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しおりを挟むキスしたい。ぎゅっとして欲しい。
「竜一さん…」
壁ドンの男女逆バージョン、竜一さんの顔の横に両手を付き、キスをする。唇を離し、おでこをくっ付けたまま、肩に手を置いた。
ぴったりと身体をくっ付けたいのに、お湯の抵抗と竜一さんの脚に阻まれる。
「竜一さん、ぎゅっとして欲しいです。」
「…ダメ」
「ヤダ、して」
「翠」
困った、という顔をされた。拒否され、ショックを受けた。じわっと涙で目が潤む。肩から腕、膝、太ももと竜一さんの輪郭をなぞる。もう!この脚閉じてよ、膝の上に乗っかってしまいたい。ゴロゴロ喉は鳴らせないけど、首に抱きついてぴったりと身体をくっ付けてぎゅっとしたい、してもらいたい。
「竜一さん、ぎゅっとしてくれないなら、この脚閉じて。」
「なんで?」
「乗る。で、私がぎゅっとする。」
「勘弁してくれよ、どんだけ俺に我慢させる気だよ?」
「なんでホテルで我慢するのよ。湯槽にまで一緒に入って来たくせに。」
「カラオケの代わりに愚痴り大会だったんじゃないのか?」
「そう、我慢大会したいわけじゃないの。」
言い返せず、うっと言葉に詰まった竜一さんの抵抗が弱まった隙に、脚を片側に寄せ閉じさせ膝を伸ばさせる。すかさず膝に跨がり乗る。タプンッタプンッザブンッとお湯が揺れる。
「…翠、なんかメッチャ手馴れてねえか? 今の。」
諦めて少し前に出て来てくれたから、胸を押し付け首に抱きつく。キスをすれば腰を引き寄せぎゅっとしてくれた。熱くて硬いものが当たる。ジンと疼くのがわかる。腰を揺らし、擦り寄る。反動で胸がふにふにと潰れ先端が擦れる。湯船のお湯がゆらゆら揺れる。
とろりと視線を絡ませ、またキスをする。
彼の手が腰から背中、肩、首と伝い、頬を挟んでキスを深める。私の体温が一気に上がるのがわかった。
「竜一さん? なんで我慢しちゃうんです? どこかのお嬢に病気もらったんですか?」
「もらってねえって!あんま煽るなって。乱暴にしたくないんだよ」
「我慢させたくない。どっちか一方だけが我慢してるのはダメ。そのうち不完全燃焼の不発弾は暴発するよ?」
「…ここにまでゴム持って来てねえんだよ。」
「知ってる……」
しばしの間視線を絡め合わせる。竜一さんが諦めたようにフッと吐息を漏らす。肩を引き寄せ口づけを交わす。
口づけを交わしながら擦り寄り、気持ちと体を確かめる。
「挿れて?」
「自分で挿れな。ほら」
「んっ」
腰を掴まれそっと先端の高さにまで腰を持ち上げられる。そっと手を添えて入り口に導く。言葉とは裏腹に2人とも体は正直で待ち焦がれてる、準備万端だ。
竜一さんが熱のこもった鋭い目で私を見ている。ドっと心拍数が上がり、突然恥ずかしいのと嬉しい期待でドキドキしてくる。ゆっくり大きく息を吸った後、そっと息を吐きながら彼に近づく。
「…ん……ふっ…ん、んんっ…」
「翠、挿れただけで気持ち良いのか?」
必死にコクコクうなずく。そのわずかな振動ですら気持ち良くなってしまう。じわじわと熱い彼がナカに入っていく。ゆっくりゆっくり腰を落とすと彼の大きさと形を確かめるように中が蠢く、ジンジンと体の芯が疼く。胸が高鳴る。
「ふぁ……あっ、あっ、あ…」
「俺も気持ち良い、翠…」
ぴったりと収まると、ぎゅーっと全身に力が入り、近いのがわかる。彼の首筋に顔を押し付ける。呼吸が荒くなる。ぎゅっと目をつぶり息を止め、探る。苦しくてまた息を吸って吐く、来そう……息を止め、探る…ああ、来る
「翠、愛してる」
ドンっと衝撃が突き抜け、ビクンと体が跳ねる。はぁはぁ激しく呼吸を荒げ、目を開く。思い切り力を込めて彼の背中に食い込んでいる自分の指を見る。幸い長年の習慣で爪は白いところがないくらい短いので、流血沙汰にはならない。
ビクンビクンッと勝手に跳ねていた体の反応は、いつの間にか快楽を貪る腰の動きに変わっている。湯槽のお湯が激しく波立ち、バシャッバシャッと音を立てて床にこぼれ落ちていく。
どうしちゃったの私の体、気持ち良い。気持ちよくて勝手に体が動いちゃう。竜一さんに顔見られてないから、できちゃうのかも。
竜一さんの手が私の背を支え、もう片手で頭を撫でる。
「ああ…あっ…あっ…んっ、…」
「……翠、良いよ、すげぇ気持ちイイ…翠、何回でもイケ」
やらしい自分の声が浴室に響き渡り、竜一さんの低く甘い声が耳元で囁かれる。
快楽を貪る腰を掴まれる。ぐいっと竜一さんの腰に押し付けられるのと同時に、下から突き上げられる。
「やあっ!…ああん!」
ズンッと衝撃が走り、彼の切っ先でチロチロと奥を撫でられる。電気が身体中を流れ甘く痺れる。入り口が彼の太い根元で擦られる。何も考えられなくなり、でも体は勝手に昇りつめていき、勝手に甘ったるい声を上げる。
「……あっあっあっ……ああああ!」
甘い悲鳴をあげながら、またあの強大な快楽の衝撃に襲われるのがわかった。目を瞑る、息を詰める。
膣から腰骨、髄を伝って脳へ、頭から指先1本1本までずぅんと重く甘い痺れが全身に広がり駆け巡る、暴れ回る。その瞬間は声さえ出せず、ただただ快楽に蹂躙される。
「…ぁ……」
またイッちゃった。数秒だか数十秒だか意識が途切れてる。ぼんやりとした頭で、さっきの瞬間を思い出し、まだ甘く痺れている全身の快楽の余韻を味わう。はぁはぁと呼吸が荒く、ガクガク体が痙攣している。竜一さんが背中を支え、もう片手は私の肩をあやすように、とんとんと優しく叩いている。
少し呼吸が落ち着くと、声をかけられる。
「翠、顔見せて」
そっと頭を起こしポーッとしたまま竜一さんの顔を覗き込む。まだ繋がってる、彼がナカで大きくなるのを感じた。またジーンっと気持ち良くなって、目が潤みトロンとしてしまう。
「すげぇ色っぽい顔」
「…ん……」
「できればイクときの顔見せて欲しいけど……」
「……イヤ。眉間にシワ寄せて必死の形相で不細工だから、見ないで。」
「すごく可愛かったよ? 前は見せてくれたのに。」
「もう二度と会うことのない人だと思ったから、不細工な顔見られても構わなかった……」
「そっか、見てるとダメなんだ? でも、今日は大胆で、良いね。」
眉間のシワの跡を指で撫でられる。そのまま後頭部を押さえられ、キスを交わす。
ああ、本当にこの人は私の恋人ではなかったはず、いや違う。この人にとって、私は5年前から恋人にしたいと思われていた。
私はそんなに価値のある女なのだろうか。
ただ、良いなと思った女が簡単に体を開いてくれ、さらに運のいいことにナマでヤらせてくれる。これほど都合のいい女って他にいるだろうか。きっと、そうそういないだろう。
こんなんだから、だから私の恋は長く続かないんだ。
鼻の奥がツンとし、さっきとは違う涙がシワっと滲んでくる。それでも体はこの人に恋してる。竜一さんを離したくなくて、ナカがぎゅうっと彼を締め付ける。
「翠、そんな顔、俺以外に見せるなよ?」
「竜一さん、私って、一度体を預けた人には執着してしまう性質みたいなんです。」
「へえ、それって俺にとっては願ったり叶ったりだけど?」
「でも、男の人って一度すれば、興味を失って去って行くものでしょ? 特別床上手な訳でもない私には引き止める術がない。」
「はあっ? なんでこんないい女に興味失くすんだよ。ひと月前、翠を抱いて、今日またこうして、ますます惚れてんのに。」
「本当? 嬉しい、ありがとう。でも今までそうだった。」
「マジかよ。さっきも言ったけど、俺は、もう翠のこと手放す気ないからな。そいつらと一緒にすんなよ。」
そんなこと言われても今までは、その時は本気でそう思ってくれていても、きっと1ヶ月後、3ヶ月後には気持ちが変化するだろう。そりゃ、熱もさめれば冷静さも取り戻し、そしてヤることヤッたし特別良い女、良いカラダって訳でもないから私に飽きる。でも私はその間に情が湧き、どんどん執着するようになる。男と逆の右肩上がりの線グラフを描く。そう冷めて考えていた。
でも、なぜだろう、今までのように『そのうち冷める』そう思えない、思いたくない。それは今まで始まりの時点で体の関係はなく冷静でいられたからなのか。竜一さんとは体の関係を持ってしまったから、既に冷静さを欠いて執着してしまっているのだろうか。またナカがきゅうっと彼を締め付ける。
「翠、動いていい? さっきから翠のナカに締められて、やばい」
「んっ…あっ……ああ!!」
返事を待たずに、逃げられないよう腰を押さえつけられ下から突き上げられる。奥まで当たって衝撃が強い。パシャンとお湯がはねる。一気に先程の状態へ近づけられる。
「すごっ…ぃ……竜一さん、これ、あんっ!スゴ…イ!」
「翠、これ以上煽るなよ。」
「だって…ああ!…奥…あ、あん!」
「捕まって」
言われた通り、息を切らせながら首に抱きつくように捕まると、抱きかかえられ湯槽の縁のちょうど座れるようになっている箇所に座った。これは、こういう使い方するために縁に椅子があるのかと納得した。腰を突き上げられる衝撃で乳房がむきゅむきゅと彼の胸に押し付けられる、脚が所在なくて彼の腰に巻きつけた。
「翠、だから……!」
背中に腕を回され、小刻みに揺すられる。彼の足元のお湯がバシャバシャと波立つ。私の声が浴室に響く。彼の呼吸が荒くなり私も釣られる。さっきみたいに彼の切っ先でチロチロと奥を舐めるように腰を揺すられる。もうイキそう、気持ち良い。溶けそう。体に力が入らなくなり、脚が解ける。そう思った瞬間、彼が腕を伸ばし、バサっと音がし私の体を抱きかかえ横たえさせた。
あっと気がついたら自分が浴室マットの上に仰向けに寝かさている。腰を掴まれズンと奥を突かれる。思わず腰が跳ね、背中が弓なりに反る。
「はぁうっ……んん……あっ…」
「良い反応、翠、可愛い。」
「んっ……んっ…ふぁ…あっ」
奥を激しく突かれ、チカチカと火花が散る。近い、また…さっきよりすごいの、来そう、来る……
彼にしがみつき、肩におでこを押し付け、息を詰め目を瞑る。彼が奥に切っ先を当て、奥を撫で回す。気持ち良い…
ああ、イキそう気持ち良い、違う、もうイッてる? 体が弛緩して、意識が朦朧として、彼にされるがままになっている。脚を担がれ、しがみついていた腕が顔の横に落ちてる。
「キモチ…イイ…」
勝手に口が言葉を漏らす。竜一さんが短く鋭く息を吸う。
パンッ!…
突然、奥に押し付けるように揺らされていたのが、勢いをつけて、彼の根元から先端まで全部を使って私のナカを愛撫する動きに変わる。思わず息を呑む。
惜しむ様にゆっくり彼が出て行く、行かないでと入り口は彼を締め付け扱く。先端が入り口から離れそうになる瞬間、勢い良く奥に突き立てられる。
パンッ!肌が打ち合わす音とともに火花が散る。
パンッ!…パンッ!…
私の体がぞわぞわと粟立つ。ダメ、良い、もうイッてるのに…
ナカが彼をギュッギュッと強く締め付けてる。彼がさらに激しく律動を早める。
パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
浴室に響く音が、荒々しい彼の呼吸が私の耳から快楽に溺れさす。全身の細胞一つ一つ髄まで響く、ずぅんと重く甘く痺れてる。もう……
「…ぅ…っ…ぁ…」
「翠…くっ……ッ!」
竜一さんがきつく私を抱きしめる。彼の押し殺した呻き声とともに、さらに強烈な快感に襲われた。
「翠…翠!…」
「…ぁ…」
「翠、気がついた?」
イッたまま、そこからさらに深くイッてしまった。また意識が無くなってた。
気持ち良いって、こういうのをいうんだ。気持ち良過ぎて眠い。このまま浸っていたい。話しかけたり、動かさないでいてほしい。
絶頂の余韻を味わっている私を竜一さんはそっとキスを落とした後、抱きしめたままでいてくれる。だから、どうしてこの人はいちいちわかってくれるんだろう。
次第に熱が引き、意識が覚醒する。
「私、今…」
「失神するほど良かった? 」
「竜一さん、すごいキモチイイ、すごく良かったありがとう。私こんなの初めて。竜一さん大好き!もっとして」
「翠!…もう1回言って」
強烈な絶頂感を経験し、興奮で思わず恥ずかしいことを口走った。『こんなの初めて』とか言っちゃうんだ。そうなんだ。予定調和、様式美じゃないのか、この台詞って。ああ、そういえばシーツを握るって、竜一さんに初めてイカされた時そうした。様式美じゃないのかあれも。
火照ったままの顔がさらに、カーッと赤くなるのがわかった。
「翠!言って。」
「…う…無理!言えない。頭働かずに思わず口走っただけ!」
「……翠、多分それじゃない。」
「え? ……」
「俺のこと、何?」
「あ……」
顔を近づけられ、キスをされる、と思って目を瞑って待ってても何も起きない。そっと目を開くと、楽しげで優しい目をした竜一さんの顔が変わらない距離にある。
「ん? 翠、答えて、俺のこと、何?」
「好き、竜一さん好きよ。好きじゃなきゃ2度目、今日こんな事してない。」
とろけそうな、満面の笑みを浮かべる。ブワッと毛穴が開くような、心が沸き立つような高揚感に襲われる。
顔が近づき、キスをされる。
何度も何度もキスをされる。
肩の下に腕を回され、抱きしめられる。
後頭部を手で支えられ、キスを深められる。
膝の間に割って入られ、彼が腰を近づける。
熱く硬いものが敏感なところに擦り付けられ、入り口をクチュクチュと音を立てるように愛撫される。
私の声が漏れる。
体がビクビクと反応して、硬直する。
息が止まり、全身力が入って、ぎゅっと目を瞑ったら、耳を舐められ囁かれ、フッと突き抜けて、あっけなくイク。
熱く大きなものがヌッとナカに入ってくる。
ぞわぞわと身体中の毛穴が立ち上がり、お腹の奥から痺れるほど熱い疼きが湧き上がり、彼を奥に引き込む、吸い付く、締め付ける。
涙がじわっと滲む。気持ち良い時にも涙って出るんだ、頭のどこかでそう思った。
「翠、もっとしよう」
彼が腰を揺らし始め、私は甘い吐息を漏らし始める。
その後、彼が二度放つまでに、私は何度イカされたかわからない。イキっぱなしだったのかもしれない、でも彼がナカに放つ瞬間は耐えきれずに意識を手放した。本当は大好きな人の全てをちゃんと受け止めたくて、その瞬間もちゃんと感じたいのに。気持ち良すぎて、奥に熱いのを吹き付けられると、イッた状態の限界を振り切ってオチる癖がついてしまったのかもしれない。
あんなにイクのに苦労してたのに、竜一さんには何度もあっけなくイカされる。竜一さんが上手いというのは多分にある、私もイキ方を覚えた、それだけ? 相性が良いってこういう事? 彼にイキ癖をつけられた? もはや、私はパブロフの犬?
髪を乾かしてもらいながら、ぼんやり思い出し考えていた。
カラオケの代わりに、彼に散々大きな声を上げさせられ、その夜は眠りについた。
夢を見た。窓に白いカーテンがかかっていて、私はそれを見ていた。カーテンを開けると、綺麗な芝の庭が広がり、白い小道が正面の立派な門へ伸びている。外に行ってみたくて部屋の出入り口を探すが見当たらない。がっかりしてもう一度窓の外を見ると、立派な門が開かれていた。早くおいで、と誘われているような気がした。その瞬間、なんだ、窓から出れば良いんじゃん、と思い、あ、これは夢だと夢の中で気がついた。
門の外へ出ると、竜一さんが『まさか、本気にしたの? すぐヤらせるような女、本気にするわけないだろ。誰とでもヤんだろ』と言い捨て、バーであの気持ち悪い笑みを浮かべた男になる。竜一さんがニコッと笑い、去っていく。「やだ、行かないで、違う」泣いて叫んで呼び止めても行ってしまう。怖い!
気持ち悪い男がニィタァ~と笑う。やだ!気持ち悪い、イヤ!怖い!怖い!
ハッとして目が覚めると、竜一さんが不安そうに私の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫? うなされてたよ?」
寝起き直ぐ過ぎて喉がカラカラで声が出ない。大丈夫、と首を振ろうかと思ったのに、例によって体はピクリとも動かない。頬に冷たいものが伝い、涙をこぼしたとわかる。
竜一さんがそっと私に覆い被さり、唇に、頬におでこに、瞼にキスを落とす。そっと頭を支え腕枕をしてくれる。
「…おはようございます」
「おはよう…」
ちょっとだけぎゅっとされる。それだけでほっとする。なぜだか、どうしようもなく、心が安らぐ。
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