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シャーロット様、アルバイトを探す
しおりを挟む今日は初日ということで、ルイ先輩は優しかった。
水になれる練習と、水に顔をつける練習。
それから、ビート板という浮遊する板につかまって、プールを十往復するだけで許してくれた。
休憩を挟んで、一時間半ほど。
私たちがルイ先輩に指導を受けている間、楓は色々な泳ぎ方で、何往復も泳いでいた。
まるで魚みたいだ。
その姿はとても美しかった。
泳ぐというのは、良いわね。
走るよりは体が痛くならないし、それに、なんとなく楽しい。
私も楓のように泳げるようになりたいわね。
三月は水が苦手らしく、私よりも大騒ぎしながら、ルイ先輩に捕まったり助けを求めたりしていた。
これはルイ先輩にかまってほしくてわざとそうしているわけではないらしく、帰り道ややうんざりした顔で「プールは楽しいけど、今日はブーメランパンツの夢を見そう。なんであんなに面積が少ないブーメランなの。そんなに腹筋を自慢したいわけ?」とぶつぶつ文句を言っていた。
私と三月は、駅前で別れた。
三月は「疲れたから帰る。果林が一緒にご飯食べに行ってくれるなら別」と言っていたけれど、せっかく運動をした後に、三月と一緒にカロリーを摂取するのはいけない。
魅力的な誘いだったけれど私はそれを断った。三月は「果林はダイエット中だもんね。成功したらアイス食べようね」と言って、断られてもあまり気にしていないようだった。
今日はプールの他にも目的がある。アルバイトである。
財布の残額が、千円を切っている。
これは部活動最中に飲むために、ペットボトルのお茶を学内の自動販売機で何度か購入したためである。
「お母様は男に頼らずに生きようとしているのだから、私のお金は私で稼がないといけないわ。美容院に行くためにも」
新しいお洋服も欲しいし。
靴やバッグなんかも欲しいし。
私はコンビニエンスストアに入って、アルバイト情報誌を手にしてそそくさと出てきた。
あの場所には誘惑が溢れている。長居するのはよくない。
肉まんとか、食べたくなっちゃうし。
駅前のベンチに座って、私はアルバイト情報誌に目を通した。
多分そろそろ、サリエルが来る頃合いだ。
サリエルはきちんと教師の仕事をしているらしく、私とは帰る時間が違う。
今日は残業をして明日のプリントを作るとか言っていた。すごく人間っぽい。
仕事が終わったら私のところに戻ってくる。時刻は午後五時半。
この季節、この時間はまだ真昼のように明るい。
「……果林さん。アルバイト、探してる?」
私の予想に反して、私に話しかけてきたのは紅樹先輩だった。
今帰るところなのだろうか、制服姿だ。紅樹先輩の自宅を私は知らないけれど、大抵の生徒はこの駅をしようするので、たまたま通りかかったのだろう。
私は顔を上げて、私の前に立っている紅樹先輩を見上げた。
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