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遺跡探索と雪解けの春
言葉以外で伝わる気持ちもある 1
しおりを挟むフィオルド様は、セフィール家と皇帝陛下の間に何があったかを全て知っていてーー私の婚約者でいてくださった。
それはどれほど、苦しいことだっただろう。
フィオルド様の隣で私が表情を凍らせるたび、フィオルド様は、私がーー私のお母様を汚そうとした皇帝陛下の御子息であるフィオルド様を、嫌悪していると思っていたのかもしれない。
じわりと、涙が目尻に溜まり、はらはらと頬を流れ落ちた。
夜空の星が、月が、景色の中で滲んで、乱反射している。
私はフィオルド様の腕の中で軽く体を捩って振り向くと、フィオルド様の体をぎゅっと抱きしめた。
驚いたように僅かにフィオルド様の体が震えたけれど、すぐにきつく抱きしめ返してくださる。
「フィオルド様、何も知らなくて、ごめんなさい……私、本当に何も、知らなくて」
「……私の方こそ、お前に辛い話を聞かせてしまってすまない。リアン公爵夫人も、実の娘に知られたい事柄ではなかっただろう。……私は、お前にまた甘えてしまった。お前が知るべきことではなかったというのに」
「私は、教えていただいて良かったと思います。フィオルド様の痛みや、辛さが、少しだけ理解できた気がして。お話し、してくださって、ありがとうございます」
「私は……私もあの男のようになってしまうのではないかと、恐れながら生きていた。私にはあれと同じ血が流れている。獣の血だ。だが、結局は同じだ。……私はお前に」
「フィオルド様……!」
私は、はじめて大きな声を出した。
今まで出したことがないぐらいに、大きな声で、自分でもそんな声が出るのだと驚いてしまうぐらいに、その声はよく響いた。
私は抱きついていたフィオルド様から無理やり体を離すと、その顔を睨んだ。
私が睨むと、結構怖いのよ。なんせ悪女顔だから。
「私は、フィオルド様が好きです、フィオルド様に触っていただけると嬉しくて、幸せで、……なんでもしていただきたいって思うのです。私は、フィオルド様だから……!」
こんなに続けて話したことがあったかしらというぐらいに、私は捲し立てた。
フィオルド様に、傷ついてほしくない。
皇帝陛下とお母様やお父様の関係がどうであれ、それは私とフィオルド様の間になんの溝も、傷も、作るものではないはずだ。
だって、私はお母様ではないし、フィオルド様は皇帝陛下ではないのだから。
「私、フィオルド様が私のこと、好きっておっしゃってくださったから……フィオルド様のことが好きだって、思いました。単純で、身勝手で、……自分の感情に、自信なんて、なくて。でも、フィオルド様が悲しそうだと、私も悲しいのです。フィオルド様が幸せそうだと、私も幸せで……」
フィオルド様は目を見開いて、私をまっすぐに見つめている。
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