髭を生やし、短足だ。その足には磨かれた靴に艶があった。
おじさんに案内され部屋に入ると、長椅子に座るよう言われ、その通りに従った。
この部屋にも絵画が飾られており、これも戦争の絵だった。
「さて、クレア様から推薦状を受けたというのは君らしいがどういった知り合いかね?」
「たまたま偶然に知り合ったのです。同じ船で。そこでお話をする機会がありました」
嘘ではない。が、おじさんは眉をピクリとさせた。
「貴族であるクレア様が一般人の君と話しをする機会があったのかね?」
「あの、クレア様から話しかけられまして」
「ああ、それでか。クレア様はお優しい方だから君にも分け隔てなく話しをかけられたのだろ」
一つの疑問が解決し、納得したのか頷きながら話した。
「それじゃ、君がこれまで描いた絵を見せてくれないか?」
「あの……私、まだ絵を描いたことがなくて」
「え? 絵を描いたことがない?」
「はい。正確にはキャンバスや絵の具を買うお金がなくて。絵は地面に描いたことがある程度で」
「ああ、なる程ね……」
おじさんは今度はエマの地味な服装を観察しだした。
「安心したまえ。アカデミーではキャンバスも絵の具もここのを使っていい。好きなだけ描けばいい。それが上達する一歩だ。しかし、絵がなければ私は君の絵を評価することが出来ない」
「評価?」
「絵を描くなら当然、誰かから評価されなければ。それこそ、画家としてやっていくならね。それとも彫刻の方だったかな?」
「いえ、画家を目指してます」
「宜しい。彫刻家もいるが、アカデミーでは画家を目指す子が多い。私も絵を描く」
「あれはあなたの作品ですか?」
エマはこの部屋に飾られてある絵を指差して言った。
「ああ、そうだよ。オベロンとの戦争だ。勿論、我が国の海軍が勝利した」
誇らしげにそう言った。
「あなたも戦争に行かれたのですか?」
「いや、私は戦争には行かなかった。恥ずかしい話し、この身体だからね。戦争に行かないのは恥さ。羽を貰うことになる。羽って言うのは、臆病者に送られることだよ」
「それじゃ、皆戦争に行くんですか?」
「全員じゃあない。病気や元からの怪我があったりすれば行けない者もいる。絵の話しをしよう。2ヶ月やるからとりあえず一つ作品を描いてきてくれ。足りなければ延長も認めよう」
2ヶ月と聞いて十分過ぎると思ったエマだったが、おじさんは付け加える。
「勿論、色も付けてくれよ。君は絵の具を使うのが初めてになる。いや、キャンバスに絵を描くこと事態初めてか。まぁいい。とにかく、筆の使い方は君と同じルームメイトに教わるといい。女子寮はこれから案内しよう。さっきも言った通り、キャンバスと絵の具は自由に使うといい」
エマはこの人に試されているのだと思った。
なんとしてもうまく完成させなきゃ。
中庭を取り囲む列柱や、マンサード屋根が特徴的な建物には、沢山の画家を学びに来る様々な年齢層、国籍が集まるカロンの中でも大きなアカデミーとなる。
クレアがそこをすすめた理由もエマが国籍で気にする必要がないと判断したからだ。
アカデミーに入るのに国籍で差別してはならない。これは、アカデミー創設の際に創設者達によって決められたルールであり、職員はその創設者のルールを厳守するからだった。
国際的な場所であって欲しいと創設者が決めた意思に背くことは出来ない。
エマはクレアから貰った推薦状を持ってそのアカデミーに来ていた。
受付の所で待つよう言われ、エマは待っている間に近くの壁に飾られた絵画を見ていた。
大きさはそれ程でもないにしても、迫力のあるダイナミックな筆使いで描かれたその絵は、戦争で圧勝していくカロン兵士達の勇敢さを讃えるような絵だった。
横長の額縁の下には作者と卒業生記念作品とあった。
エマはこの絵を見て素直に好きになれなかった。それはエマがカロンの民でないからというのもあったが、単純に人が人を殺し合う戦争というものを美化したような絵で、それが好きになれなかった。
だが、命がけで戦場に出るカロンの兵士達にとってはこの絵は名誉なことなのだろう。
「いやいや、待たせて済まなかった」
顔に汗を流す小太りなおじさんが現れてきた。口髭を生やし、短足だ。その足には磨かれた靴に艶があった。
おじさんに案内され部屋に入ると、長椅子に座るよう言われ、その通りに従った。
この部屋にも絵画が飾られており、これも戦争の絵だった。
「さて、クレア様から推薦状を受けたというのは君らしいがどういった知り合いかね?」
「たまたま偶然に知り合ったのです。同じ船で。そこでお話をする機会がありました」
嘘ではない。が、おじさんは眉をピクリとさせた。
「貴族であるクレア様が一般人の君と話しをする機会があったのかね?」
「あの、クレア様から話しかけられまして」
「ああ、それでか。クレア様はお優しい方だから君にも分け隔てなく話しをかけられたのだろ」
一つの疑問が解決し、納得したのか頷きながら話した。
「それじゃ、君がこれまで描いた絵を見せてくれないか?」
「あの……私、まだ絵を描いたことがなくて」
「え? 絵を描いたことがない?」
「はい。正確にはキャンバスや絵の具を買うお金がなくて。絵は地面に描いたことがある程度で」
「ああ、なる程ね……」
おじさんは今度はエマの地味な服装を観察しだした。
「安心したまえ。アカデミーではキャンバスも絵の具もここのを使っていい。好きなだけ描けばいい。それが上達する一歩だ。しかし、絵がなければ私は君の絵を評価することが出来ない」
「評価?」
「絵を描くなら当然、誰かから評価されなければ。それこそ、画家としてやっていくならね。それとも彫刻の方だったかな?」
「いえ、画家を目指してます」
「宜しい。彫刻家もいるが、アカデミーでは画家を目指す子が多い。私も絵を描く」
「あれはあなたの作品ですか?」
エマはこの部屋に飾られてある絵を指差して言った。
「ああ、そうだよ。オベロンとの戦争だ。勿論、我が国の海軍が勝利した」
誇らしげにそう言った。
「あなたも戦争に行かれたのですか?」
「いや、私は戦争には行かなかった。恥ずかしい話し、この身体だからね。戦争に行かないのは恥さ。羽を貰うことになる。羽って言うのは、臆病者に送られることだよ」
「それじゃ、皆戦争に行くんですか?」
「全員じゃあない。病気や元からの怪我があったりすれば行けない者もいる。絵の話しをしよう。2ヶ月やるからとりあえず一つ作品を描いてきてくれ。足りなければ延長も認めよう」
2ヶ月と聞いて十分過ぎると思ったエマだったが、おじさんは付け加える。
「勿論、色も付けてくれよ。君は絵の具を使うのが初めてになる。いや、キャンバスに絵を描くこと事態初めてか。まぁいい。とにかく、筆の使い方は君と同じルームメイトに教わるといい。女子寮はこれから案内しよう。さっきも言った通り、キャンバスと絵の具は自由に使うといい」
エマはこの人に試されているのだと思った。
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