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第8章 勇者ミレーヌ
第54話 尖塔の戦い。
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第54話 尖塔の戦い。
尖塔までは狭い石造りの回り階段が続いていく。
僕が先頭でミレーヌと一緒に登っていく。
「ユキナ、ボク身体が熱いよ。この先に邪悪な者がいるのがわかる」
「そいつは尖塔の一番上にいるの?」
「間違いないよ。ボクの心にそいつの闇の感情が渦巻いてるのがわかるもん」
そう言ってミレーヌが興奮したように僕の後ろで言う。
もしミレーヌが伝説の勇者なら、今のミレーヌは銀級か金級に覚醒したと思う。
冒険者の等級は下から銅・青銅・鉄・鋼・銀・金・白金がある。
勇者に覚醒する前のミレーヌはもうすぐ鉄級になるという所だったのに、鉄と鋼をすっ飛ばして一気に銀か金にまで到達した事になる。
銀級は冒険者ギルドでも最上位グループの一人になり、金なら国家規模のレベルになる。
伝説の勇者なら白金という伝説クラスの実力者になる。
僕はまだ青銅級、もうすぐ鉄級になれるだろうか。
はっきり言って釣り合わない。
この戦いが終わったらミレーヌには国どころか世界中の王侯貴族から縁談が殺到するかもしれない。
勇者との間に生まれた王子という最上級の箔がつくからだ。
ミレーヌはその時も僕と一緒にいてくれるだろうか?
僕はミレーヌを世界一愛している。
たとえ今は釣り合わなくても必ずミレーヌに相応しい男になってやる。
でも不安なのは確かだ。
「こんな時に不謹慎だけど聞いていいかな?」
「ユキナがボクに釣り合うかどうか、なんて聞いたら怒るよ」
僕の考えと不安はミレーヌにはお見通しだった。
流石僕の恋人だと思う。
同時に僕の後ろからミレーヌが怒ってるという気迫が感じられる。
「ユキナ。ちょっと止まって」
「え、どうしたのミレーヌ?」
僕は階段を駆け上がる足を止めてミレーヌに振り向いた。
それと同時に僕の胸に身体を密着させて抱き着くミレーヌの顔が目の前に迫る。
その顔は怒ってるようにも悲しいようにも見えた。
「ボク、他の事なら我慢できるけどユキナにそんな女だって思われるのは許せない」
そう言って僕に抱き着いたミレーヌは僕にキスをした。
僕もミレーヌを抱きしめて舌を入れてディープキスをする。
僕とミレーヌの舌が絡み合いとても幸せな心で胸が一杯になった。
「ボク、ミレーヌ・フォリ・アリストラードはユキナを愛しています。どんなに豊かな時も貧しい時も不幸の時もボクは一生、生涯、死ぬまでユキナだけを愛しています。これでもまだ不安?」
「ごめん。僕もミレーヌをずっとずっと愛しています」
「今度そんな事思ったら、ボク当分口きいてあげないから」
そう言って微笑むミレーヌ。
僕は馬鹿な事を思った自分を恥じた。
世界で一番愛してる恋人を疑うなんて、恥知らずにも程がある。
「行こうミレーヌ。この先にいる悪党を倒してルクス城のみんなを救うんだ」
「うん♪ぱぱぱっと倒しちゃおうね」
二人で頷いて僕達は尖塔の扉を開いた。
途端に激しい炎が僕達を包むがミレーヌの身体から溢れた光が炎を吹き飛ばす。
「ギャアアアア!!」
僕達に魔法を放ったであろう怪物に炎を逆転してその身体を焼く。
その炎はすぐに消えたが怪物の自尊心は傷つけられた。
まさに異形の怪物と言うべきだろう。
人型の怪物の顔は蛇で胴体は鱗で覆われている。
手には杖を持ち上半身にはブレストプレートメイルを着用して剣を帯びていた。
蛇の舌を出しながら僕とミレーヌを射殺さんとばかりに睨んでいる。
「貴様たち何者だ!!」
「ユキナ。お前を倒してこの城と街を救う者だよ!!」
「ボクはミレーヌ。多分伝説の勇者!!」
「勇者だと!?寝言は大概にしろ!!勇者はマリータ只一人。マリータが死んだ今勇者が存在する筈がない!!」
そのセリフを聞いて僕とミレーヌの顔色が変わった。
マリータというのはミレーヌのお母さんの名前。
マリータ・フォリ・アリストラード。
ミレーヌが幼い時に亡くなったミレーヌのお母さん。
「ボクのお母さんを知ってるの?」
「……まさか貴様、マリータの娘か。おのれマリータめ!!自分が死ぬときに勇者の光を娘に託すとはな!!だが貴様はまだ覚醒して間もないようだな!!我が名は大魔導士ベスパル。貴様を殺して魔王様の御前にその首を晒してやるわあ!!」
そう言ってベスパルは杖を振りかざす。
途端に風の鎌、シクルウインドが繰り出される。
シクルウインドがミレーヌに迫った。
僕はミレーヌを庇おうと盾を掲げるが風の鎌は盾をすり抜けた。
「ミレーヌ!!」
「ボクは大丈夫!!ユキナはあいつに攻撃を集中して!!」
ミレーヌの身体が光り風の鎌を弾き飛ばす。
それを見届けると同時に僕のロングソードが手薄になったベスパルの身体に突き刺さるがベスパルの着た鎧に弾かれた。
「そんなナマクラな剣が通用するものか!!」
そう言ってベスパルが剣を抜き僕に切りかかる。
僕は慌てて後ろに飛びのいてかわし、手に持ったロングソードを身構えた。
僕の持つロングソードはフレーベル国で一番のガルム武具店の店主が作り上げた魔法の剣で、けして安物ではないが上には上があるという事か。
ベスパルの着る鎧は高度な防御魔法が付与されていて僕の剣では歯が立たない。
「どけ小僧邪魔だ!!」
ベスパルが風の槍、ウィンドジャベリンを何本も作り出し僕に向かって放つ。
クヌートでもヴァルキリージャベリンという戦乙女の槍を3本しか出せないのに、ベスパルはその槍を連射してきた。
僕は慌てて盾を構えるが数発防いだだけで盾が破壊されて床に叩きつけられる。
「死ね勇者ミレーヌ!!」
僕を倒したと誤認したベスパルがミレーヌにウィンドジャベリンを放つ。
「うわああああ!!」
風の槍がミレーヌの身体に突き刺さる寸前、勇者の光が防御壁となって防ぐ。
だが数が多すぎる。
光の防御壁に風の槍が突き刺されひびが入った。
ミレーヌを守る光の障壁が破壊されて、ミレーヌの身体が宙に舞い尖塔から吹き飛ばされる。
いくらミレーヌに勇者の加護があっても、20mはある尖塔から落下したら只ではすまない。
「ミレーヌ!!」
僕は宙に舞うミレーヌの手を掴みもう片方の手で尖塔の壁にしがみついた。
僕の持っていたロングソードが尖塔から落下して地面に突き刺さる。
片手でミレーヌを、もう片手で尖塔にしがみつく姿を見てベスパルが楽しそうに蛇の舌をシュルシュルと伸ばす。
「いい格好だな小僧。その娘の手を離せばお前の命だけは助けてやっても良い」
「ふざけるな!!そんな取引に応じる物か!!」
ミレーヌはベスパルのウィンドジャベリンを食らい外傷こそ防げたようだが衝撃で気絶していた。
僕が手を離せばミレーヌは20m下の地面に叩きつけられる。
「なら一緒に死ぬがいい」
そう言ってベスパルは蛇の口から炎を吹き出して僕の手を焼く。
「ぐうああっ!!」
ミレーヌを片手に掴んだままで這い上がる事も出来ず、僕は手を焼かれる痛みに叫んだ。
このままミレーヌと一緒に死ぬのか。
そんなの嫌だ!!ミレーヌは絶対に助ける!!
例え腕が焼け落ちてもミレーヌを助けるんだ!!
激痛に耐えて歯を食いしばり何とか耐えていると、急に手の痛みが消えて行くのを感じた。
見ると手が光に包まれていて火傷を負っていたはずの手が綺麗に治っていく。
それと同時に僕の脳裏にミレーヌによく似た女性の姿が映し出された。
(マリータさん?)
初めて見た人なのに僕はその女性がミレーヌのお母さんだと気が付いた。
尖塔までは狭い石造りの回り階段が続いていく。
僕が先頭でミレーヌと一緒に登っていく。
「ユキナ、ボク身体が熱いよ。この先に邪悪な者がいるのがわかる」
「そいつは尖塔の一番上にいるの?」
「間違いないよ。ボクの心にそいつの闇の感情が渦巻いてるのがわかるもん」
そう言ってミレーヌが興奮したように僕の後ろで言う。
もしミレーヌが伝説の勇者なら、今のミレーヌは銀級か金級に覚醒したと思う。
冒険者の等級は下から銅・青銅・鉄・鋼・銀・金・白金がある。
勇者に覚醒する前のミレーヌはもうすぐ鉄級になるという所だったのに、鉄と鋼をすっ飛ばして一気に銀か金にまで到達した事になる。
銀級は冒険者ギルドでも最上位グループの一人になり、金なら国家規模のレベルになる。
伝説の勇者なら白金という伝説クラスの実力者になる。
僕はまだ青銅級、もうすぐ鉄級になれるだろうか。
はっきり言って釣り合わない。
この戦いが終わったらミレーヌには国どころか世界中の王侯貴族から縁談が殺到するかもしれない。
勇者との間に生まれた王子という最上級の箔がつくからだ。
ミレーヌはその時も僕と一緒にいてくれるだろうか?
僕はミレーヌを世界一愛している。
たとえ今は釣り合わなくても必ずミレーヌに相応しい男になってやる。
でも不安なのは確かだ。
「こんな時に不謹慎だけど聞いていいかな?」
「ユキナがボクに釣り合うかどうか、なんて聞いたら怒るよ」
僕の考えと不安はミレーヌにはお見通しだった。
流石僕の恋人だと思う。
同時に僕の後ろからミレーヌが怒ってるという気迫が感じられる。
「ユキナ。ちょっと止まって」
「え、どうしたのミレーヌ?」
僕は階段を駆け上がる足を止めてミレーヌに振り向いた。
それと同時に僕の胸に身体を密着させて抱き着くミレーヌの顔が目の前に迫る。
その顔は怒ってるようにも悲しいようにも見えた。
「ボク、他の事なら我慢できるけどユキナにそんな女だって思われるのは許せない」
そう言って僕に抱き着いたミレーヌは僕にキスをした。
僕もミレーヌを抱きしめて舌を入れてディープキスをする。
僕とミレーヌの舌が絡み合いとても幸せな心で胸が一杯になった。
「ボク、ミレーヌ・フォリ・アリストラードはユキナを愛しています。どんなに豊かな時も貧しい時も不幸の時もボクは一生、生涯、死ぬまでユキナだけを愛しています。これでもまだ不安?」
「ごめん。僕もミレーヌをずっとずっと愛しています」
「今度そんな事思ったら、ボク当分口きいてあげないから」
そう言って微笑むミレーヌ。
僕は馬鹿な事を思った自分を恥じた。
世界で一番愛してる恋人を疑うなんて、恥知らずにも程がある。
「行こうミレーヌ。この先にいる悪党を倒してルクス城のみんなを救うんだ」
「うん♪ぱぱぱっと倒しちゃおうね」
二人で頷いて僕達は尖塔の扉を開いた。
途端に激しい炎が僕達を包むがミレーヌの身体から溢れた光が炎を吹き飛ばす。
「ギャアアアア!!」
僕達に魔法を放ったであろう怪物に炎を逆転してその身体を焼く。
その炎はすぐに消えたが怪物の自尊心は傷つけられた。
まさに異形の怪物と言うべきだろう。
人型の怪物の顔は蛇で胴体は鱗で覆われている。
手には杖を持ち上半身にはブレストプレートメイルを着用して剣を帯びていた。
蛇の舌を出しながら僕とミレーヌを射殺さんとばかりに睨んでいる。
「貴様たち何者だ!!」
「ユキナ。お前を倒してこの城と街を救う者だよ!!」
「ボクはミレーヌ。多分伝説の勇者!!」
「勇者だと!?寝言は大概にしろ!!勇者はマリータ只一人。マリータが死んだ今勇者が存在する筈がない!!」
そのセリフを聞いて僕とミレーヌの顔色が変わった。
マリータというのはミレーヌのお母さんの名前。
マリータ・フォリ・アリストラード。
ミレーヌが幼い時に亡くなったミレーヌのお母さん。
「ボクのお母さんを知ってるの?」
「……まさか貴様、マリータの娘か。おのれマリータめ!!自分が死ぬときに勇者の光を娘に託すとはな!!だが貴様はまだ覚醒して間もないようだな!!我が名は大魔導士ベスパル。貴様を殺して魔王様の御前にその首を晒してやるわあ!!」
そう言ってベスパルは杖を振りかざす。
途端に風の鎌、シクルウインドが繰り出される。
シクルウインドがミレーヌに迫った。
僕はミレーヌを庇おうと盾を掲げるが風の鎌は盾をすり抜けた。
「ミレーヌ!!」
「ボクは大丈夫!!ユキナはあいつに攻撃を集中して!!」
ミレーヌの身体が光り風の鎌を弾き飛ばす。
それを見届けると同時に僕のロングソードが手薄になったベスパルの身体に突き刺さるがベスパルの着た鎧に弾かれた。
「そんなナマクラな剣が通用するものか!!」
そう言ってベスパルが剣を抜き僕に切りかかる。
僕は慌てて後ろに飛びのいてかわし、手に持ったロングソードを身構えた。
僕の持つロングソードはフレーベル国で一番のガルム武具店の店主が作り上げた魔法の剣で、けして安物ではないが上には上があるという事か。
ベスパルの着る鎧は高度な防御魔法が付与されていて僕の剣では歯が立たない。
「どけ小僧邪魔だ!!」
ベスパルが風の槍、ウィンドジャベリンを何本も作り出し僕に向かって放つ。
クヌートでもヴァルキリージャベリンという戦乙女の槍を3本しか出せないのに、ベスパルはその槍を連射してきた。
僕は慌てて盾を構えるが数発防いだだけで盾が破壊されて床に叩きつけられる。
「死ね勇者ミレーヌ!!」
僕を倒したと誤認したベスパルがミレーヌにウィンドジャベリンを放つ。
「うわああああ!!」
風の槍がミレーヌの身体に突き刺さる寸前、勇者の光が防御壁となって防ぐ。
だが数が多すぎる。
光の防御壁に風の槍が突き刺されひびが入った。
ミレーヌを守る光の障壁が破壊されて、ミレーヌの身体が宙に舞い尖塔から吹き飛ばされる。
いくらミレーヌに勇者の加護があっても、20mはある尖塔から落下したら只ではすまない。
「ミレーヌ!!」
僕は宙に舞うミレーヌの手を掴みもう片方の手で尖塔の壁にしがみついた。
僕の持っていたロングソードが尖塔から落下して地面に突き刺さる。
片手でミレーヌを、もう片手で尖塔にしがみつく姿を見てベスパルが楽しそうに蛇の舌をシュルシュルと伸ばす。
「いい格好だな小僧。その娘の手を離せばお前の命だけは助けてやっても良い」
「ふざけるな!!そんな取引に応じる物か!!」
ミレーヌはベスパルのウィンドジャベリンを食らい外傷こそ防げたようだが衝撃で気絶していた。
僕が手を離せばミレーヌは20m下の地面に叩きつけられる。
「なら一緒に死ぬがいい」
そう言ってベスパルは蛇の口から炎を吹き出して僕の手を焼く。
「ぐうああっ!!」
ミレーヌを片手に掴んだままで這い上がる事も出来ず、僕は手を焼かれる痛みに叫んだ。
このままミレーヌと一緒に死ぬのか。
そんなの嫌だ!!ミレーヌは絶対に助ける!!
例え腕が焼け落ちてもミレーヌを助けるんだ!!
激痛に耐えて歯を食いしばり何とか耐えていると、急に手の痛みが消えて行くのを感じた。
見ると手が光に包まれていて火傷を負っていたはずの手が綺麗に治っていく。
それと同時に僕の脳裏にミレーヌによく似た女性の姿が映し出された。
(マリータさん?)
初めて見た人なのに僕はその女性がミレーヌのお母さんだと気が付いた。
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