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2ヶ月という期間を与えられてから、早くも1ヶ月が経過していた。
皆が言うようにエマはキャンバスを外に持ち出しあちこち周りながら各場所で絵を描いてきた。
どれも、街やそこに住む人達を描いたものだ。
最初は、動く人もじっとはしてくれないから、建物や公園を描いたりしたが、次第にやはり人もいれたくなり、人を描くようになった。
気づけば、部屋には自分の作品が集まるようになっていた。
だが、時折私が描いてきた絵を同じルームメイトのアンジェに見せると複雑そうな表情をした。
「作品の提出まであと1ヶ月なんだよね? 大丈夫なの? そろそろ、提出する用の作品を描き始めた方がいいんじゃない?」
最初は沢山描いて一番いいものを提出しようとエマは考えていた。その際に先輩であり一番詳しいアンジェに選んでもらおうかと思っていたが、アンジェのあの言い方だと、自分が描いてきたどの作品も彼女からしてみれば提出できるような作品ではないと言われているみたいだった。
「やっぱり、才能がないってこと?」
エマは単刀直入にそう聞いた。正直に言ってくれた方がこの際提出する時にショックを受けるよりマシだと思ったからだ。
「あのね、エマの絵は最初に比べれば上達してきているとは思うよ。でもね、風景ばかりでそれ以外に描かないのかなぁ? って気になったの。アカデミー主催の展示会が近々行われるんだけど、あ、因みにアカデミー主催の展示会は年に二回、前期と後期で行われるんだけど、アカデミー生はその展示会で評論家から高い評価を得る為に、それを目指して少しでも評論家から評価してもらおうと作品を描き始めるの。そうすることで、評価を得た作品は画家として名誉を受け、他の展示会にも呼ばれるようになり、徐々に名を広め晴れて画家として仕事も来るようになるの。勿論、アカデミーに入らずとも、展示会(アカデミー主催以外の展示会)で審査に合格さえすれば出展はできるけど、競争倍率は高いからまずはアカデミーで技術を磨くのがほとんどね。で、審査員や評論家が好みそうな絵がバリバリの古典なの」
「だから、アンジェは宗教画が多いんだね」
「まぁね」
「でも、それだと皆は描きたいものが描けないってこと?」
「そんなことはないわ。勿論、尖った画家もいたりするし、それが良いって言う人もいるわ。中には貴族とかから資金援助受けたりもするわね。でも、画家としての世界でそういった尖った画家が生き残っていくのは難しいと思う」
「つまり、違う絵を描いてみたらってことだよね?」
「ええ! ジャンルを広げてみたらどうかしら。せっかくアカデミーにいるなら、歴史画を描いている人は多いから刺激にはなると思うの」
「でもね、アンジェ。私はこの国の歴史はよくは知らないの。勉強をしてきたわけでもないから、字もよく分からないし。だから、私にはやっぱり字が必要のない仕事しか出来ないの」
「使用人なら字が分からなくてもできるんじゃない? 他の仕事だって……」と言ったところで、彼女は首を横に振った。
「そうよね……」
アンジェが途中で考えが変わったのは、言いながらもカロンの国の貴族の使用人で外国の人はいないと思ったからだ。
しかし、エマが自分の国に戻ったとしても、職が見つからない事情も彼女の口から知ったことだ。
むしろ出稼ぎにこの国に来たのは正解かもしれないが、やはり彼女の年齢からしても厳しいとは思う。
公園ではたまに靴磨きで稼ぐ少年達の姿が見れる。大抵、晴れて寒くない時期ならよく見れる光景だ。だが、その靴磨きにも彼らなりの縄張り意識が存在し、いきなりエマが靴磨きをしたら邪魔されたり追い出されたりするだろう。
「勉強する気があるなら、私が教えるわよ?」
「ありがとう。でもいい。やっぱり自分が描きたい絵を描きたいから」
すると、アンジェは真剣な顔をした。
「アカデミー主催の展示会は年に2回あるって言ったけど、アカデミー生は全員がその展示会に作品を出すことになっている。そして、2回連続で評価が悪かったアカデミー生は退会を命じられるの。一様、それは最初に言っとくわ。あとは自分で考えなさい。でも、同じルームメイトとしてあなたのことは最後まで応援するからね。協力できることはするよ」
「ありがとう」
アンジェは優しい人だった。こんな自分にこれ程親切にしてくれるなんて、アンジェが同じルームメイトで本当に良かったと思う。
アンジェには自分の描きたい絵を描きたいだなんて偉そうに言ったけれど、その描きたい絵がまだ見つかってはいなかった。
でも、歴史画が私の描きたい絵でないことは自分で分かっていた。
自分の国を滅茶苦茶にしたこの国の歴史を絵にしたいと気持ちがならなかった。
私から両親を奪った神様にも恨みがないわけじゃあない。
宗教画も描く気にならない私は他の絵でチャレンジしたかった。
アンジェに対しては本当に悪いことをしたと思っている。
私のことを思ってアドバイスしたのに、私はそれを従わなかった。普通なら、それで嫌われてもおかしくなかったのに、アンジェはいつも優しく、つきっきりで美術について色々と私に教えてくれた。
そして、提出期限の2ヶ月が経過した。
皆が言うようにエマはキャンバスを外に持ち出しあちこち周りながら各場所で絵を描いてきた。
どれも、街やそこに住む人達を描いたものだ。
最初は、動く人もじっとはしてくれないから、建物や公園を描いたりしたが、次第にやはり人もいれたくなり、人を描くようになった。
気づけば、部屋には自分の作品が集まるようになっていた。
だが、時折私が描いてきた絵を同じルームメイトのアンジェに見せると複雑そうな表情をした。
「作品の提出まであと1ヶ月なんだよね? 大丈夫なの? そろそろ、提出する用の作品を描き始めた方がいいんじゃない?」
最初は沢山描いて一番いいものを提出しようとエマは考えていた。その際に先輩であり一番詳しいアンジェに選んでもらおうかと思っていたが、アンジェのあの言い方だと、自分が描いてきたどの作品も彼女からしてみれば提出できるような作品ではないと言われているみたいだった。
「やっぱり、才能がないってこと?」
エマは単刀直入にそう聞いた。正直に言ってくれた方がこの際提出する時にショックを受けるよりマシだと思ったからだ。
「あのね、エマの絵は最初に比べれば上達してきているとは思うよ。でもね、風景ばかりでそれ以外に描かないのかなぁ? って気になったの。アカデミー主催の展示会が近々行われるんだけど、あ、因みにアカデミー主催の展示会は年に二回、前期と後期で行われるんだけど、アカデミー生はその展示会で評論家から高い評価を得る為に、それを目指して少しでも評論家から評価してもらおうと作品を描き始めるの。そうすることで、評価を得た作品は画家として名誉を受け、他の展示会にも呼ばれるようになり、徐々に名を広め晴れて画家として仕事も来るようになるの。勿論、アカデミーに入らずとも、展示会(アカデミー主催以外の展示会)で審査に合格さえすれば出展はできるけど、競争倍率は高いからまずはアカデミーで技術を磨くのがほとんどね。で、審査員や評論家が好みそうな絵がバリバリの古典なの」
「だから、アンジェは宗教画が多いんだね」
「まぁね」
「でも、それだと皆は描きたいものが描けないってこと?」
「そんなことはないわ。勿論、尖った画家もいたりするし、それが良いって言う人もいるわ。中には貴族とかから資金援助受けたりもするわね。でも、画家としての世界でそういった尖った画家が生き残っていくのは難しいと思う」
「つまり、違う絵を描いてみたらってことだよね?」
「ええ! ジャンルを広げてみたらどうかしら。せっかくアカデミーにいるなら、歴史画を描いている人は多いから刺激にはなると思うの」
「でもね、アンジェ。私はこの国の歴史はよくは知らないの。勉強をしてきたわけでもないから、字もよく分からないし。だから、私にはやっぱり字が必要のない仕事しか出来ないの」
「使用人なら字が分からなくてもできるんじゃない? 他の仕事だって……」と言ったところで、彼女は首を横に振った。
「そうよね……」
アンジェが途中で考えが変わったのは、言いながらもカロンの国の貴族の使用人で外国の人はいないと思ったからだ。
しかし、エマが自分の国に戻ったとしても、職が見つからない事情も彼女の口から知ったことだ。
むしろ出稼ぎにこの国に来たのは正解かもしれないが、やはり彼女の年齢からしても厳しいとは思う。
公園ではたまに靴磨きで稼ぐ少年達の姿が見れる。大抵、晴れて寒くない時期ならよく見れる光景だ。だが、その靴磨きにも彼らなりの縄張り意識が存在し、いきなりエマが靴磨きをしたら邪魔されたり追い出されたりするだろう。
「勉強する気があるなら、私が教えるわよ?」
「ありがとう。でもいい。やっぱり自分が描きたい絵を描きたいから」
すると、アンジェは真剣な顔をした。
「アカデミー主催の展示会は年に2回あるって言ったけど、アカデミー生は全員がその展示会に作品を出すことになっている。そして、2回連続で評価が悪かったアカデミー生は退会を命じられるの。一様、それは最初に言っとくわ。あとは自分で考えなさい。でも、同じルームメイトとしてあなたのことは最後まで応援するからね。協力できることはするよ」
「ありがとう」
アンジェは優しい人だった。こんな自分にこれ程親切にしてくれるなんて、アンジェが同じルームメイトで本当に良かったと思う。
アンジェには自分の描きたい絵を描きたいだなんて偉そうに言ったけれど、その描きたい絵がまだ見つかってはいなかった。
でも、歴史画が私の描きたい絵でないことは自分で分かっていた。
自分の国を滅茶苦茶にしたこの国の歴史を絵にしたいと気持ちがならなかった。
私から両親を奪った神様にも恨みがないわけじゃあない。
宗教画も描く気にならない私は他の絵でチャレンジしたかった。
アンジェに対しては本当に悪いことをしたと思っている。
私のことを思ってアドバイスしたのに、私はそれを従わなかった。普通なら、それで嫌われてもおかしくなかったのに、アンジェはいつも優しく、つきっきりで美術について色々と私に教えてくれた。
そして、提出期限の2ヶ月が経過した。
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