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遺跡探索と雪解けの春
三大公爵家と嫌われているリリアンナ 1
朝からフィオルド様にたっぷり可愛がっていただいた私は、ぐったりするかと思いきや、どことなく甘い怠さは残っているものの、艶々で元気だった。
自分でもどうしてなのか不思議なのだけれど。
運動は嫌いだし、体力も食欲もないし、病弱ではないけれど貧弱ではある。
私は自分のことをそんなふうに思っていたのだけれど、もしかして案外丈夫なのかもしれない。
「リリィ、今日は寝ていて良い。無理をして授業を受ける必要はない。……全て、私のせいだが」
私の体を浄化魔法で清めてくださったフィオルド様が、寝室に私を運んで寝かせてくださる。
私はフィオルド様の手を握って、首を振った。
自分でもびっくりするぐらい、元気なのよね。
それは私も寝ていたい。だって外に出るよりもお部屋でだらけている方が好きだもの。
でも。
「フィオルド様、私も、授業に出ます。……その、フィオルド様と、仲良くなれたから、……一緒の時間を過ごさないと、もったいない気がして」
「……そのように可憐なことを言われると、……どうにも、もう一度触れたくなってしまう」
「っ、だ、だめ、です……時間が、もう」
ベッドサイドに座る私の髪や耳に、フィオルド様は優しく手のひらで触れた。
くすぐったさから身をすくめながら、私は小さな声で言った。
本当は、もっとしていただいて構わないのだけれど、ここで流されたら駄目な気もする。
だって今日はまだお休みじゃないもの。
フィオルド様は優秀な皇太子殿下として評判なのだから、私のせいで堕落したというような噂が流れてしまうのはよくないと思うの。
私のせいで、なんて、烏滸がましいとは思うのだけれど。
「そうだな。……リリィ、しかし本当に、大丈夫なのか?」
フィオルド様は名残惜しそうに私から手を離すと、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「それが、その……体が軽い気がするのです。フィオルド様の魔力を、分けて頂いたからなのでしょうか、足りなかったものが満たされたような、不思議な感じがして。……すごく、すっきりしています」
「…………そうか」
フィオルド様は口元を押さえると、短い返事をした。
フィオルド様の周囲にキラキラと雪の結晶が一瞬舞い踊って、すぐに消えていった。
不機嫌そうに眉間に皺がよっているけれど、頬が僅かに染まっている。
照れていらっしゃるのかもしれない。
そう思うと私の胸もどきどきと鼓動が早まった。
私、かなり大胆なことを言ってしまったのではないかしら。
紅潮した頬を、私は両手で隠した。
「リリィ、私も同じだ。……お前に触れていると、とても満たされる感覚がある。お前は、私のために生まれた器であるような、そんな奇妙な感覚だ。……いや、今の言葉はお前に対して無礼なものだったな。すまない」
「……い、いえ……! 嬉しいです、私……そうだと、良いなって、思います」
「まずいな。……お前があまりにも愛らしく、昼も夜もなく、お前を鳴かせたくなってしまう。……無理はするな、リリィ。体調が悪くなったら、すぐに私を呼べ」
「はい、ありがとうございます……」
「それから……体調以外にも、何かあればすぐに私に言え。今まで私にお前について、偽りの情報を伝えてきた人間が何人かいる。言われるがままに騙されていた私も愚かとしか言えないが。……私の方で然るべき処置を行うつもりではいるが、お前の身に危害が加わる可能性もある」
「……どうしてでしょう、私、そんなに、嫌われているのでしょうか……顔が怖いからでしょうか」
それ以外に理由が見当たらない。
だって私、お母様の方針で、ほとんどセフィール公爵家から出たことがないし。
魔導学園にはお友達がいないし、社交会にだって話し相手もいないし。
そもそも私自身もあまり、貴族の皆さんの顔や名前を覚えていない。
人の顔を見るのも、話すのも苦手だから、自分から誰かに話しかけたこともないし、話したいと思う相手もいなかった。
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