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あなたを忘れたくない
しおりを挟むリュクシアスの尖った舌がシルフィの陰核をちろちろと舐る。
指が蜜壺をぐちゃぐちゃとかき回し、シルフィは何度目かの絶頂を迎えた。
多くの目が、シルフィを見ている。それはリュクシアスの魔法が作り上げた、彼の無数の瞳だ。
それが今までのシルフィを余すところなく見ていた。
だからリュクシアスはシルフィがファウストに魔力を注がれたことを知っていた。
ジェズと二人きりで話したことも、この場所に連れてこられたことも知っていたのだ。
シルフィは記憶を辿る。淫靡な夢を見てしまい、リュクシアスの名を呼びながら己の体に触れた夜もあった。
彼の執着に戸惑い、どうしていいかわからずに涙をこぼすこともあった。
ずっと、見られていた。彼の支配下におかれていた。シルフィはずっと、リュクシアスの手の上で操り人形のように踊り続けていた。
その支配が──シルフィに、更に淫靡な快楽を齎した。
「りゅ、あ、うれし、ぃ……っ、もっと、ほしがって、わたしの全部を、あなたにあげる、だから……」
「あぁ、フィー。愛しているよ。欲しがる? それは間違っている。君の全ては私のもの。君が生まれた瞬間から、そう決まっていたんだ。誰にも渡さない。君の髪の一本も、爪の先まで私のもの」
「うん、嬉しい……あなたのもの、わたしは、あなたの……っ」
リュクシアスの両手がシルフィの足を割り開く。純白のドレスは脱がされることがないままに、彼の強直がぴたりと蜜口にあたる。
一気に貫かれると、頭の中でパチパチと火花がはじけた。
体の奥に、リュクシアスの昂りがある。
それがぴたりと最奥に触れて、どくどくと脈打っている。彼の熱と、生命の力強さを感じる。
いつもそこにあるのは果てのない気持ちよさだけだった。
だが今は違う。
シルフィの瞳からぼろぼろと大粒の涙がおちる。
愛している。愛していた。アストリウスだけを心の底から。彼が欲しくてほしくてどうしようもなくて。捨てられても裏切られても愛情の炎が消えないぐらいに、彼を渇望していた。
こんな風に愛されて、繋がることができて──幸せだ。
普通ではない。歪んでいる。壊れている。
それでも、確かに、そこには命ごと焼き付くすような愛がある。
「ん、ぁ、あ、あ……っ、りゅあ、りゅ、ぅ、あ……っ、すき、りぅすさま、あなたが、すき……っ」
「あぁ。私も愛している。リリス、フィー。君を、君たちを、愛している」
「ぅん……っ、あ、ああ、はげし……っ」
シルフィの体が逃げないように両腕を掴まれて、がつがつと腰をゆすられる。
リュクシアスの皮膚がシルフィにぶつかり、ばちゅんと音を立てた。
昂りがごりごりと、膣壁を抉るように動く。粘膜を擦られ、最奥をどちゅりと穿たれる。
その度、シルフィは髪を乱しながら、甘い泣き声をあげた。
嵐の音が耳に響いていたが、今はそれも聞こえない。
水音と、互いの息遣い、そしてリュクシアスの甘やかな声だけがシルフィの全てになる。
「イけ。何度でも、達していい。フィー、ほら、イけ。イって。もっと、絶頂に歪む君の顔を見せて」
「ぅん、ぃく、また、わたし……っ、いく、りゅ、あ、あ……っ」
ごつごつと最奥を突き上げられると、シルフィの体は緊張したように強張る。
背を弓なりに反らせて、激しく達してしまう。
息つく間もなく容赦なく攻め立てられて、シルフィははくはくと息をついた。
終わらない責め苦の中で、シルフィは目を細めて、唇を艶やかに笑みの形にする。
「りゅあ、きもち、い?」
「あぁ。気持ちがいいよ。君を好くできているのが私だと思うと、たまらなく、興奮する」
握り締めていたシルフィの腕を話して、リュクシアスはシルフィの腰を抱えて起こした。
膝の上に乗せて、抱きしめる。
シルフィはリュクシアスの首に腕を回して、甘えるように頬を彼に擦り付ける。
自重でさらに深いところにリュクシアスが埋まる。足先がしびれるような快感に、シルフィは甘い息を吐き出した。
「あ、あ……っ、りゅあ、あ……っ、もっと、して、いっぱい、おく、きもち……っ」
「ふふ、あはは……可愛いね、フィー。ずっとイっている。君の中が震えて私を締め付けて、こんなに、媚びて……一度出そうか。孕んで、フィー。私と君の子はきっと、力の強い魔力を持った子になる。王国も安泰だね。誰もきっと、逆らえない」
「ぅん……うん、りゅあ、そうね、きっと、そうなる」
それはかつてリリスとアストリウスが果たせなかった望みだ。
「愛して、る、りゅあ……私を、探してくれて、ありがとう……」
彼がいなければシルフィはどうなっていただろか。
魔力がない者が大多数を占めるこの国で、かつてリリスが生きた時代の時のような魔導に精通したものはいない。
被虐の衝動を抑えられずに、己も、そして誰かも、ひどく傷つけてしまっていたかもしれない。
リュクシアスがいたから──シルフィは、彼の愛の牢獄の中で、現と夢のあわいを揺蕩うように生きていられたのだ。
「……っ、シルフィ……っ、私の、シルフィ……っ、俺の、リリス」
リュクシアスの見開かれた瞳にはじめて、激しい激情が灯る。
一つに溶け合うほどに口づけをして、体を強く重ね合わせる。
重なる皮膚から彼の苦悩や悲しみや怒りややるせなさや、そして深く重い愛情が、シルフィの中に入り込む。
「ふ、ぁ、ぅ……りゅあ、きもち、い、すき、あなたが、すき……ずっと、一緒にいて、もう、離さないで」
「離さない、フィー。死が二人を分かとうとも、君の魂は、俺のもの。君は、記憶に苦しめられる必要はない。全て忘れろ、シルフィ。君はシルフィ。私の愛しい婚約者」
シルフィの体に、黒い茨の蔓が巻き付いていく。
再び隷属の印を刻みつけて、被虐の印を抑えつけるつもりだ。リリスの記憶ごと、消え去ってしまう。
「嫌……っ」
シルフィはリュクシアスの支配を、己の魔力で打ち砕いた。
今のシルフィにはリリスの力と記憶がある。隷属の魔法を打ち砕くことができるようになっていた。
「……何故、拒絶をする?」
リュクシアスの眉が寄った。そこにあるのは怒りというよりは困惑だ。
シルフィはその瞳を覗き込んで、彼を安心させるように微笑んだ。
「覚えていたいの。全てを。あなたのことを、忘れたくない。あなたが私を満たしてくれる。あなたが私を守ってくれる。だから、大丈夫。私にも、あなたを守る力がある」
「……シルフィ」
隷属の印が光り輝く。それは禍々しい赤ではなく──美しい青色へと色を変えていく。
愛で満たされ、その呪いと共に生きる決意を果たし、呪いを制御し己の力へと変えることができる。
この力は、リュクシアスを守るため、そして彼と共に生きるためにある。
「信じて、リュア。私には、あなただけ」
「……あぁ、シルフィ」
リュクシアスの瞳から涙が落ちる。
シルフィは唇をつけて、その涙をすする。髪を撫でて、額を合わせた。
彼の──抱えてきた孤独を、優しく包み込むように。
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