2 / 4
第二話 青い瞳の子
しおりを挟む
「スミレ、腕輪を外してくれないか?」
「なぜですか?」
腕輪とはいえ、スミレにとっては物心がついた時から、ずっとつけているお守りのような物なのだ。今更外せと言われて、疑問に感じるのもしょうがないだろう。
「大丈夫だ。入学式が終わったらまた返すから。ほら、もうすぐ入場だぞ」
「まあ、いいですけど…」
急かされたスミレは、腕輪を外して、速めに歩いて式場に向かう。
ゴーン.......。ゴーン.......。
学園特有の大きな鐘の音が鳴り響く。
入学式が始まる合図だ。
スミレは新入生の座席に座っていた。
「我が校の生徒会長でもある、在校生代表、緑葉夕丞、挨拶をお願いします」
「はい。......皆様、ようこそ凪晴学園へ。我が校の悠長な歴史の中、こうして皆様と出会えた事を....」
…始まったわね。
そう思いながらスミレはあたりに座っている同級生を見回す。いくら貴族とはいえ、子供は子供だ。みんなキョロキョロとせわがしなく頭を動かしていた。
ここは全国の貴族が集まる学校なので当然大きく、生徒の数も多い。新入生をざっと見渡しただけでも、300人ぐらいいるようだ。
ふとスミレは自分の右斜め後ろに座る男の子が目に入った。
…なんて青くて綺麗な瞳なんだろう。かすみ姉さまにそっくりだわ。
その時、目があった。
その子は澄んだ笑顔で笑ってくれた。スミレも笑い返したが、その子はすぐに顔を伏せてしまった…。いや、よく見ると耳が少しだけ赤みがかっていた。
なんだか、“いけないもの”を見てしまったようで、バッと頭ごと目線をそらした。
…どうしたんだろう。とりあえず、そろそろちゃんとスピーチを聞かないと…。
案の定、後ろの方で何人かの新入生が、教授に注意された。
「以上をもちまして、第231期入学式を閉会します。1年生はこれより生徒手帳の配布と、学校案内及び入学測定が予定されていますの、終了時まで、保護者の皆様はしばしの茶会をお楽しみください」
凪晴学園231期1学年、320名。クラス:アメシストからクラス:クォーツまで、8つに分けられる。スミレと例の青い瞳の子は、クラス:アメシスト。
「同じクラスみたいね。これから1年間、よろしくね」
「あ、ああ」
差し伸べられた手を、梨は慌てて掴んだ。
青い瞳が一瞬色が変わったのを、スミレは気のせいだと思うことにした。
「なぜですか?」
腕輪とはいえ、スミレにとっては物心がついた時から、ずっとつけているお守りのような物なのだ。今更外せと言われて、疑問に感じるのもしょうがないだろう。
「大丈夫だ。入学式が終わったらまた返すから。ほら、もうすぐ入場だぞ」
「まあ、いいですけど…」
急かされたスミレは、腕輪を外して、速めに歩いて式場に向かう。
ゴーン.......。ゴーン.......。
学園特有の大きな鐘の音が鳴り響く。
入学式が始まる合図だ。
スミレは新入生の座席に座っていた。
「我が校の生徒会長でもある、在校生代表、緑葉夕丞、挨拶をお願いします」
「はい。......皆様、ようこそ凪晴学園へ。我が校の悠長な歴史の中、こうして皆様と出会えた事を....」
…始まったわね。
そう思いながらスミレはあたりに座っている同級生を見回す。いくら貴族とはいえ、子供は子供だ。みんなキョロキョロとせわがしなく頭を動かしていた。
ここは全国の貴族が集まる学校なので当然大きく、生徒の数も多い。新入生をざっと見渡しただけでも、300人ぐらいいるようだ。
ふとスミレは自分の右斜め後ろに座る男の子が目に入った。
…なんて青くて綺麗な瞳なんだろう。かすみ姉さまにそっくりだわ。
その時、目があった。
その子は澄んだ笑顔で笑ってくれた。スミレも笑い返したが、その子はすぐに顔を伏せてしまった…。いや、よく見ると耳が少しだけ赤みがかっていた。
なんだか、“いけないもの”を見てしまったようで、バッと頭ごと目線をそらした。
…どうしたんだろう。とりあえず、そろそろちゃんとスピーチを聞かないと…。
案の定、後ろの方で何人かの新入生が、教授に注意された。
「以上をもちまして、第231期入学式を閉会します。1年生はこれより生徒手帳の配布と、学校案内及び入学測定が予定されていますの、終了時まで、保護者の皆様はしばしの茶会をお楽しみください」
凪晴学園231期1学年、320名。クラス:アメシストからクラス:クォーツまで、8つに分けられる。スミレと例の青い瞳の子は、クラス:アメシスト。
「同じクラスみたいね。これから1年間、よろしくね」
「あ、ああ」
差し伸べられた手を、梨は慌てて掴んだ。
青い瞳が一瞬色が変わったのを、スミレは気のせいだと思うことにした。
0
あなたにおすすめの小説
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化決定しました。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。
しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。
よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう!
誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は?
全十話。一日2回更新 完結済
コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる