リリアンナ・セフィールと不機嫌な皇子様

束原ミヤコ

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セフィール家での休暇と想起の夏

 嫉妬と劣情 2

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 全身を痙攣させながら、はくはくと息をついて声にならない悲鳴をあげる私を、フィオルド様は落ち着かせるようにぎゅっと抱きしめてくださる。

 ぽろぽろと流れる涙やこぼれ落ちる唾液を舐めとって、優しく髪を撫でた。

「先程、確認のために記録石に残ったお前の姿を見て。……魔物に快楽を与えられるお前に、……私は、劣情と、嫉妬を」

 くたりと横たわったまま動けない私の目尻や、唇に、フィオルド様はそっと口付ける。

 透き通った氷を連想させる密やかな声音は、まるで子守唄のように耳に響く。

 深い愛情だけが感じられる多幸感に満ちた世界で、私は力の入らない腕をなんとか動かして、フィオルド様の背中に手を回した。

「……冷静にと自分に言い聞かせても、お前の淫らな姿を見ると、体は素直に反応してしまう。……だが、それと同時に、お前に触れた魔物たちに、嫉妬と激しい怒りを抱いた。……だから、その先は見る必要がないと理解していたのに、……止められなかった」

 フィオルド様は私の顔を、手のひらで包んだ。

 すぐに壊れてしまう繊細な宝物を扱うように、もう一度優しく口付けると、耳朶や首筋を舌でたどる。

「お前を汚す私の姿を見たかった。……支配欲と独占欲が、満たされる気がした。……リリィ、愛している。お前に触れて良いのは私だけだ。それが人ならざる者であっても、お前に触れ、お前の魔力を奪うと思うと、……嫉妬というのは、どうしようもなく、醜い感情だな」

「ふぃお、さま……っ、うれし……」

「おそろしくは、ないか。……思い違いでお前に冷酷な態度を取り続け、……お前を手に入れることができたと思った途端に、激しい嫉妬さえ、抱く男を」

「……嬉しい、です、……やきもちというのは、好きだから、するのですよね……初めて、です、私……嬉しい」

「リリィ……私は、……この幸せは、泡沫の夢なのではないかと、いつか壊れてしまうものではないかと。……手に入らないものだと思っていた。ずっと。だから、……これが、現実なのか、疑ってしまいそうになる」

「フィオルド様、ぎゅって、してください……っ、夢じゃない、から、だから」

「……深く、繋がりたい。お前を私で満たしたい。……どれほど貪っても、足りない」

「ん……っ、私も、私も、欲し……くださ……っ」

 ショーツの紐がはらりと解かれて、蜜が滴り落ちて太腿やシーツを濡らしていく。

 中をほぐすように長い指が入り込んで、ぐるりとかき回した。

 幾度か達してそれでも足りないと訴えている私のその場所は、指を誘うように淫らに収縮する。

 媚肉をかき分けるようにしてぐちゅぐちゅと指が蠢き、内壁を押し込むようにされると、体を深い快楽がぞくぞくと駆け回る。

「っ、ふぃお、さま……っ、ぁあ、ぁ、あ……っ」

「リリィ、……愛しているよ、リリィ」

「ん……っ、………っ、ぁ、あ」

 指が引き抜かれると、熱を帯びた昂りがあてがわれるのがわかる。

 焼けるように熱くて、湿っていて、芯があるように硬いそれが、私の中にゆっくりと入ってくる。

 体をひらかれる感覚に、私は目を閉じて身を委ねた。

 違和感があるのは一瞬で、全て収まると、充足感が心を満たす。

 深く楔を埋め込まれながら抱きしめられると、最初から一つだったような、足りなかった何かが、空洞だった心が塞がれ満たされたような、泣きたくなるほどの幸せを感じる。

「フィオ様、好き……好き、です……離さないで、ください、ずっと、一緒に……っ」

「……リリィ、嫌だと言われても、たとえ、嫌われ憎まれたとしても、離すことなどできない」

「好きです、嫌ったり、しない、です……」

「そうだな、お前は優しい。……あんな姿を見てもなお、私を好きだと言ってくれるのだから」

 フィオルド様は、少しだけ笑った。
 笑うと体が揺れる。

 そのせいで繋がった場所がゆるやかに蠢いた。
 私は切なく眉を寄せて、フィオルド様の服を助けを求めるように掴んだ。
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