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落合が次に話す相手は鈴木先生だ。鈴木は、被害者のデスクの隣になり、被害者が席を立って離れたのを一番気づける人物だからだ。
同じ教室を借りて早速話を聞いた。
鈴木は黒縁のメガネをしており、長髪の女性教師だ。口の横にホクロがあるのが特徴的な音楽を担当する先生は落合の質問に「確かに小林先生は席を立ち上がり職員室を出ていかれました」と答えた。
「その時何か言われましたか?」
「いえ、そのようなことはありませんでした。ですので、トイレかと思いましたし、その時はあまり気にしませんでした」
「でも、戻っては来なかったのですよね?」
「はい。ですが、自分の仕事がありましたし、まさか事件になるなんて思わないじゃないですか。別に用があったわけでもないですし、結局先生が戻ってくるのを見ずに私は家に帰りました」
「その時間帯は?」
「19時は過ぎてたと思います」
「詳しくは分かりませんか?」
「だいたいじゃ駄目ですか?」
「いえ、結構です。因みに、小林先生は誰かと連絡をとっていたとかはありませんか?」
「いいえ、してませんしそもそも私用ならマナー違反でしょう。もしかしたら、長く退席していたのは、職員室を出て外で電話をしていたかもしれません」
「外に先生はいたんですか?」
「いえ、いませんでした。すいません、やっぱり分かりません」
「因みに、小林先生の働きはどうでしたか?」
「働き? 先生としてどうだったかということですか?」
「そうです」
「苦労していると思いました」
「そうなんですか?」
「実際学校行事とかで社会科見学に行くときに小林先生の注意を全く気にしない児童がいました。むしろ、先生をからかうみたいで。先生もそういった子どもにどう注意したらいいのか分からず悩んでいたと思います。私もあのような児童がクラスにいたら同じように悩んでいたと思います。今の時代、小学生でも簡単にネットに触れられるんです。私達の知らないところで、教師の悪口や、ありもしない事実を捏造して広めたりと、本当に嫌な時代になりました。正直、そんな子どもと接するのが怖くなりました。ベテランの教師も、この時代の変化に苦労しています。すいません、関係なかったですよね」
「いえ。先生方も大変なお仕事だというのが分かりました」
「時代の変化で良くなった部分も確かにあるんでしょう。学校の体罰とか、今ではおかしな校則についてメディアが取り上げ、それによって変わった学校もあります。そうした変化はいいんでしょうが、一方で子ども達ばかり守られ、そんな子ども達を叱れる大人が減ってきたと思います」
「先生は何故共通する悩みを持つ小林先生に手を差し伸べなかったんですか」
「そこは私の至らない点です。ごめんなさい」
「なにに謝ったのですか?」
「分かりません」
「先生、世の中に完璧な大人はいないでしょう。私も失敗はあります。しかし、子どもを指導する先生がそれでどうするんですか」
「仰る通りだと思います……」
「すいません、余計なことを言いました」
「いえ、いいです。ご指摘はその通りだと思います。真摯に受け止めたいと思います」
「話を戻しても宜しいですか?」
「はい」
「先生はもう聞かれたかと思いますが検死の結果自殺という線はなくなりました。そして、酷なことを申し上げると、我々は教職員の中に犯人がいるとみています。しかし、あなたは女性ですし犯行は無理でしょう。そこであなたに聞きます。職員間で小林先生とトラブルになった先生はいませんでしたか?」
「それはいなかったと思います。むしろ、小林先生は職員室の中では孤立していた方なので、関わっているのが珍しいくらいかと。逆にいたら目立つと思います」
「そうですか。分かりました。ご協力感謝します」
同じ教室を借りて早速話を聞いた。
鈴木は黒縁のメガネをしており、長髪の女性教師だ。口の横にホクロがあるのが特徴的な音楽を担当する先生は落合の質問に「確かに小林先生は席を立ち上がり職員室を出ていかれました」と答えた。
「その時何か言われましたか?」
「いえ、そのようなことはありませんでした。ですので、トイレかと思いましたし、その時はあまり気にしませんでした」
「でも、戻っては来なかったのですよね?」
「はい。ですが、自分の仕事がありましたし、まさか事件になるなんて思わないじゃないですか。別に用があったわけでもないですし、結局先生が戻ってくるのを見ずに私は家に帰りました」
「その時間帯は?」
「19時は過ぎてたと思います」
「詳しくは分かりませんか?」
「だいたいじゃ駄目ですか?」
「いえ、結構です。因みに、小林先生は誰かと連絡をとっていたとかはありませんか?」
「いいえ、してませんしそもそも私用ならマナー違反でしょう。もしかしたら、長く退席していたのは、職員室を出て外で電話をしていたかもしれません」
「外に先生はいたんですか?」
「いえ、いませんでした。すいません、やっぱり分かりません」
「因みに、小林先生の働きはどうでしたか?」
「働き? 先生としてどうだったかということですか?」
「そうです」
「苦労していると思いました」
「そうなんですか?」
「実際学校行事とかで社会科見学に行くときに小林先生の注意を全く気にしない児童がいました。むしろ、先生をからかうみたいで。先生もそういった子どもにどう注意したらいいのか分からず悩んでいたと思います。私もあのような児童がクラスにいたら同じように悩んでいたと思います。今の時代、小学生でも簡単にネットに触れられるんです。私達の知らないところで、教師の悪口や、ありもしない事実を捏造して広めたりと、本当に嫌な時代になりました。正直、そんな子どもと接するのが怖くなりました。ベテランの教師も、この時代の変化に苦労しています。すいません、関係なかったですよね」
「いえ。先生方も大変なお仕事だというのが分かりました」
「時代の変化で良くなった部分も確かにあるんでしょう。学校の体罰とか、今ではおかしな校則についてメディアが取り上げ、それによって変わった学校もあります。そうした変化はいいんでしょうが、一方で子ども達ばかり守られ、そんな子ども達を叱れる大人が減ってきたと思います」
「先生は何故共通する悩みを持つ小林先生に手を差し伸べなかったんですか」
「そこは私の至らない点です。ごめんなさい」
「なにに謝ったのですか?」
「分かりません」
「先生、世の中に完璧な大人はいないでしょう。私も失敗はあります。しかし、子どもを指導する先生がそれでどうするんですか」
「仰る通りだと思います……」
「すいません、余計なことを言いました」
「いえ、いいです。ご指摘はその通りだと思います。真摯に受け止めたいと思います」
「話を戻しても宜しいですか?」
「はい」
「先生はもう聞かれたかと思いますが検死の結果自殺という線はなくなりました。そして、酷なことを申し上げると、我々は教職員の中に犯人がいるとみています。しかし、あなたは女性ですし犯行は無理でしょう。そこであなたに聞きます。職員間で小林先生とトラブルになった先生はいませんでしたか?」
「それはいなかったと思います。むしろ、小林先生は職員室の中では孤立していた方なので、関わっているのが珍しいくらいかと。逆にいたら目立つと思います」
「そうですか。分かりました。ご協力感謝します」
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