リリアンナ・セフィールと不機嫌な皇子様

束原ミヤコ

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セフィール家での休暇と想起の夏

深い海に沈むように 1

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 ごちゅりと奥をこじ開けるように穿たれるたびに、私の最奥がフィオルド様の昂ぶりの先端を包み込むようにして、まるで口付けでもするように吸い付いては離れていく。

 体の奥を押し上げるようにされると、頭が真っ白になるぐらいに気持ち良い。

「ん、あ、あっ、あぁ、ふぁ……っ、ぁん……っ」

 浅いところまで引き抜かれて、奥まで腰を打ち付けられると、半開きの唇からひっきりなしに甘い声があがった。

 立派なベッドが、微かに軋む音をたてている。

 フィオルド様は私の両足を抱えるようにして、私に覆いかぶさっていて、片手を一本一本指を絡めるようにして、繋いでいてくださっている。

「リリィ、お前の中は、狭くて、あつくて、気持ちが良いよ。……リリィは?」

「ふぃおさま、きもち……っ、あ、あ……! おく、だめ、だめなの、あ、ぅ……っ、ああ……っ」

「駄目? こんなに私にからみついて、離れようとしないのに」

「きもちいいの、きもちよくて、おかしくなる、から……っ」

「可愛い、リリィ。気持ち良くなれて、良い子だ」

 情欲に掠れた声が、鼓膜に触れる。

 可愛いという言葉に体がいっぱいになる。
 フィオルド様の声が、言葉が、全身に満ちていく。

 気持ち良くなれるのは、良いこと。泣きじゃくって、はしたない声をあげている恥ずかしい姿なのに――可愛いと褒めて貰えて、嬉しい。

「ふぃおさま、きもちいいの、あ、あ……また、きちゃ……っ、まって、や、ぁあ……っ」

「リリィ、可愛い……またいった? 中が震えてる。……嬉しい、リリィ。もっと、欲しい?」

「……っ、は、あ、ぁ、ふ、ああ……っ、ふぃお、さま、すき、ほしいの……っ、ふぃおさまぁ……っ」

「リリィ、愛しているよ、リリィ……私にはお前だけだ。お前しか、いらない」

 艶やかで淫らな声音で、フィオルド様が囁く。

 私の体の奥に入り込んでいる欲望の形を確認するように、薄い腹を撫でられる。

 臍の下をやんわりと指先で辿られて、とん、とん、と軽く叩かれると、そこにフィオルド様が存在していることをはっきりと感じることができる。

 指で外側から押されるだけできゅうきゅうと膣壁が収縮して、もっとフィオルド様を深く飲み込もうとしてしまう。

 奥をぐり、と円を描くようにして抉られて、あまりの気持ち良さにぼろぼろ涙が流れた。

「おく、すごい、よぉ、っあ、あああ……っ くる、きちゃ……っ、やああぅ」

「リリィ、私をこんなに深くまで、受け入れてくれて……お前をもっと、気持ち良くしてやりたい。……またいった? 可愛いな、リリィ……」

 とん、と、指で下腹部を押されるたびに、意識が濁る。

 何度達したか分からないぐらいに私の体は果てを迎え続けて、痙攣する内壁がフィオルド様を締め付ける。切なげに眉を寄せたフィオルド様は、赤い舌で唇を舐めた。

 美しい獣のように淫靡な仕草に、胸がどくどくと高鳴る。

 ――このまま、食べられてしまいたい。

 身も心もどろどろに溶けて、フィオルド様とひとつになれたら良いのに。
 熱に浮かされたように茹だった頭は、それがきっととても心地良いことだと訴えかけてくる。

「ふぃおさま……っ、すき、ふぃお、さま……っ」

「私も好きだ、リリィ。……リリィ、リリィ」

 きつく私の体を抱きしめて、何かを追い求めるようにフィオルド様が私を揺さぶる。

 ぐちゅりとはしたない水音がひびくたびに、ぎりぎりまで引き抜かれた昂ぶりが最奥を、激しく、強引に貫くたびに、快楽が背中から脳髄まで走り抜ける。

 逃げたくなるぐらいに気持ち良くて、でも、ずっとこうしていてほしくて、私はフィオルド様の背中に腕を回して縋りつくようにして抱きついた。

 促迫した呼吸の音が、艶やかな吐息が聞こえる。
 どくりと、フィオルド様の欲望が、私の中で大きく膨らむのがわかる。

 ひときわ激しく穿たれて、熱いものが私の胎の底へと満ちていくのを感じる。

 甘く清らかでいて淫らな魔力が、私の中を満たしていく。

「あ、……あ、……ふ、ぁ、ああ……」

 びくびくと痙攣する私を、フィオルド様がきつく抱きしめてくださる。

 蜜壺をかきまわすようにして腰を揺らし、味わいつくすようにもう一度穿たれると、私の秘所から透明な液体が迸ってフィオルド様の下腹部を濡らした。

 何が何だかわからなくて、ただ気持ち良くて、ぐずぐず泣くことしかできない。

 心も体も満たされていて幸せで、深い愛情の海に溺れているように、ひたすらに気持ち良い。

「リリィ……愛しているよ。言葉では足りないぐらい、愛している」

 微睡の中で、フィオルド様の優しい声が聞こえる。

 深くつながったまま私を抱きしめて、額や目尻や、体中に、口付けてくださるのが心地良い。

 私も好きだと伝えたかったけれど、もう言葉を話せそうになくて。

 目を閉じると、深い暗闇の中へと意識が落ちていった。


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