桃語り

はちみつみかん

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第一話 入学式の朝

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空を見上げると、昨日より幾分深いような青が広がっていた。
今日は、大事なお披露目の日だ。それにふさわしい空で良かった。

「スミレ、入学おめでとう。似合ってるな」

「スミレの制服姿、写真に残しておくべきです。撮りましょう」

「…嬉しくなくはないですからね。…そんなことよりも、もうすぐ遅刻しそうですよ」

かすみが何やら指示を出す。

「まあ、そうですわね。では、一度だけ……、はいチーズ」

パシャ。

四方八方からカメラを向けられる。
一度しか撮らないけど、何機から撮られるかは言ってないので、嘘を言ったことにはならない。


入学式には兄と姉(いとこ)と父と母。それに、かすみの養父でもある、叔父が一緒に参加する。
揃っていないのは、かすみの2人の兄と弟と両親だ。だけど、そんなことを言い出す人はいない。

「頑張って、スミレ。母様は見てますからね」

「そうそう。というか、俺、一昨年卒業したばっかりだし、まさかこんなに早く戻ってくるとは…」

叔父は、もともと教師になるつもりであった。
本来ならば、あと2年ほど経験を積む予定であったが、スミレが今年入学するのもあって、学園長が誘ったのだ。

「叔父様もがんばりましょう!同じ敷地内に、みんないるのですから」

「うう、ありがとう。我が娘よ~」

叔父がかすみに泣き付こうとして、冬夜に止められる。

「叔父上、かすみに変な噂がたちます」

「.....」

相変わらず何も言わない父をいちいち気にするほど、スミレに心の余裕はなかった。

歳の差があまりない兄と叔父は、まるで兄弟のようにチャンバラをする。

 案外、入学しても、普段と変わらないかもしれないと、スミレは思った。
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