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第7章 オーガの罠
第45話 強襲
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第45話 強襲
見張りのゴブリンを素早く倒した僕達はゴブリンとトロールのいる洞窟へと走る。
丁度見張りを変わったばかりのゴブリンが二匹洞窟の入り口に立っているが、夜行性のゴブリンにとって夜明けはもっとも眠い時間だ。
セシルさんが得意の矢を放つ。
一匹の喉に命中し、もう一匹が声を上げようとした時。
「エネルギーボルト」
クヌートとフェリシアが同時に放ったエネルギー弾を受けて絶命した。
「みんな行くよ」
今の物音に気が付いてゴブリンが巣穴から出てくる気配はない。
逃げ道がないか黒猫が辺りを偵察済みなので、出入り口はここだけだとわかっている。
それにしてもゴブリンは本当に怠惰で知能も低い。
ゴブリンはリーダーが率いている場合は要注意だが、少しリーダーが目を離すとこの有様だ。
仲間意識も無く恐怖以外で従える事はできない。
「ゴブリンの動きが鈍いですね。オーガはいないのでしょうか?」
「おそらくな。オーガが統率しているゴブリンはもう少し勤勉だ」
僕の隣で走るシグレさんと話しつつ洞窟の入り口に迫る。
でもそれならオーガはどこにいるんだろう?
疑問はあるけどオーガがいないなら今のうちにゴブリンを全滅させるチャンス。
洞窟に抜け穴はないから逃げられる恐れはないけど、夜明けの奇襲でゴブリンの頭が冴える前に決着をつけよう。
スカウトのセシルさんを先頭に僕、ミレーヌ、クヌート、フェリシア、シグレさんの順に洞窟へ入る。
一番後ろから回り込まれないようにシグレさんが殿だから安心して前進できる。
セシルさんが罠を発見、解除してくれる間に僕達はゴブリンを次々に倒していく。
前回のように時間をかけないのはオーガがいないと確信したからだ。
オーガが元々いないのかたまたま留守なのかはわからないけど、今なら楽にゴブリンを狩れる。
狭い洞窟での戦闘で役立つのはショートソードだ。
特に身長が低くてすばしっこいゴブリン相手にするには最適な武器だった。
ロングソードを振るうのに洞窟内は狭いけど、ショートソードなら洞窟の壁に当たって動きが削がれる事は無い。
またゴブリンはそれほど身体が大きい訳でも無いので、ショートソードでも十分致命傷を負わせる事ができる。
「ライト。ウィルオーウィプス。サイレンス」
クヌートとフェリシアが魔法を3つ同時に発動させる。
明かりを灯すライトの魔法をゴブリンの目の前で展開し、視界を阻害したあと剣で突き殺していく。
そして戦闘の音はサイレンスの魔法で無音状態にする。
戦闘の後は精霊のウィルオーウィプスに怪我の治療をしてもらう。
このローテーションはうまくいった。
ゴブリン達は突然の奇襲に慌てて武器を取るが、声も上げれずいきなり目の前に光を浴びせられショートソードで切り殺されていく。
統率が取れていないのはリーダーのオーガが不在の証だ。
この洞窟のゴブリンはオーガに率いられた様子はない。
そのうちに洞窟の奥へと突き進み、寝床にいたゴブリンをスリープの呪文で眠らせて一匹ずつ確実に殺していった。
「……ユキナ、ミレーヌ。私がやろうか?」
洞窟の一番奥はゴブリンの子供部屋だった。
子供のゴブリンは僕達の姿を見て怯えている。
全身をゴブリンの返り血で緑に染めた僕達はさぞ恐ろしく見えるだろう。
シグレさんがゴブリンの子供を殺すのを引き受けようとしてくれたが僕は静かに首を振った。
いつまでもシグレさんに頼るわけにはいかない。
「許してとは言わない。恨んで」
そう言って僕はショートソードを振り下ろす。
子供のゴブリンの身体が切り裂かれ洞窟の壁に転がった。
そのまま次のゴブリンを殺そうとした時、ミレーヌが僕の隣に立つ。
「ユキナが全部背負うこと無い。ボクにも背負わせて」
そう言ってミレーヌもエストックでゴブリンの子供を突き刺し絶命させた。
僕とミレーヌがゴブリンの子供を殺している間、他のみんなはゴブリンを取り逃がしていないか確認している。
クヌートとフェリシアが魔法で身を隠したゴブリンの位置を暴き、シグレさんが逃がさず仕留めていく。
ゴブリン達の巣穴に突入してから2時間くらいで、僕たちは全てのゴブリンを殺し尽くした。
逃走したゴブリンを一匹残らず殺してから僕達は探索を続ける。
ゴブリンの子供がいたという事は捕らえられた女性がいるはずだ。
だけど洞窟をくまなく探しても捕らえられた人は一人もいなかった。
「子供も入れて30匹だな。子供がいたという事は孕み袋の女がいたはずだが見当たらない。つまり食われたという事だ」
そう言ってシグレさんがゴブリンの血で汚れた剣を布で拭い鞘に納める。
ゴブリンは捕らえた男性はすぐに殺して食べるが、女性は孕み袋という子供を産ませる為の道具にしてしばらく生き残らせる。
用が済めば殺して食べるが、殺した子供の数を見ると複数の女性に子供を産ませただけ。
生き残りの女性がいないという事は既に殺して食べたあとだ。
更に探索するとボロボロになった農民の衣服と骨が見つかった。
数は女性用が3人分と男性用が2人。
5人分という事は攫うなりした被害者が5人いた筈。
「どういう事でしょう?」
「ユキナ相談は洞窟の外でしない?ボクここにもういたくない」
ミレーヌがそう言うと全員頷いたので僕達は外へ出る。
◆◆◆
外に出て自分の身体を見ると酷い惨状だった。
魔法で戦っていたクヌートとフェリシア以外はゴブリンの緑色の返り血を浴びていた。
無駄な動きが無かったシグレさんとセシルさん、そして武器がエストックだったミレーヌはそれほどでもないが、僕の身体は返り血で所々緑色になっていた。
無我夢中で剣を振るったから無駄な動きが多かったのだろう。
「黒猫が言うには近くにゴブリンの巣穴は無いようです」
黒猫を抱いて頭を撫でているフェリシアはそう言って報告してくれる。
近くにオーガもいないという事はどういう事だろう。
僕が頭を捻っているとクヌートが発言する。
「ゴブリンの身体を見ると血色も良く、孕み袋の女性を食う程飢えてはいない。つまり食料が豊富だったという事だ」
嫌な話だが食料になる人間には事欠かなかったという事だ。
だがこの近くで人間を調達出来るのは僕達がいたホレ村だけだ。
ホレ村では流行り病で何人も死んだと言っていた。
オーガが発見されてから流行り病が流行ったと言っていた。
ここから導き出されるのは。
「すぐにホレ村に戻りましょう」
「ユキナどういう事?ボクにわかるように説明してよ」
「流行り病で死んだ村人の遺体を回収してここで食べていた、というのは考えすぎかな」
「それだと流行り病を発生させたのはゴブリンって事にならない?ゴブリンにそんな知能があるかなあ??」
「ゴブリンに無いとしてもオーガにはあるよ。僕の仮説が正しければオーガはホレ村で流行り病を発生させている筈だ」
僕の発言にクヌートが賛同して頷いた。
クヌートは賢いから話が早い。
「ありうるな。ホレ村を食料源にしてゴブリンの数を増やしてホレ村を襲うつもりだった。そう考えれば説明がつく。となれば村人の中にオーガが潜んでいると考えるべきだろう」
「僕もそう思う。これ以上の犠牲者が出る前に戻らないと」
「そういう事なら便利な魔法がある。フェリシア、フライだ」
そう言ってクヌートが魔法の印を結ぶとフェリシアも慌てて印を結ぶ。
その印が消えると僕達の身体が宙に浮いた。
「飛行魔法のフライだ。森の上を飛べば1時間もかからないだろう」
「こんな便利な魔法があるならどうして最初から使わなかったの?」
「この魔法はエナジーの消費が大きいからな。戦闘に備えて余力を残しておかないといけないだろう?それに空から接近すればゴブリンに簡単に見つかっただろう」
それもそうだ。
本当ならエナジーの消耗を抑える為に森を歩いて帰りたいがそんな時間はない。
急がないと犠牲者が増えるしゴブリンが皆殺しされたとオーガが知れば何をするのかわからない。
「みんな急ごう」
僕がそう言うと僕達は森の木々の上まで飛び、一気に加速してホレ村に戻った。
見張りのゴブリンを素早く倒した僕達はゴブリンとトロールのいる洞窟へと走る。
丁度見張りを変わったばかりのゴブリンが二匹洞窟の入り口に立っているが、夜行性のゴブリンにとって夜明けはもっとも眠い時間だ。
セシルさんが得意の矢を放つ。
一匹の喉に命中し、もう一匹が声を上げようとした時。
「エネルギーボルト」
クヌートとフェリシアが同時に放ったエネルギー弾を受けて絶命した。
「みんな行くよ」
今の物音に気が付いてゴブリンが巣穴から出てくる気配はない。
逃げ道がないか黒猫が辺りを偵察済みなので、出入り口はここだけだとわかっている。
それにしてもゴブリンは本当に怠惰で知能も低い。
ゴブリンはリーダーが率いている場合は要注意だが、少しリーダーが目を離すとこの有様だ。
仲間意識も無く恐怖以外で従える事はできない。
「ゴブリンの動きが鈍いですね。オーガはいないのでしょうか?」
「おそらくな。オーガが統率しているゴブリンはもう少し勤勉だ」
僕の隣で走るシグレさんと話しつつ洞窟の入り口に迫る。
でもそれならオーガはどこにいるんだろう?
疑問はあるけどオーガがいないなら今のうちにゴブリンを全滅させるチャンス。
洞窟に抜け穴はないから逃げられる恐れはないけど、夜明けの奇襲でゴブリンの頭が冴える前に決着をつけよう。
スカウトのセシルさんを先頭に僕、ミレーヌ、クヌート、フェリシア、シグレさんの順に洞窟へ入る。
一番後ろから回り込まれないようにシグレさんが殿だから安心して前進できる。
セシルさんが罠を発見、解除してくれる間に僕達はゴブリンを次々に倒していく。
前回のように時間をかけないのはオーガがいないと確信したからだ。
オーガが元々いないのかたまたま留守なのかはわからないけど、今なら楽にゴブリンを狩れる。
狭い洞窟での戦闘で役立つのはショートソードだ。
特に身長が低くてすばしっこいゴブリン相手にするには最適な武器だった。
ロングソードを振るうのに洞窟内は狭いけど、ショートソードなら洞窟の壁に当たって動きが削がれる事は無い。
またゴブリンはそれほど身体が大きい訳でも無いので、ショートソードでも十分致命傷を負わせる事ができる。
「ライト。ウィルオーウィプス。サイレンス」
クヌートとフェリシアが魔法を3つ同時に発動させる。
明かりを灯すライトの魔法をゴブリンの目の前で展開し、視界を阻害したあと剣で突き殺していく。
そして戦闘の音はサイレンスの魔法で無音状態にする。
戦闘の後は精霊のウィルオーウィプスに怪我の治療をしてもらう。
このローテーションはうまくいった。
ゴブリン達は突然の奇襲に慌てて武器を取るが、声も上げれずいきなり目の前に光を浴びせられショートソードで切り殺されていく。
統率が取れていないのはリーダーのオーガが不在の証だ。
この洞窟のゴブリンはオーガに率いられた様子はない。
そのうちに洞窟の奥へと突き進み、寝床にいたゴブリンをスリープの呪文で眠らせて一匹ずつ確実に殺していった。
「……ユキナ、ミレーヌ。私がやろうか?」
洞窟の一番奥はゴブリンの子供部屋だった。
子供のゴブリンは僕達の姿を見て怯えている。
全身をゴブリンの返り血で緑に染めた僕達はさぞ恐ろしく見えるだろう。
シグレさんがゴブリンの子供を殺すのを引き受けようとしてくれたが僕は静かに首を振った。
いつまでもシグレさんに頼るわけにはいかない。
「許してとは言わない。恨んで」
そう言って僕はショートソードを振り下ろす。
子供のゴブリンの身体が切り裂かれ洞窟の壁に転がった。
そのまま次のゴブリンを殺そうとした時、ミレーヌが僕の隣に立つ。
「ユキナが全部背負うこと無い。ボクにも背負わせて」
そう言ってミレーヌもエストックでゴブリンの子供を突き刺し絶命させた。
僕とミレーヌがゴブリンの子供を殺している間、他のみんなはゴブリンを取り逃がしていないか確認している。
クヌートとフェリシアが魔法で身を隠したゴブリンの位置を暴き、シグレさんが逃がさず仕留めていく。
ゴブリン達の巣穴に突入してから2時間くらいで、僕たちは全てのゴブリンを殺し尽くした。
逃走したゴブリンを一匹残らず殺してから僕達は探索を続ける。
ゴブリンの子供がいたという事は捕らえられた女性がいるはずだ。
だけど洞窟をくまなく探しても捕らえられた人は一人もいなかった。
「子供も入れて30匹だな。子供がいたという事は孕み袋の女がいたはずだが見当たらない。つまり食われたという事だ」
そう言ってシグレさんがゴブリンの血で汚れた剣を布で拭い鞘に納める。
ゴブリンは捕らえた男性はすぐに殺して食べるが、女性は孕み袋という子供を産ませる為の道具にしてしばらく生き残らせる。
用が済めば殺して食べるが、殺した子供の数を見ると複数の女性に子供を産ませただけ。
生き残りの女性がいないという事は既に殺して食べたあとだ。
更に探索するとボロボロになった農民の衣服と骨が見つかった。
数は女性用が3人分と男性用が2人。
5人分という事は攫うなりした被害者が5人いた筈。
「どういう事でしょう?」
「ユキナ相談は洞窟の外でしない?ボクここにもういたくない」
ミレーヌがそう言うと全員頷いたので僕達は外へ出る。
◆◆◆
外に出て自分の身体を見ると酷い惨状だった。
魔法で戦っていたクヌートとフェリシア以外はゴブリンの緑色の返り血を浴びていた。
無駄な動きが無かったシグレさんとセシルさん、そして武器がエストックだったミレーヌはそれほどでもないが、僕の身体は返り血で所々緑色になっていた。
無我夢中で剣を振るったから無駄な動きが多かったのだろう。
「黒猫が言うには近くにゴブリンの巣穴は無いようです」
黒猫を抱いて頭を撫でているフェリシアはそう言って報告してくれる。
近くにオーガもいないという事はどういう事だろう。
僕が頭を捻っているとクヌートが発言する。
「ゴブリンの身体を見ると血色も良く、孕み袋の女性を食う程飢えてはいない。つまり食料が豊富だったという事だ」
嫌な話だが食料になる人間には事欠かなかったという事だ。
だがこの近くで人間を調達出来るのは僕達がいたホレ村だけだ。
ホレ村では流行り病で何人も死んだと言っていた。
オーガが発見されてから流行り病が流行ったと言っていた。
ここから導き出されるのは。
「すぐにホレ村に戻りましょう」
「ユキナどういう事?ボクにわかるように説明してよ」
「流行り病で死んだ村人の遺体を回収してここで食べていた、というのは考えすぎかな」
「それだと流行り病を発生させたのはゴブリンって事にならない?ゴブリンにそんな知能があるかなあ??」
「ゴブリンに無いとしてもオーガにはあるよ。僕の仮説が正しければオーガはホレ村で流行り病を発生させている筈だ」
僕の発言にクヌートが賛同して頷いた。
クヌートは賢いから話が早い。
「ありうるな。ホレ村を食料源にしてゴブリンの数を増やしてホレ村を襲うつもりだった。そう考えれば説明がつく。となれば村人の中にオーガが潜んでいると考えるべきだろう」
「僕もそう思う。これ以上の犠牲者が出る前に戻らないと」
「そういう事なら便利な魔法がある。フェリシア、フライだ」
そう言ってクヌートが魔法の印を結ぶとフェリシアも慌てて印を結ぶ。
その印が消えると僕達の身体が宙に浮いた。
「飛行魔法のフライだ。森の上を飛べば1時間もかからないだろう」
「こんな便利な魔法があるならどうして最初から使わなかったの?」
「この魔法はエナジーの消費が大きいからな。戦闘に備えて余力を残しておかないといけないだろう?それに空から接近すればゴブリンに簡単に見つかっただろう」
それもそうだ。
本当ならエナジーの消耗を抑える為に森を歩いて帰りたいがそんな時間はない。
急がないと犠牲者が増えるしゴブリンが皆殺しされたとオーガが知れば何をするのかわからない。
「みんな急ごう」
僕がそう言うと僕達は森の木々の上まで飛び、一気に加速してホレ村に戻った。
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