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第5章 ミレーヌと過ごす休日

第33話 恋人とお洒落なワンピース。

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 第33話 恋人とお洒落なワンピース。
 
 カーテンから差し込む日差しで僕は目が覚めた。
 窓の外を見ると美しい澄んだ青い空。
 雲も少なくよく晴れているようだ。
 
 フレーベル王国のある場所は海に面した大陸の外れにあるので、夏は乾燥して雨量が少なく冬は偏西風の影響で雨量が多い。
 気候が穏やかで過ごしやすく柑橘類の栽培に適している。
 前世で言うと地中海性気候という気候が近いだろうか。
 
 僕の隣には愛しい恋人のミレーヌがすやすやと眠っている。
 さらさらの長い髪が汗の雫で艶やかに濡れていて陽の光を浴びて輝いて見える。
 
 僕とミレーヌは明け方近くまでお互いの身体を求めあい、抱きしめあって眠りについた。
 僕の腕枕に頭を寄せて眠るミレーヌの顔が微笑ましい。
 
 美しい恋人。
 
 まだ少年と少女と言っていい年齢の僕達はこれからどんな経験をするのだろう。
 このあどけない少女を悲しませたりしない。
 僕はそう思いながら見つめているとミレーヌがうっすらと目を開いていく。
 寝ぼけ眼で僕を見つめてミレーヌは微笑んでくれた。 
 
 「おはようミレーヌ」
 
 「うん。おはようユキナ」
 
 そう言って僕の胸に頭を寄せてくるミレーヌが可愛らしくて、僕はミレーヌが離れるまで美しい髪をなでていた。
 
 もうお昼になっていたので、僕とミレーヌは宿に併設している公衆浴場で身体を洗う。
 昨夜のミレーヌを思い出すとお湯で身体を洗う間もペニスの勃起が収まらず、我ながら元気すぎる若い身体を持て余してしまう。
 お風呂上りに昼食を食べにミレーヌと一階の食堂で待ち合わせした。
 
 幸いというか。
 
 シグレさんとセシルさんとは会わなかった。
 きっと会っていたらシグレさんには昼まで一緒に寝ていたことを呆れられ、セシルさんの格好のからかい相手にされていただろう。
 
 僕とミレーヌはお昼からベーコンと目玉焼きの昼食だけでは足りず、昼間からステーキとかカロリーの高いものを食べる。
 ごめんねミレーヌお腹空いたよね。
 昨夜ちょっとやりすぎたみたい。
 僕の視線に気が付いたミレーヌが恥ずかしそうに微笑んでくれた。
 
 一週間の暇な時間を貰ったとはいえ特にする事は無い。
 かといって一週間部屋の中で過ごすというのも勿体ない。
 僕が二枚目のステーキをナイフで切り分けていた時だ。
 ステーキを美味しそうに食べている僕を見て、優しく微笑んでいるミレーヌに気が付いた。
 
 「どうしたの?」

 「ううん。ユキナがすごく美味しそうに食べているから可愛いなって思ってただけ」
 
 前世では味気ない病院食だけだったから僕は食べ物を凄く美味しく感じる。
 切ると肉汁が溢れるステーキを二枚目なのに勢いが止まらず食べている僕の姿に、周りは奇異の目で見ている気がする。
 
 だって昨夜はミレーヌが愛しくて止まらなくて明け方まで性欲に溺れていたんだからお腹が空くのは当たり前。
 もう一枚ステーキを追加しようかと思っている。
 僕程じゃないけどミレーヌも良く食べるので二人そろってお皿が山になっていく。
 こういう所も僕とミレーヌは相性がいい。
 
 「ミレーヌこれからどうしよう」
 
 僕がミレーヌに話しかける。
 ミレーヌは少し考えた後で僕に言った。
 
 「せっかくだし、今日は街を歩いてみようよ。ボクこんな大きな街で遊んだことない」
 
 「いいね。それ」
 
 よく考えたら冒険者になる為の試験勉強に忙しくてゆっくりと首都見物をしていなかった。
 ここはフレーベル国の首都フレーベル。
 きっと遊ぶ場所もあるはずだ。
 
 シグレさんとセシルさんも休養を取るのは冒険者の義務だって言っていたし、今日は遊びつくそうと思っている。
 
 「じゃあ食べ終わったら着替えて出かけよう」
 
 「うん♪ボクも楽しみ」
 
 こうして僕達は街へと出かけることにした。
 フレーベル国は魔法と科学の街でもある。
 他の村とも違い、近郊の安全な村から物資の供給を受けているので豊かな街だ。 
 
 まず僕達は青空市場に向かった。
 
 ここには村々から新鮮な野菜や果物がある。
 市場の露天には日用品から女性用アクセサリーや服まで色々なものが売っている。
 勿論貴族御用達の服飾店も別の場所にあるけれど、僕達の財布では無縁の場所だ。
 
 僕とミレーヌはシャツとロングパンツという簡単な服しか持っていない。
 その上に長衣を羽織っている姿はそのまま田舎の出身者だ。
 色も地味なベージュと黒という庶民的な服なのでちょっと寂しい。
 
 「わ、見てみてユキナ。ボクこういうのが着てみたい」
 

 そう言ってミレーヌが指さしたのは前はボタンで留める胸を強調した青色のワンピース。
 胸元を強調するので身体の線が見えてしまう。
 スタイルのいいミレーヌが着ると大変女性らしい美しさが映えるだろう。
 
 「おや目が高い。これはさる富豪の着ていたお古でね。あちこち手直ししたが十分着れる逸品さ」
 
 庶民の服は貴族や富豪のおさがりもある。
 繊維業があまり発達していない異世界フォーチュリアで衣服は高い。
 
 庶民用の服は兎に角破れにくい、マンという綿に似た布地で作ってある。
 日用品の類の庶民服はぴっちりとした作りが多いが、これは親のお古を手直しして着ている事が多いから。
 
 大体上衣を着ているのも寒暖の差で体温調節しやすいからだ。
 それでも襟や帽子の縁に刺繍が施されていたりしているのはお洒落な風潮だろう。
 
 逆に富豪や貴族の服は材質からして違う。
 シクという絹のように光沢のある外国からの輸入品で場合によっては宝石などが縫い付けてある。
 
 このワンピースは地味な方で貴族令嬢の普段着だったのだろう。
 布地はマンなのだが染色が良くてお古とはいえ物凄く高い。
 庶民には縁遠い品だが冒険の報酬が出た僕とミレーヌなら二人のお金で買える値段だった。
 
 「これに髪飾りとかあれば完璧!!」
 
 思わず力説した僕に苦笑してミレーヌは白い花飾りをつけてくれた。
 白い花の髪飾りがミレーヌの綺麗な緑色の髪に映える。
 
 「これにしようそうしよう今すぐしよう!!ミレーヌに凄く似合ってるよ!!」
 
 思わず前のめりになって手を握った僕に目をぱちくりしながら驚きつつも、承諾してくれたミレーヌは露店のおばさんにお金を渡して購入してくれた。
 さっそく店に併設している試着室で着替えてくれる。
 僕はミレーヌの着ていた服を紙の手提げバッグにいれて美しい恋人の姿に見惚れていた。
 
 「そんなに気に入ったの?この服ボクちょっと恥ずかしいんだけどね」
 
 「恋人が可愛すぎて惚れ直しました」
 
 「ふふん♪今更ボクの可愛さに気が付いたか~♪」
 
 「うん!!可愛すぎてもう死にそう!!」
 
 「まだ死んじゃ駄目だよ。ユキナはボクとずっと一緒にいるんだからね」
 
 そう言って腕を組んでくれるミレーヌ。
 周りに見せつけるようにしているのは気のせいじゃないと思う。
 そういう僕もミレーヌの美しさに目を奪われる男たちに、この美しい女の子は僕の彼女だよってアピールしておこう。
 
 僕もミレーヌ程じゃないけど身ぎれいな藍色のローブを買った。
 こっちはマン製だけど下級貴族のお古でミレーヌ程じゃないけど十分お洒落だと思う。
 袖口と襟に刺繍が施してあるので十分高価な品物だ。
 いつかはミレーヌにシク製の服を買ってあげたいがそんな贅沢はいつになるかわからない。
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