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三年前、今まで戦争で勝ち続け世界に進出してきたカロン国だったが、イオ国がカロンの課税に反対して戦争が起こるとスカジ国がイオ国に協力するきっかけでイオ国は勝利植民地から独立を果たし、その勢いでイオ国は更に力をつけていった。その間、カロンは国王が変わり、その時代から世界的に技術革命が起こり、戦争はより多くのを人より効率的に殺せるようになっていき、カロン国内では平和を求める声が高まっていた。
そして、現在。世界の中でリードしていたカロンに対して技術、産業においてもイオ国はカロンに追いつこうとしていた。世論は、このままいけばカロンはいずれ世界のナンバーワンの座を失うだろうと危惧した。
ここまで上り詰めた国が没落していくわけにはいかない。無論、没落とまではいかないだろうが、世界の歴史上一度世界のトップになった国が没落していった過去がある。その国はとある戦争に負け、更に政治も安定せず内戦が起きて、周りの国がそれぞれの勢力に加担、干渉し、結局周辺国の思惑通りに事が運び、内戦で弱った国を乗っ取ったというものだ。
戦争で勝ち続け成長していったという点では没落した国とカロンは似ている。
市民が新しい国王がこれからどのように舵取りをするのか不安に感じるのは、自分達の生活にもこれから影響してくる話しだったからだ。
それと、市民が戦争に反対するようになった理由はもう一つある。前回の戦争で前国王が戦費調達の為に課税したことだ。
前回の戦争ではイオの独立を認めないという理由だけでなく、途中イオ国に加担したスカジ国はカロンと元々領土問題で険悪状態にあった。スカジ国がイオ国に加担したスカジの魂胆は見え見えであり、だからこそスカジが途中参戦し戦争が長引いても、市民は戦争にそこまで反対は起こらなかった。
だが今はイオ国が独立を果たしてから、カロン国内では課税に対し反対の訴えが広がるようになる。市民が集会をしたり、貴族達の間でも評議会で戦争による徴収が認められない雰囲気になっていた。
◇◆◇◆◇
そんなイオ国に加担したスカジ国で広大な土地とその中心にある豪邸と、自慢できる手入れされた庭を持つ貴族ローズ家。
高級家具と絵画が各部屋と廊下にも飾られており、暖炉のある部屋には赤い高価な絨毯が敷いてある。しかし、そんな絨毯には割れて散ったワイングラスの破片と、赤ワインが染み込みより深い赤色に染まった箇所がある。
ワイングラスが割れた音に気づいた執事が部屋に入ると、怒りで震えているエドワード伯爵が立っていた。
執事は伯爵がワイングラスを投げつけたのだと状況を察した。恐らくその原因は新聞記事を読んだことにあるだろう。新聞を伯爵に届ける前にはアイロンがけをするのが使用人の仕事の日課だ。当然、その日の新聞をこの家では最初に見ることになるのが使用人だ。
新聞には『財政難確実』と題された記事で、スカジがイオ国独立の為に参戦したことが、財政難の決定的になった要因だと指摘した上で、課税を政府は検討を始めたとあった。
既に色んな国が産業という分野で工業化を成功させているのに対して、スカジは他国から遅れをとっていた。
課税は一般市民だけに今回は留まらない。スカジの経済面は好調とはいかず、むしろ景気が悪いと言えた。
更に、助けたイオ国が経済成長、特に産業の工業化が進んでおり、イオ国とスカジが貿易をしても、イオ国の安い品がスカジに流れ込んでくるだけだった。
伯爵は参戦に反対していたこともあり、この財政難という決定的な結果に、政府に対する不信感はより強まったのは言うまでもないだろう。
執事は「片付けます」と言って、他の使用人を呼びにいった。
あの赤いシミは恐らく残るだろう、執事はそう思った。
◇◆◇◆◇
世界の歴史が大きく変わる時、芸術もまた変化が訪れていた。
未だヒエラルキーが存在し、歴史画を最上位にもっていかれ多くの画家は依然と歴史画を描く画家は多いものの、市民でも絵画を家に飾るように時代が変化しつつあり、ただ歴史画はやはり高価な為に風景画が市民の間では買われるようになった。
徐々に上達していったマーサの風景画はその市民達の間では徐々に知られるようになっていた。
それはマーサの作品を知った他の風景画家にも知れ渡り、次第に交流をするようになり、逆にマーサはその画家達の会話や作品から刺激を受け、更に風景画の奥深さを知るようになっていた。
この世界は相変わらず複雑で安定しないが、それは前世の歴史を振り返っても似たようなものだと思った。むしろ、怖いぐらいに似ている。
ここまで似ていると、その後に起きそうな未来のことも当てられるのではないのか?
まるで自分が未来を言い当てられる占い師の気分になるが、むしろ俺が知る未来が当たって欲しいとは思わない。むしろ、その未来が怖くて口にしたくなかった。まるでそれが言霊になって本当に実現させてしまったらと思うと、黙っていることにこしたことはなかった。例え、誰かに喋ったところで未来が変えられるとは思えなかった。
もし、決められた未来ならば、どうすることも出来ないからだ。
まるでデジャブを体験しているみたいだが、この世界はまるっきり歴史が前世と同じというわけでもなさそうだ。特に日本という国がなかったり、そもそも知らない国や文化、宗教もあったりする。それでも、やはり……未来を想像してしまう。
次に起こる戦争を。
そして、現在。世界の中でリードしていたカロンに対して技術、産業においてもイオ国はカロンに追いつこうとしていた。世論は、このままいけばカロンはいずれ世界のナンバーワンの座を失うだろうと危惧した。
ここまで上り詰めた国が没落していくわけにはいかない。無論、没落とまではいかないだろうが、世界の歴史上一度世界のトップになった国が没落していった過去がある。その国はとある戦争に負け、更に政治も安定せず内戦が起きて、周りの国がそれぞれの勢力に加担、干渉し、結局周辺国の思惑通りに事が運び、内戦で弱った国を乗っ取ったというものだ。
戦争で勝ち続け成長していったという点では没落した国とカロンは似ている。
市民が新しい国王がこれからどのように舵取りをするのか不安に感じるのは、自分達の生活にもこれから影響してくる話しだったからだ。
それと、市民が戦争に反対するようになった理由はもう一つある。前回の戦争で前国王が戦費調達の為に課税したことだ。
前回の戦争ではイオの独立を認めないという理由だけでなく、途中イオ国に加担したスカジ国はカロンと元々領土問題で険悪状態にあった。スカジ国がイオ国に加担したスカジの魂胆は見え見えであり、だからこそスカジが途中参戦し戦争が長引いても、市民は戦争にそこまで反対は起こらなかった。
だが今はイオ国が独立を果たしてから、カロン国内では課税に対し反対の訴えが広がるようになる。市民が集会をしたり、貴族達の間でも評議会で戦争による徴収が認められない雰囲気になっていた。
◇◆◇◆◇
そんなイオ国に加担したスカジ国で広大な土地とその中心にある豪邸と、自慢できる手入れされた庭を持つ貴族ローズ家。
高級家具と絵画が各部屋と廊下にも飾られており、暖炉のある部屋には赤い高価な絨毯が敷いてある。しかし、そんな絨毯には割れて散ったワイングラスの破片と、赤ワインが染み込みより深い赤色に染まった箇所がある。
ワイングラスが割れた音に気づいた執事が部屋に入ると、怒りで震えているエドワード伯爵が立っていた。
執事は伯爵がワイングラスを投げつけたのだと状況を察した。恐らくその原因は新聞記事を読んだことにあるだろう。新聞を伯爵に届ける前にはアイロンがけをするのが使用人の仕事の日課だ。当然、その日の新聞をこの家では最初に見ることになるのが使用人だ。
新聞には『財政難確実』と題された記事で、スカジがイオ国独立の為に参戦したことが、財政難の決定的になった要因だと指摘した上で、課税を政府は検討を始めたとあった。
既に色んな国が産業という分野で工業化を成功させているのに対して、スカジは他国から遅れをとっていた。
課税は一般市民だけに今回は留まらない。スカジの経済面は好調とはいかず、むしろ景気が悪いと言えた。
更に、助けたイオ国が経済成長、特に産業の工業化が進んでおり、イオ国とスカジが貿易をしても、イオ国の安い品がスカジに流れ込んでくるだけだった。
伯爵は参戦に反対していたこともあり、この財政難という決定的な結果に、政府に対する不信感はより強まったのは言うまでもないだろう。
執事は「片付けます」と言って、他の使用人を呼びにいった。
あの赤いシミは恐らく残るだろう、執事はそう思った。
◇◆◇◆◇
世界の歴史が大きく変わる時、芸術もまた変化が訪れていた。
未だヒエラルキーが存在し、歴史画を最上位にもっていかれ多くの画家は依然と歴史画を描く画家は多いものの、市民でも絵画を家に飾るように時代が変化しつつあり、ただ歴史画はやはり高価な為に風景画が市民の間では買われるようになった。
徐々に上達していったマーサの風景画はその市民達の間では徐々に知られるようになっていた。
それはマーサの作品を知った他の風景画家にも知れ渡り、次第に交流をするようになり、逆にマーサはその画家達の会話や作品から刺激を受け、更に風景画の奥深さを知るようになっていた。
この世界は相変わらず複雑で安定しないが、それは前世の歴史を振り返っても似たようなものだと思った。むしろ、怖いぐらいに似ている。
ここまで似ていると、その後に起きそうな未来のことも当てられるのではないのか?
まるで自分が未来を言い当てられる占い師の気分になるが、むしろ俺が知る未来が当たって欲しいとは思わない。むしろ、その未来が怖くて口にしたくなかった。まるでそれが言霊になって本当に実現させてしまったらと思うと、黙っていることにこしたことはなかった。例え、誰かに喋ったところで未来が変えられるとは思えなかった。
もし、決められた未来ならば、どうすることも出来ないからだ。
まるでデジャブを体験しているみたいだが、この世界はまるっきり歴史が前世と同じというわけでもなさそうだ。特に日本という国がなかったり、そもそも知らない国や文化、宗教もあったりする。それでも、やはり……未来を想像してしまう。
次に起こる戦争を。
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