芸術で稼ぐ異世界

アズ

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 二人目のお客さんは女性だった。年齢的に20代はいっている筈だが、格好がセーラー服だった。ウォルターが私の絵を参考にして制作したものを一般販売したものだ。
 これもまたエマのわがままに関係するのだが、自分の国の学校とか生活を描いた絵に学生を描いたら、ウォルターが勝手にそれを参考にしてしまったのだ。
 この国ではその服がカワイイと評判だとウォルターが嬉しそうに自分に言ってきたのだが、それをまさか目の当たりにすることになるとは…… 。
 なんだか俺のせいで日本ブームが勝手に巻き起こっているような気がする。
 相手の格好に戸惑いながらも俺は服装には触れずに挨拶した。
 しかし、相手の方からあえて此方が触れなかったのに、どうですか? アピールをしてきた。
「ああ……これは僕が描いた絵を参考にウォルター社が制作したものですよね」
「ハイ! 私、これが凄く気に入ってます。マーサさんは本当に世界のファッションを先取りする方です!」
「ああ……ありがとうございます」
 褒められているのに素直に喜べない。
「あ、申し遅れました。私はレベッカです」
「あ、マーサです。今日はわざわざ足を運んでいただきありがとうございます」
「あの……」
「はい」
「先にサインいただいてもよろしいですか?」
「サインですか?」
 メモ帳を取り出したレベッカはペンもご丁寧に一緒に渡してきた。
「分かりました」
 断る理由もないし、メモ帳にサインをした。
「これでよろしいですか?」
 そう言ってレベッカに渡した。
「ありがとうございます」
 そう言って大切そうにそれを受け取った。
 改めて見ると、金髪にあの格好なもんだから外国の方が日本のコスプレをしているみたいだ。
「あの、もう一つお願いしてもよろしいですか?」
「なんでしょう?」
「あまり大きな声では言いにくいので」
 コソコソ話しをしたいということだろう。直ぐに察した俺は身を前に出して耳を貸した。
 耳のそばで小さく彼女は「あの……BLをまた描いていただけないでしょうか」と言った。
 俺は目が点になった。
 彼女は恥ずかしさで顔を赤くしている。
 確かに色んな漫画を昔は描いたが今は描いていない筈。まさか、その時から知っているのか?
 しかし、よりにもよってあのジャンルときたか。あれは固定客の女性から突然依頼され作ってみたものだ。あの時はお金欲しさに依頼があればなんでも作っていたが、それでも数は僅かで少ない。まさか、それを知っていたなんて。
「あの、すみませんがもう漫画はやっていないんです」
「それはなんとなく知っていました。でも、そこをなんとかなりませんか!」
 頭を下げてレベッカはお願いしてきた。
 昔の俺ならやっていたかもしれないが、もう昔みたいにお金に困っているわけではない。
 ウォルターという大きなスポンサーがついた俺にとってはその依頼は断っても、とそこにウォルターが近づいてきた。そして、俺に耳打ちする。
「まさか、断ったりするんじゃないだろうな?」
「どうしてですか?」
「図星だったか。ハァ……なぁ、頼むよ。受けてはくれないか。相手はご令嬢なんだ。俺が説得するかわりにうちが海外進出する手助けの為にお父様に掛け合ってくださると仰っているんだ」
 ウォルターには恩がある。そのウォルターからのお願いとなると此方も断りにくい。
「分かりました、作りましょう」
「ありがとうございます」
 相手の女性は嬉しそうに言った。



◇◆◇◆◇



 後日。
 俺はウォルター社に来ると、ウォルター社長から「漫画は作り始めたか?」とニヤニヤしながら新聞を開いたまま顔を此方に向けて言ってきた。
「ええ、まぁ……」
 俺はそう言いながらウォルター社長が読んでいる新聞記事の見出しに目がいった。
 文字が読めるようになってから情報収集もだいぶ楽になった。
 記事のタイトルには『領土問題解決か!? スカジ国との関係改善に期待』とあった。
「あの、これって」
 俺は新聞記事を指差しながら言った。
「ああ、スカジ国と領土問題で対立していたんだが、スカジ国は今戦争できる状況になくてな、領土問題で此方の主張が通ったんだよ」
 俺はいつの間に!? と思った。
「ビストラ国とエンケラドゥスの保障関係はどうなってます?」
「お! よく分かってるじゃないか。保障関係の更新はどうやら行われないらしい」
(待て待て……そうなるとこの後はどうなるんだっけ? いや、だが待てよ。日本がないんだからえーと……どうなるんだ?)
「まさか、戦争とかにならないですよね?」
 俺は恐る恐るウォルターさんに聞いてみた。
「神のみぞ知るってところだな」
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