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婚約者の指導
しおりを挟むシルフィは、褥教育を受けていない。
十五歳で社交会入りすれば、王国では大人とみなされるというのに。
他の王妃教育は厳しいものなのに、それだけはまるで禁忌のように誰も触れなかった。
「フィー、今日から君は私を受け入れる準備をする。いいね?」
「は、はい……リュクシアス様、私、まだなにも知らなくて」
「かまわない。全て私が教えてあげる」
リュクシアスはベッドに横たわるシルフィのブラウスのボタンを、器用に外していく。
本当に、いいのだろうか。こんなことを、して。
戸惑う心とは裏腹に、シルフィは抵抗ひとつせずにじっとしていた。
「綺麗な色。可愛いね、フィー」
ブラウスを脱がされて、下着を外される。恥じらう暇もなく脱がされて、シルフィの白い素肌が露わになった。
まだ時刻は昼下がり。明るい部屋の中で、素肌のままベッドに横たわるなんて、しかもそれをリュクシアスに見られているなんて、信じられないことだった。
胸を手で隠そうとすると、リュクシアスが「動かないで」と優しく言う。
その声は優しいのに、有無を言わせない強い響きが秘められている。
「恥ずかしい、です……」
「そうだね。でも、我慢していて。フィーは、私の言うことがきけるだろう?」
「で、でも……」
「フィー、頑張れるね? 君は、王妃に。私の花嫁になるのだろう」
「は、はい……」
頑張らなくてはいけないと思う。
リュクシアスの声を聞いているだけで、まるで魔法にかけられたかのように。
彼の言葉が正しいのだと、その言葉が全てだと感じてしまう。
リュクシアスの指が、シルフィの薄く色づいて小さい乳首を撫でる。
くるくると円を描くように優しく撫でられると、不思議な苦しさを感じた。
見られているだけでも恥ずかしいのに、触れられているなんて。
「リュクシアス、様、恥ずかしい……だめ、です……っ」
「駄目ではない。これは、勉強だよ、フィー。君の得意な、ね。乳首は性感帯だ。触れられると、気持ちよくなることができる」
「で、でも」
「それに、定期的に触れていれば、胸も大きくなる」
「……リュクシアス様は、大きいほうが、好きですか?」
「私は君が好きだよ。胸の大きさなどは、どちらでもいい」
甘い中低音の声で好きだと言われると、体緊張がほぐれていく。
リュクシアスはシルフィのことを好きだと言ってくれる。好きだから、触れてくれる。
そう思うと、このはしたない行為に喜びがあるような気さえしてくる。
「舐めてあげるね、フィー。大丈夫、きちんと気持ちよくなれる」
「え……あ……っ」
舌が、僅かに膨れた乳首に軟体動物のように絡みついた。
上下に弾くように舐られて、優しく包み込まれる。
片方の胸は、リュクシアスの大きな手の中で揉まれて、ぐにぐにと形を変えていた。
違和感しかなかったのに、熱い舌で包み込まれた途端に、体に走る甘い切なさがある。
シルフィはシーツを掴んだ。そうしていないと、体がどこかに飛んでいってしまうような不安定さがある。
「ふ、ぁ……」
「いい声。可愛い。我慢しないで、聞かせて」
「ゃ、だ……め、です、こんな……」
「私が聞きたいと言っているんだよ、フィー。たくさん気持ちよくしてあげる。だから、可愛く、鳴いて」
舐られた乳房が、てらてらと唾液で光っている。
膨れた胸の飾りを、リュクシアスは指先でかりかりと引っ掻くようにした。
「ぁ……っ、あ……ぅ、だめ、りゅ……っ、ぁ……」
「乳首、気持ちいい? いい子だね。はじめて触られたというのに、よく、馴染んでいる」
このぞくぞくは、皮膚の下を快楽が走り回るような感覚は、リュクシアスの魔力を受け入れているせいだ。
感覚が鋭敏になっている。リュクシアスの指や舌が体に触れると、触れられた場所から蕩けていくようだった。
「ね……っ、もぅ、や……っ、変なの、私、へん……」
「変ではないよ。私が、そうしている。気持ちがいいね、フィー」
「胸、変です、リュ、あ、す、さま……っ、いや……っ」
「違うよ、フィー。嫌ではないよね。乳首を舐められると、気持ちがいい。ほら、言って?」
「ゃだぁ……っ」
どうして意地悪を言うのだろう。
もうすでに、恥ずかしくてどうにかなってしまいそうなのに。
潤んだ瞳でリュクシアスを見あげる。
リュクシアスはシルフィーの両方の両方の乳首を指で挟んでこねるようにして虐めながら、優しく目を細める。
「フィー。私のいうことが、聞けるね。私はどちらでもいいんだよ。君が悪い子であれば、私は君をしつける必要がある。素直に言うことを聞いてくれれば、ご褒美をあげる」
「ごほう、び……?」
「あぁ。どちらがいい? フィーが、選んで。こうされるのは、好き? それとも、嫌、かな」
「……っ」
怒られたくない。それはきっと、怖いことだ。
褒められたい。ご褒美のほうがいい。
熱に浮かされるように、シルフィは思う。胸が、ずっとドキドキしている。
膨れた乳首を摘まれて優しくこりこりねじるようにされると、腰が浮いた。
「ぁ、あっ、りゅあ……っ」
「フィー、言って。言えるよね。乳首、気持ちがいい?」
「ん、んー……っ、あ、ぁぅ……っ、あ……」
「フィー?」
「ち、くび、いい、です……っ、きもち、い……すき……りゅあ、好きぃ……っ」
恥ずかしくて、仕方ないのに。
唇から、はしたない言葉がこぼれ落ちる。シルフィは顔を真っ赤にして俯いた。
リュクシアスの唇が、シルフィのそれに優しく重なる。
「いい子だね、フィー。これは、気持ちがいいこと。きちんと覚えるんだよ」
キスをされた。褒められた。優しく、してもらった。
なんだか、胸がいっぱいになる。これは、喜び。歓喜で、震える。
理性ではどこかがおかしいことを理解している。
けれど、熱にふやけた頭では、リュクシアスの言葉だけが全てになってしまうようだった。
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