おかしな学校

アズ

文字の大きさ
9 / 18

09

しおりを挟む
 落合が次に話す相手は鈴木先生だ。鈴木は、被害者のデスクの隣になり、被害者が席を立って離れたのを一番気づける人物だからだ。
 同じ教室を借りて早速話を聞いた。
 鈴木は黒縁のメガネをしており、長髪の女性教師だ。口の横にホクロがあるのが特徴的な音楽を担当する先生は落合の質問に「確かに小林先生は席を立ち上がり職員室を出ていかれました」と答えた。
「その時何か言われましたか?」
「いえ、そのようなことはありませんでした。ですので、トイレかと思いましたし、その時はあまり気にしませんでした」
「でも、戻っては来なかったのですよね?」
「はい。ですが、自分の仕事がありましたし、まさか事件になるなんて思わないじゃないですか。別に用があったわけでもないですし、結局先生が戻ってくるのを見ずに私は家に帰りました」
「その時間帯は?」
「19時は過ぎてたと思います」
「詳しくは分かりませんか?」
「だいたいじゃ駄目ですか?」
「いえ、結構です。因みに、小林先生は誰かと連絡をとっていたとかはありませんか?」
「いいえ、してませんしそもそも私用ならマナー違反でしょう。もしかしたら、長く退席していたのは、職員室を出て外で電話をしていたかもしれません」
「外に先生はいたんですか?」
「いえ、いませんでした。すいません、やっぱり分かりません」
「因みに、小林先生の働きはどうでしたか?」
「働き? 先生としてどうだったかということですか?」
「そうです」
「苦労していると思いました」
「そうなんですか?」
「実際学校行事とかで社会科見学に行くときに小林先生の注意を全く気にしない児童がいました。むしろ、先生をからかうみたいで。先生もそういった子どもにどう注意したらいいのか分からず悩んでいたと思います。私もあのような児童がクラスにいたら同じように悩んでいたと思います。今の時代、小学生でも簡単にネットに触れられるんです。私達の知らないところで、教師の悪口や、ありもしない事実を捏造して広めたりと、本当に嫌な時代になりました。正直、そんな子どもと接するのが怖くなりました。ベテランの教師も、この時代の変化に苦労しています。すいません、関係なかったですよね」
「いえ。先生方も大変なお仕事だというのが分かりました」
「時代の変化で良くなった部分も確かにあるんでしょう。学校の体罰とか、今ではおかしな校則についてメディアが取り上げ、それによって変わった学校もあります。そうした変化はいいんでしょうが、一方で子ども達ばかり守られ、そんな子ども達を叱れる大人が減ってきたと思います」
「先生は何故共通する悩みを持つ小林先生に手を差し伸べなかったんですか」
「そこは私の至らない点です。ごめんなさい」
「なにに謝ったのですか?」
「分かりません」
「先生、世の中に完璧な大人はいないでしょう。私も失敗はあります。しかし、子どもを指導する先生がそれでどうするんですか」
「仰る通りだと思います……」
「すいません、余計なことを言いました」
「いえ、いいです。ご指摘はその通りだと思います。真摯に受け止めたいと思います」
「話を戻しても宜しいですか?」
「はい」
「先生はもう聞かれたかと思いますが検死の結果自殺という線はなくなりました。そして、酷なことを申し上げると、我々は教職員の中に犯人がいるとみています。しかし、あなたは女性ですし犯行は無理でしょう。そこであなたに聞きます。職員間で小林先生とトラブルになった先生はいませんでしたか?」
「それはいなかったと思います。むしろ、小林先生は職員室の中では孤立していた方なので、関わっているのが珍しいくらいかと。逆にいたら目立つと思います」
「そうですか。分かりました。ご協力感謝します」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...