芸術で稼ぐ異世界

アズ

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 ウォルター社に急いで戻ると、待合椅子に自分目当てに待っている3人いた。そこにウォルターが奥からやってきた。
「どこへ行ってたんだ? ああ、答えなくていい。応接間を使え」
 俺はそこで最初の一人目と話すことになった。
 一人目は蝶ネクタイに口髭が特徴な男性だった。お互い簡単な挨拶と自己紹介が始まると、ウォルターはわざわざ紅茶を用意してくれた。
 わざわざ社長が気を遣ったことに男性は驚いていたが、ウォルターは苦笑しながら「いつものことなんです」と言って説明する。
「うちの女性社員はお客様に飲み物を提供するのを嫌がるんです。私はウェイターじゃありませんとか言うんですよ。全く困ってるんです」
「それでわざわざ社長がやってるんですか?」
「そうなんですよ。何故か社長の私よりここは女性社員の方が強いんです」
 俺は思わず笑ってしまった。だが、こういう会社程社員は伸びそうだが、この世界ではこの会社の雰囲気には戸惑うんだろう。
 自分は男の方を見た。ほとんどの男性はスーツか貧しい人は地味な服装がほとんどで、長袖長ズボンがほとんどだ。不思議なことに夏でも長ズボンが当たり前のようで、カロンの国の男性は露出が少ない。派手さでいったらむしろ女性の方だろう。
 自分はウォルター社長が用意してくれた紅茶を飲んだ。
 この国ではたまに珈琲を飲むこともあるぐらいでほとんどは紅茶文化だ。
 向かいの男性は砂糖を入れている。
 因みにカロン産の珈琲は後味に酸味がやや強いのが特徴だ。ブラックで飲み比べすれば、それぞれの産地の味の違いがハッキリすると思う。
 カロンの人達が紅茶を愛するのは珈琲の苦味と酸味が苦手だからかもしれない。まぁ、それならミルクと砂糖を大量に入れればいい話しなんだろうが。
「では、ごゆっくり」とウォルターはそう言って去っていった。
 二人だけになると、ようやく本題に入った。
 男は自己紹介の時にリースと名乗っていた。そのリースはとりあえず紅茶を一口飲んでカップを置くと喋りだした。
「実は私がマネージャーとして担当している音楽グループのリーダーがですね、あなたの絵に興味を持ったようでして、次のライブの宣伝ポスターを写真ではなくあなたが描くイラストがいいと私に言ってきまして、それでマーサさんにお願い出来ないかと思いまして」
「ご依頼ですね。ありがとうございます。では、イラストはグループのメンバーということでしょうか?」
「いえ……それがそうではないんですよ。勿論、グループのタイトルは入れてもらいます。ただ、場所や時間といった重要な情報はできるだけ小さくし、描いていただきたいのはメンバーではなく、ちょっと説明が難しいので実際に写真を持ってきたのでまずそれを見ていただけますか?」
 そう言って鞄から写真を一枚取り出しそれを見せた。
 それは自分が描いた作品を撮影した写真だった。
 その絵は転生前にいた日本の風景を描いたものの一つで、紅葉とライトアップされたお寺が描かれたものだった。
「この絵は……」
 この絵はエマに自分の国がどんな場所なのか絵に描いて教えてよとねだられて描き始めた日本風景の一つだった。それをエマが勝手に個展に出したのだ。
 驚いたことに京都の風景や色んなお城の絵を描いた作品は見たことのない絵だと個展が開かれている最中は注目された。まぁ、日本がない世界では見たことないのは当然だけど。
「えーと……それはつまり?」
「こういう感じのある絵をバックにタイトルを付けて欲しいと」
 俺は思わず笑いそうになり、必死にそれをこらえた。
 京都の雰囲気が気に入ったのは良かった話しだが、それをバックにタイトル入れたら主旨が違ってしまうんじゃないのか? まるで京都でライブやりますみたいな感じのポスターになってしまうぞ。このマネージャー、それで本当にいいのか?
 俺は咳払いをした。
「つまり、似たような景色をバックにタイトルを入れたいわけですね」
「ええ、そうです。ただ、事務所としては本人は嫌だと言ってますが、やはりメンバーの顔は最低でも入れたいんです。これでは音楽のポスターに一見したら見えないのではないかと」
「そうですね」
 俺は少し考えてから答えを導き出した。
「それではこんなのはどうでしょうか」



◇◆◇◆◇



 音楽事務所とバンドの双方の願いを俺は見事に作品にした。
 それを見た事務所もバンドの方達も気に入ってくれ、更にマネージャーのリースからは「あなたにお願いして本当に良かった。無理なお願いを聞いていただきありがとうございました」と謝礼も多めにいただいた。
 因みに俺が双方の願いを叶える為にやったのは和風の建物の中にステージがあり、その上で演奏するメンバーの絵を描いたというものだった。
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