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遺跡探索と雪解けの春
媚薬の効果でとける誤解 2
しおりを挟むフィオルド様の婚約者になってから、つまり生まれてから今までで、フィオルド様にこんなに優しくしてもらったのははじめてだ。
フィオルド様にというか、気が弱い上に悪女顔のせいで私は親しい友人なんて一人もいないので、お父様以外の男性に優しくしてもらったのもはじめてなのよ。
体はじんじん痺れているけれど、心にもじんわりと喜びが溢れてくる。
優しくされるの、嬉しい。好き。
「体、あつくて、……おかしい、です。触られているところ、全部、気持ちよくて」
フィオルド様の私を抱き上げて下さっている大きな手が、私のものとは違うしっかりとした体が、ただ私に触れているだけなのに、気持ち良い。
私はおかしくなってしまったのかしら。
淫らでいけないことだと思うのに、フィオルド様に体を擦り付けたくなってしまう。
「……リリアンナ、これはアルラウネの粘液だ。獲物を捕食するため、媚薬効果のある粘液を、相手の粘膜から体内に注ぎ込む」
フィオルド様が、私の小さな胸の薄桃色の飾りを、指先でぐり、と押した。
突起の周りの色づいている部分をぬるりと撫でられる。
ぬめりけを帯びた粘液が、私の胸をてらてらと汚している。
たったそれだけのことなのに、全身に落雷が落ちたようなびりびりとした刺激が走り抜けていく。
「っ、あぁあ、ぁっ、や、ゃああ……っ」
フィオルド様に縋り付いて、私は甘い声をあげた。
――なんなの、これ。
胸を触られただけなのに。男性に胸を触られるのははじめてだけれど、どうしてこんなに気持ち良いの。
「だめ、フィオ、さま、だめっ、変になっちゃ……っ」
「……っ、……感覚が、鋭敏になっている。媚薬の効果のせいだな」
「びやく……?」
なんのことかわからないけれど、くるくると確かめるように乳輪に触れられるだけで、体がばらばらになるぐらいに気持ちよくて、何も考えられない。
「知らないのか?」
「わからな……ゃ、ああ……っ、むね、はじめて……なのに、こんな……っ」
「はじめて……?」
フィオルド様が俄かに目を見開いた。
まさか、とでも言いたげな表情だった。
もしかしてフィオルド様、私を経験豊富な女とでも思っているのかしら。そんなわけないのに。
「こうして、触れられるのははじめてなのか、リリアンナ」
「ぅん、ん……っ、はじめて、です」
そもそも、胸を触られると気持ち良い、ということさえ知らなかったのよ。ついさっきまで。
「それは……いや、まさか、そんな」
フィオルド様が何やら深刻な顔でぶつぶつ言っている。
独り言を呟きながらも、私の胸に触れている手が、私の小さな胸を包み込むようにしてもみしだきはじめる。
フィオルド様の硬い皮膚に、胸の飾りが擦られるたびに、指先まで甘い痺れが這い回って、私はどうしようもなくて首を振った。
「ふぃおるどさまぁ……っ、そんなに、したら……っ、ぁ、あ……っ」
「……リリアンナ。お前には、恋人がいるのではないのか」
「いませ……っ、やだ、ぃやあ……っ、ふぃお、さまぁ……も、だめ、だめなの……」
フィオルド様は冷静に私に尋ねてくるけれど、手を止めてくれない。
胸をこねたり、乳首を摘まれると、触られているのは胸なのに、どういうわけか下腹部が重たくて、きゅん、と疼いた。
「っ、あ、あ……あん、んん……っ」
「……浄化の光よ」
高いところまで登っていく感覚がある。
けれど、あたたかい光が私を包んだ瞬間、それはストンとおさまってしまった。
目の前にぶらさがっていたご褒美を、唐突に奪われたような感じだ。
フィオルド様が、まるで何もなかったかのように、私の衣服を丁寧に直してくださる。
眉間に深く皺が寄っていて、とても怒っているようにも見えた。
いつも通りのフィオルド様だ。
優しくしてもらって浮かれていた私が、愚か者に感じられる。
もしかして、何か変だったのかしら。ずっと、体はおかしかったけれど、フィオルド様に触られて気持ち良くなってしまって、淫らな女だと呆れられたのかしら。
「っ、ごめんなさい、私、その、ごめんなさい……」
急に冷静になった私は、青ざめながら謝った。
フィオルド様は、私の頬を濡らしている涙を、指先で拭ってくださる。
それから、苦しそうに目を伏せた。
「……リリアンナ。私は……」
「フィオルド様……?」
「私は、お前のことをずっと、誤解していた」
悔いるように、フィオルド様は言った。
どういうことか分からず首を傾げる私を、フィオルド様はきつく抱きしめてくださった。
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