8 / 12
青年とエルフとサムライ
しおりを挟む
三日後、フィーネ国の王であるダリオ・グラン・フィーネは一つの報告書を読んでいた。
「――――ふむ、不滅の森の調査書を読んだが……素晴らしいな、まさか原因を突き止めるだけでなく解決してしまうとは。それもただの歴史学者が!まるで童話の冒険譚の様では無いか?なあ大臣?」
玉座に胡坐をかきながら座るダリオに大臣と呼ばれた男は淡々と答える。
「はい、それに加え現在命じていた五人の調査員の内エクト・ラムザが最も早い解決を行っております」
「良い!余はそういう話は大好きだ!あの男に渡す報酬は色を付けておけよ!」
「それがダリオ王、同行していたイニィーツィオ警備隊長であるザラ・アパルによるとエクト・ラムザは既にフィーネ国を離脱、現在はティールス国に向かっているそうです」
「何ぃ!?余はまだ報酬渡してないぞ!?何故にティールスに?」
「何でも目的が出来てしまったと。それとザラ・アパルから受け取った報告書には報酬はイニィーツィオ大都市にいるドクターという男と、ザラ・アパルに渡して欲しいとあります」
「ドクター?この国に医者など何人いると……いや、大臣、そのドクターという男の場所はわかるか?」
「はい、こちらに」
一枚の地図を受け取ったダリオは、その場所を見ると口角を上がらせた。
「ふふ、ははは!!成程奴か!確かにドクターといえばあいつしか居るまい!よし大臣!さっさと報酬の準備をしておけ!」
・
・
・
同時刻、イニィーツィオ大都市に住む、ドクターの部屋ではザラが訪れていた。
「―――――へぇ、それでもう旅だったってのか……俺と違って行動派だな……」
「はい、しかし報酬も受け取らずに行くのはどうかと思うのですが……最初は私に全部渡そうとしてきたので、半分はドクターに投げちゃいました」
「俺は銀行員じゃねぇぞ?……だがまあ、それくらいなら請け負ってやるよ……あいつは今どこに向かってるんだ?」
「あの時受け取った槍に書かれていた製作者と思しき名前……一番可能性があるのがドワーフの国という事でティールスに向かっています」
「ティールスね……そういや最近ニュースで聞いた様な……あった、これだ」
ドクターは椅子に座りながら探し始めると、一枚の新聞を見つけた。
「えーと……ああそうだ、なんかあそこの大都市がファッションとかいうのが流行ってるみたいだな」
「ファッション……ですか?あそこの国は鍛冶の国と呼ばれるくらい産業国ですしそういったお洒落な単語とは縁が無い気が……」
「まあ……事件が起きてる訳でもなさそうだし……あいつにトラブルになる事はないだろうな」
ハハハと笑うドクターの横で茶を啜るザラだったが、ふと疑問が浮かんでいた。
「(そういえばあの国は今規制が厳しくなっていたような……大丈夫でしょうか)」
・
・
・
「エクト、あれは?」
「あれはフェーネキャット、この辺りの草原で見られる猫だね」
「あれは?」
「あれは……風来鳥だ、珍しい。世界中を飛び回る自由な鳥だよ」
エクトはティールス国に向かう最中、オリリアに聞かれたことに答えていた。
『すっかり保護者みたいになってるな』
『バータルア村の周辺だけでは得られる知識は限られる、知りたいものを教えてくれる者がいるのはありがたい事だ』
『お前魔術以外はからっきしだもんな』
『……儂とて多少学んではいるのだ、だがこういうのは向いている者の方が……』
『はっ、そういう事にしとくか……にしてもまさかオリリアもついて来るとはな、大丈夫なのか?』
『オリリア自身の意志でもある、それを拒む理由など無いし実力はお前もよくわかっているだろう?』
『それもそうだな……しかし若いエルフって何気に初めて見たかもな』
『エルフ自体そこまで外交を行わない上に、旅をするエルフも大抵は成人……100歳になってからだからな』
「エクト、あの大きいのは?」
「あれはマジックカメレオンだよ、近くにいる生物の魔力属性を真似て擬態しようとする今の属性診断の基礎になったトカゲ……野生は珍しいな」
「じゃああれは?」
「あれは行き倒れている人だね……行き倒れている人!!?」
エクトは道から外れた草原で倒れている人を発見すると慌てて駆け寄った。
オリリア達もついていくと、そこで倒れていたのは男だが、その格好が奇妙だった。
異国の服か、無地の青いシャツ?に灰色のスカートの様な服装をしていてエクトはつい手が止まるが慌てて思考を振り払うと体を揺する。
「大丈夫ですか!こんな所で倒れて……獣にでもやられたのか!?」
「う……」
「喋った」
「そ……そこに居るのは人か……?」
「大丈夫ですか?どこか怪我したとか……!?」
「め……」
「め?」
「飯……」
・
・
・
「いやあ!助かった!拙僧このままだともう死ぬかと思った!」
「あぁはい……助かって良かったですね……ええほんと……」
「ご飯ぜんぶたべられた……」
まさか異空間に仕舞っていた食料を全部喰われるとは思っておらず、死んだ顔になっているエクトだったが男は笑ったままずっとエクトの肩を叩いている。
「拙僧は桑名柄干!刀国の侍だ!此度は飯を貰って感謝する!」
「桑名……というか刀国の出身!?」
「とうこくって?」
「刀国は噂でしか聞かない国だよ、少なくともわかっているのは小さな島国で、名前の通り刀って言う武器を製造している事だけ」
「応!拙僧の持つこれが刀よ!あらゆる物を断ち切る優れた剣!」
桑名は鞘に入ったままの刀を見せ、オリリアは物珍しそうに見ていた。
「それで……クワナさん?どうしてまた刀国からこんな所で倒れてたんですか?」
「うむ、拙僧何より旅好きでな。自国は既に巡り終わったから今度は海の向こうへと舟を漕いだは良いものの、デカいイカは現れるわ海は荒れるわで散々でな!最後には雷に打たれ気づけばここで倒れていたという訳よ!」
「ちょ、ちょっと待ってください。色々聞きたいんですけどそれよりまず……この辺りに海なんてありませんよ?」
「む、そうなのか?……しかし言われてみれば周りに水は見えんな、ではここまで飛ばされてきたのかな?」
「いやいやいやいや、仮に此処から海へ向かったとして、直線でも馬車で三日はかかりますよ?」
「ん?ん~……まあ細かい事はいい!とにかく助けてもらったのだから礼をしなければな!」
『細かい事かこれ』
『自分の思考が追い付かなければ細かい事なのだろうな』
「とはいえ拙僧が持っているのはこの刀と脇差のみ、これを渡すわけにはいかん……という事でお前さんら、拙僧を護衛として雇わないか?」
思わぬ事を言うクワナに二人(正確には四人)は顔を見合わせる。
「どうする?」
『俺はいいと思うが……別に悪意があって言ってるわけじゃないだろうしな』
『儂も賛成だ、それに食料全部喰われたし少しは見返りを求めてもいいだろう……』
「僕も刀国の話聞きたいから賛成で」
そうして満場一致の会議を終えるとエクトが代表して了承する。
「それじゃあ、ティールス国までお願いします」
「応!この桑名柄干、二人の旅路を護って見せよう!」
・
・
・
「所でエクトよ、お前さんらに憑いているのはなんだ?」
『えっ、俺らの事見えてんのか?』
『だが……このクワナからは殆ど魔力を感じない、森の王程力があれば気づけるだろうが……まさか』
「師匠が見える?」
「ほう!オリリアの師匠なのか?二人程いるようだが両方とも師匠なのか?」
「クワナさん、この二人が見えるんですか?」
「いや、なんとなくそこにいるという事だけはわかるがどんな顔かはとんと検討がつかん!」
『まさか、薄っすらある気配だけで俺らの存在を察知したってのか?』
「すごい」
拍手するオリリアにクワナは照れくさそうに手を振る。
「まあそれなら話してもいいか……クワナさん、二人は――――」
・
・
・
「ほう……ほうほうほう!!妖魔の時代の英雄!生きていれば是非とも手合わせ出来ただろうに勿体ない!」
『随分と交戦的だな……』
『元の気質が武人なんだろうな、侍というのは』
「ようまの時代って?」
「うむ、拙僧の国……刀国では五百年前を妖魔の時代と呼んでいる。書物で呼んだ限りだが、嘗ては島中に妖……確か他国では魔物と呼称するのだったか、が蔓延っておったのだ。正しく魑魅魍魎、地獄絵図が相応しいだろうと」
『……当たり前だが、魔王の被害は俺達の知らない場所でも起こっていたんだな』
『仕方ない、とは言うまい。だが刀国が滅びる前に終わらせられたというだけでも良かったと、思うとしようか……』
「それにしても……島が違えばこうも身なりも変わるものだな、面白い」
「そうですね、その地にある素材や気温、地形なんかで文化は変わります。僕はその違いを知るのが楽しくて、歴史学者になったんです」
「エクトは学者なのか?拙僧は学が無くてなぁ、なんせ海に小舟で向かった程だからな!それで言えばお前さんは拙僧より強者だろうな!」
「いやぁ……それほどでも……」
「あ、壁だ」
オリリアが指を指すと、その先にはティールス国の城壁が見え始めた。
「おお!あれがこの国の街か!」
「ティールス国……ドワーフが中心となって創り出した国、魔術を用いないにも拘らず世界でも指折りの技術大国にもなってます。その国の主要都市が、あそこのエスケル街ですよ」
「ううむデカい、拙僧の国でもあそこまで大きい街は無かったな……」
桑名が唸っていると、近づいていくにつれ門前で馬車や人々が並んでいる事に気が付く。
「うん?エクトよ、あそこに随分と人が集まっているが祭りでもあるのか?」
「え?今の時期はどの国も大きなイベントはない筈……」
「皆困ってるみたい?」
三人は最も近くにいた商人の一人に声をかける。
「すいません、僕達旅の者なんですがこの渋滞は一体……」
「ん?ああ……検査待ちだよ、なんでも最近どでかい事件が起きて規制が厳しくなってるんだと。明確な身分が無い奴は皆弾いちまうらしい」
「そうなのか?じゃあ拙僧等は不味いんじゃ」
「入れない?」
・
・
・
「止まれ!身分を提示できるものはあるか」
「これで、後ろの二人は僕の助手で目的は観光です」
「……これは!スカラダ国の公認証明書!失礼しました!」
・
・
・
「エクト……お前さん、拙僧が思ってるより凄いんだなぁ」
「スカラダ国ってどこ?」
「僕が学者になった国、勉学の国って言われるくらい学者が多くて身分証として便利なんだよね、この証明書」
『俺は前から知ってたけど、身分だけ見れば高給取りだよな、エクト』
『旅ばかりしてるから質素に見えるだけだったのか……』
「――――ふむ、不滅の森の調査書を読んだが……素晴らしいな、まさか原因を突き止めるだけでなく解決してしまうとは。それもただの歴史学者が!まるで童話の冒険譚の様では無いか?なあ大臣?」
玉座に胡坐をかきながら座るダリオに大臣と呼ばれた男は淡々と答える。
「はい、それに加え現在命じていた五人の調査員の内エクト・ラムザが最も早い解決を行っております」
「良い!余はそういう話は大好きだ!あの男に渡す報酬は色を付けておけよ!」
「それがダリオ王、同行していたイニィーツィオ警備隊長であるザラ・アパルによるとエクト・ラムザは既にフィーネ国を離脱、現在はティールス国に向かっているそうです」
「何ぃ!?余はまだ報酬渡してないぞ!?何故にティールスに?」
「何でも目的が出来てしまったと。それとザラ・アパルから受け取った報告書には報酬はイニィーツィオ大都市にいるドクターという男と、ザラ・アパルに渡して欲しいとあります」
「ドクター?この国に医者など何人いると……いや、大臣、そのドクターという男の場所はわかるか?」
「はい、こちらに」
一枚の地図を受け取ったダリオは、その場所を見ると口角を上がらせた。
「ふふ、ははは!!成程奴か!確かにドクターといえばあいつしか居るまい!よし大臣!さっさと報酬の準備をしておけ!」
・
・
・
同時刻、イニィーツィオ大都市に住む、ドクターの部屋ではザラが訪れていた。
「―――――へぇ、それでもう旅だったってのか……俺と違って行動派だな……」
「はい、しかし報酬も受け取らずに行くのはどうかと思うのですが……最初は私に全部渡そうとしてきたので、半分はドクターに投げちゃいました」
「俺は銀行員じゃねぇぞ?……だがまあ、それくらいなら請け負ってやるよ……あいつは今どこに向かってるんだ?」
「あの時受け取った槍に書かれていた製作者と思しき名前……一番可能性があるのがドワーフの国という事でティールスに向かっています」
「ティールスね……そういや最近ニュースで聞いた様な……あった、これだ」
ドクターは椅子に座りながら探し始めると、一枚の新聞を見つけた。
「えーと……ああそうだ、なんかあそこの大都市がファッションとかいうのが流行ってるみたいだな」
「ファッション……ですか?あそこの国は鍛冶の国と呼ばれるくらい産業国ですしそういったお洒落な単語とは縁が無い気が……」
「まあ……事件が起きてる訳でもなさそうだし……あいつにトラブルになる事はないだろうな」
ハハハと笑うドクターの横で茶を啜るザラだったが、ふと疑問が浮かんでいた。
「(そういえばあの国は今規制が厳しくなっていたような……大丈夫でしょうか)」
・
・
・
「エクト、あれは?」
「あれはフェーネキャット、この辺りの草原で見られる猫だね」
「あれは?」
「あれは……風来鳥だ、珍しい。世界中を飛び回る自由な鳥だよ」
エクトはティールス国に向かう最中、オリリアに聞かれたことに答えていた。
『すっかり保護者みたいになってるな』
『バータルア村の周辺だけでは得られる知識は限られる、知りたいものを教えてくれる者がいるのはありがたい事だ』
『お前魔術以外はからっきしだもんな』
『……儂とて多少学んではいるのだ、だがこういうのは向いている者の方が……』
『はっ、そういう事にしとくか……にしてもまさかオリリアもついて来るとはな、大丈夫なのか?』
『オリリア自身の意志でもある、それを拒む理由など無いし実力はお前もよくわかっているだろう?』
『それもそうだな……しかし若いエルフって何気に初めて見たかもな』
『エルフ自体そこまで外交を行わない上に、旅をするエルフも大抵は成人……100歳になってからだからな』
「エクト、あの大きいのは?」
「あれはマジックカメレオンだよ、近くにいる生物の魔力属性を真似て擬態しようとする今の属性診断の基礎になったトカゲ……野生は珍しいな」
「じゃああれは?」
「あれは行き倒れている人だね……行き倒れている人!!?」
エクトは道から外れた草原で倒れている人を発見すると慌てて駆け寄った。
オリリア達もついていくと、そこで倒れていたのは男だが、その格好が奇妙だった。
異国の服か、無地の青いシャツ?に灰色のスカートの様な服装をしていてエクトはつい手が止まるが慌てて思考を振り払うと体を揺する。
「大丈夫ですか!こんな所で倒れて……獣にでもやられたのか!?」
「う……」
「喋った」
「そ……そこに居るのは人か……?」
「大丈夫ですか?どこか怪我したとか……!?」
「め……」
「め?」
「飯……」
・
・
・
「いやあ!助かった!拙僧このままだともう死ぬかと思った!」
「あぁはい……助かって良かったですね……ええほんと……」
「ご飯ぜんぶたべられた……」
まさか異空間に仕舞っていた食料を全部喰われるとは思っておらず、死んだ顔になっているエクトだったが男は笑ったままずっとエクトの肩を叩いている。
「拙僧は桑名柄干!刀国の侍だ!此度は飯を貰って感謝する!」
「桑名……というか刀国の出身!?」
「とうこくって?」
「刀国は噂でしか聞かない国だよ、少なくともわかっているのは小さな島国で、名前の通り刀って言う武器を製造している事だけ」
「応!拙僧の持つこれが刀よ!あらゆる物を断ち切る優れた剣!」
桑名は鞘に入ったままの刀を見せ、オリリアは物珍しそうに見ていた。
「それで……クワナさん?どうしてまた刀国からこんな所で倒れてたんですか?」
「うむ、拙僧何より旅好きでな。自国は既に巡り終わったから今度は海の向こうへと舟を漕いだは良いものの、デカいイカは現れるわ海は荒れるわで散々でな!最後には雷に打たれ気づけばここで倒れていたという訳よ!」
「ちょ、ちょっと待ってください。色々聞きたいんですけどそれよりまず……この辺りに海なんてありませんよ?」
「む、そうなのか?……しかし言われてみれば周りに水は見えんな、ではここまで飛ばされてきたのかな?」
「いやいやいやいや、仮に此処から海へ向かったとして、直線でも馬車で三日はかかりますよ?」
「ん?ん~……まあ細かい事はいい!とにかく助けてもらったのだから礼をしなければな!」
『細かい事かこれ』
『自分の思考が追い付かなければ細かい事なのだろうな』
「とはいえ拙僧が持っているのはこの刀と脇差のみ、これを渡すわけにはいかん……という事でお前さんら、拙僧を護衛として雇わないか?」
思わぬ事を言うクワナに二人(正確には四人)は顔を見合わせる。
「どうする?」
『俺はいいと思うが……別に悪意があって言ってるわけじゃないだろうしな』
『儂も賛成だ、それに食料全部喰われたし少しは見返りを求めてもいいだろう……』
「僕も刀国の話聞きたいから賛成で」
そうして満場一致の会議を終えるとエクトが代表して了承する。
「それじゃあ、ティールス国までお願いします」
「応!この桑名柄干、二人の旅路を護って見せよう!」
・
・
・
「所でエクトよ、お前さんらに憑いているのはなんだ?」
『えっ、俺らの事見えてんのか?』
『だが……このクワナからは殆ど魔力を感じない、森の王程力があれば気づけるだろうが……まさか』
「師匠が見える?」
「ほう!オリリアの師匠なのか?二人程いるようだが両方とも師匠なのか?」
「クワナさん、この二人が見えるんですか?」
「いや、なんとなくそこにいるという事だけはわかるがどんな顔かはとんと検討がつかん!」
『まさか、薄っすらある気配だけで俺らの存在を察知したってのか?』
「すごい」
拍手するオリリアにクワナは照れくさそうに手を振る。
「まあそれなら話してもいいか……クワナさん、二人は――――」
・
・
・
「ほう……ほうほうほう!!妖魔の時代の英雄!生きていれば是非とも手合わせ出来ただろうに勿体ない!」
『随分と交戦的だな……』
『元の気質が武人なんだろうな、侍というのは』
「ようまの時代って?」
「うむ、拙僧の国……刀国では五百年前を妖魔の時代と呼んでいる。書物で呼んだ限りだが、嘗ては島中に妖……確か他国では魔物と呼称するのだったか、が蔓延っておったのだ。正しく魑魅魍魎、地獄絵図が相応しいだろうと」
『……当たり前だが、魔王の被害は俺達の知らない場所でも起こっていたんだな』
『仕方ない、とは言うまい。だが刀国が滅びる前に終わらせられたというだけでも良かったと、思うとしようか……』
「それにしても……島が違えばこうも身なりも変わるものだな、面白い」
「そうですね、その地にある素材や気温、地形なんかで文化は変わります。僕はその違いを知るのが楽しくて、歴史学者になったんです」
「エクトは学者なのか?拙僧は学が無くてなぁ、なんせ海に小舟で向かった程だからな!それで言えばお前さんは拙僧より強者だろうな!」
「いやぁ……それほどでも……」
「あ、壁だ」
オリリアが指を指すと、その先にはティールス国の城壁が見え始めた。
「おお!あれがこの国の街か!」
「ティールス国……ドワーフが中心となって創り出した国、魔術を用いないにも拘らず世界でも指折りの技術大国にもなってます。その国の主要都市が、あそこのエスケル街ですよ」
「ううむデカい、拙僧の国でもあそこまで大きい街は無かったな……」
桑名が唸っていると、近づいていくにつれ門前で馬車や人々が並んでいる事に気が付く。
「うん?エクトよ、あそこに随分と人が集まっているが祭りでもあるのか?」
「え?今の時期はどの国も大きなイベントはない筈……」
「皆困ってるみたい?」
三人は最も近くにいた商人の一人に声をかける。
「すいません、僕達旅の者なんですがこの渋滞は一体……」
「ん?ああ……検査待ちだよ、なんでも最近どでかい事件が起きて規制が厳しくなってるんだと。明確な身分が無い奴は皆弾いちまうらしい」
「そうなのか?じゃあ拙僧等は不味いんじゃ」
「入れない?」
・
・
・
「止まれ!身分を提示できるものはあるか」
「これで、後ろの二人は僕の助手で目的は観光です」
「……これは!スカラダ国の公認証明書!失礼しました!」
・
・
・
「エクト……お前さん、拙僧が思ってるより凄いんだなぁ」
「スカラダ国ってどこ?」
「僕が学者になった国、勉学の国って言われるくらい学者が多くて身分証として便利なんだよね、この証明書」
『俺は前から知ってたけど、身分だけ見れば高給取りだよな、エクト』
『旅ばかりしてるから質素に見えるだけだったのか……』
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる