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ラシェル、新しい仕事に目覚める

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 私はお母様やお姉様たちのお洋服を、家事をほとんどする必要がなくなってしまったので、余った時間で縫い直すことにした。
 お母様や私やお父様のお洋服をほどいて布に直して、合う色を探してスカートやお洋服のサイズを変えていく。

 私の新しい家族はとても優しくて、みんな良い方々だ。
 大柄な女性用のサイズの可愛いお洋服というのは少ないので、体にピッタリ合うサイズのお洋服を着ていただきたいと思う。

 部屋にこもってお洋服を縫う私のことを、お母様やお姉様たちは心配してくれたけれど、私は楽しかった。
 綺麗な格好をしてお外に出て遊ぶよりも、お部屋でお洋服を縫う方が性分にあっている。

「そうだ、みんなのお洋服が縫い終わったら、これをお仕事にしましょう」

 みんなの役に立ちたいけれど、私には他にできることもない。
 お金を稼ぐ方法があるとしたら、縫い物ぐらいだろう。

 まずはお母様たちのお洋服を仕上げて、仕上がりを見ていただこう。
 素敵に作ることができればきっと、お仕事にすることもできるかもしれない。

 新しい家族と暮らし始めたある日のこと。
 三人のお洋服がもうすぐで仕上がるころに、お城から街へとおふれがあった。

 どうやら王子様が花嫁を探しているらしい。
 王子様は二十歳になる今まで誰とも結婚をしたがらず、困り果てた家来たちが国中の若い娘をお城に呼び寄せてダンスパーティーを開いて、結婚相手を探すのだという。
 お手紙を受け取った私は、嬉々としながらお姉様やお母様にお手紙を見せた。

「お母様、お姉様たち! お城で王子様が花嫁を探しているそうですよ! お洋服、縫い直していて良かった……! もう少し手を加えて、三人分のドレスをつくりますね、私!」

 新しい家族との穏やかな生活に慣れてきたけれど、今だなにも恩返しできていない私は、やっと役に立てるとはりきっていた。
 心根の優しく美しいお姉様たちなら、きっと王子様に選ばれるだろう。
 少しでも役に立てるように、素敵なドレスを仕立てなければいけない。

「ちょっとまって、ラシェルちゃん! ラシェルちゃんがダンスパーティーに参加するんじゃないの?」

「私などは良いのです、お姉様たちが王子様に選ばれてくれたら、こんなに嬉しいことはありません」

「待て、ラシェル」

「ジョルジュと僕が、ダンスパーティーに?」

「ええ! すごく素敵だと思います、お姉様たちのドレス姿!」

 ジョルジュお姉様は、黒のシックなドレスにしましょう。
 だってジョルジュお姉様にはもうすでに類まれなる肉体美があるのだから、ドレスなんて飾りだ。
 リュシアンお姉様には青いシンプルなドレスにしましょう。
 すらりとした長身のお姉様はとってもスタイルが良いので、飾り気のないドレスの方がきっと似合うわね。

「今日の夜までに、素敵なドレスをつくりますね。だから待っていてくださいね」

 私が言うと、三人は顔を合わせてなにやら相談し始めた。

「……どうしようかしらね、ダンスパーティーに行くことになったわよ」

「ラシェルの願いだ、無碍にはできない。あの迷惑王子め、余計なことを……」

「けれど、僕たちが参加することになって良かったんじゃないかな。ラシェルの姿を一目みたら、ラシェルを花嫁に選ぼうとするよ、きっと。ラシェルは気立てが良くて美しいからね。僕たちの妹を、とられるなんて耐えられない……!」

 ひそひそ声で何やら話し合いをし終わった三人は、私にくるりと振り向いた。

「ありがとうラシェル、ドレス楽しみにしているわよ。ラシェルはお留守番をしていてね、危ないから、外に出てはいけないわよ」

 ファブリスお母様に言われて、私は嬉しくなって大きく頷いた。
 急いでドレスを仕上げましょう。きっと素敵だわ。


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