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遺跡探索と雪解けの春

はじめての口付け 1

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 きちんと結いあげていたのに、何度も魔物に捕食されそうになったせいで乱れた髪に、フィオルド様が優しく口付けてくださる。
 ふわふわして気持ち良いのに、体は泣き出したいぐらいに切ない。

「リリィ、こちらを向け」

 フィオルド様に言われて振り向くと、覆い被さるようにして唇が重なった。
 啄むようにして幾度か口付けられる。

 触れ合う唇が柔らかく、少し湿っていて、あたたかい。

 キス、されてる。

 フィオルド様に、私ーー。

 そう思うと、体温がさらに上がっていく。
 フィオルド様の舌が、私の唇をぺろりと舐めた。

「ふ、ぁ、」

 ぬらりとした軟体動物のような舌は熱くて、唇をなぞられるだけで、体の奥が切なく疼く。

 どうして良いのか分からなくてきつく閉じた唇の狭間を、ノックするようにつつかれる。
 舌先が唇の狭間に割って入ってくる。

「ん……ぅ、ぁ」

 これは、どうしたら良いのかしら。
 口を開けた方が良いのかしら。でも、どうして。

「ふぁ、ん、んぅ」

 思わず唇を薄く開くと、舌が口の中に入ってくる。
 口付けとは、唇を触れ合わせることだと思っていた。

 でも、これは違う。
 私の小さな口の中に、フィオルド様の大きな舌が押し込まれる。

 自分ではない異物が口の中を蠢く感触は、まるで体の内側を優しく撫でられているようだ。
 剥き出しの神経に直接触れられて、愛撫されているみたいで、全身にぞわりとした悪寒に似た何かが這い回った。

「ん、ん……ぁ、ん……」

 口蓋を舌先でなぞられて、奥に引っ込めていた舌を、優しく絡め取られる。
 くちゅりと舌が絡まり、粘膜が直接触れ合う。

 とろりとした甘い何かが、触れ合う粘膜から私の体に注がれるのがわかる。
 それは私の指先まで、染み渡るように満たしていく。

「ん……」

 閉じた瞼から伸びるまつ毛を濡らしていた涙が、はらりと頬を伝って落ちる。

 ぬるぬると私の舌を舐めていたフィオルド様のそれが、一度私から離れた。
 ちゅ、と音をたててもう一度優しく口付けると、フィオルド様は私を覗き込む。

 頬を上気させて、口を開いたままはあはあと呼吸を繰り返しながら、私も薄く目を開いた。
 フィオルド様の白い頬も、薄く色づいている。

 切なげに寄せられた眉や、潤んだ瞳が、とても艶やかだった。

「リリィ、……もっと、したい」

 少しだけ声が掠れている。
 吐息と共に密やかな声音で囁かれて、私は小さく頷いた。

 キスも、好き。すごく、愛されている感じがする。大切にしていただいている感じがする。

「ふぃお、さま……ぁ、ん……ん」

 深く唇が合わさる。遠慮がちに、舌が口の中に差し入れられる。
 フィオルド様の舌は大きくて、私の口の中がすぐにいっぱいになってしまう。

 歯列をなぞり、口の中を弄るようにして舐め取られる。

 もう一度舌を絡めるようにされた。


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