リリアンナ・セフィールと不機嫌な皇子様

束原ミヤコ

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セフィール家での休暇と想起の夏

 悪夢の上書き 2

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 ふるふると首を振る私の首筋に、フィオルド様の唇が触れた。

 ぐるりと中を指でかきまわされて、とろりとした液体が滴ってシーツを濡らしていく。

「だめ、ゃ……っ、あ、あ……ぅ……」

「リリィ、それがたとえ夢であっても、私以外のなにかがお前を泣かせるというのは、不愉快なものだな。夢にすら、嫉妬してしまいそうになる」

「……ゃ、ん、ん……っ」

「綺麗にしているのだから、我慢して、リリィ。そんなに濡らしては、終わらない」

「ふぃおさまぁ……きもちいいの、ふぃおさまの、せい、なのに……っ」

 私は、ぐちゅぐちゅと私の中を動き回るフィオルド様の手をとめようと、その腕を両手で握った。

 でも本当はやめて欲しいと思っていなくて、いつでももっと、して欲しくて。

 腰が勝手に揺らめき、離さないでと腕にしがみついているみたいになってしまう。

「そうだな、私がお前を好くしている。リリィ、私の名を、呼んで欲しい」

「ん、ぅん、……ふぃお、るどさま……っ」

「リリィは、誰のものか教えて?」

「ふぃお、さまの、……りりぃは、ふぃお、さまの、……あ、ぁ、も、だめ、ぃく、いくの……っ」

「もう? これだけで果てることができるのだな、リリィ。良い子だ、いけ、リリィ」

 ぐちぐちと浅いところを何度も押し上げられて、私は背中を弓なりにそらせた。

 寝起きでぼんやりしていた頭に一気に快楽が弾けて、全身がびくびくと震える。

「ぁ、あ……ゃあ、ぁああ……っ」

 透明な液体がびゅる、と迸り、シーツに水溜まりをつくる。

 かきまわされていた秘所からは愛液が滴り落ちて、昨日の残滓が混じりあったものを、とろとろと零した。

「あ、は……あ、ぅ……」

 力なくベッドに倒れた私を、フィオルド様が大切そうに抱きしめてくださる。

 慈しむように何度も口付けが落ちる。

 快楽と多幸感に、体が満たされて、このままもう一度眠ってしまいたいと思う。

「リリィ、……夢は、忘れられただろうか」

「……は、はい……」

 どことなく拗ねたようにフィオルド様が言った。

 夢に嫉妬をしたというのは、本当なのかもしれない。
 なんだかすごく可愛らしくて、口元がほころんでしまう。

「……明日には、いつもの日常に帰らなければいけないのが、信じられないな。自分の立場も、しがらみも、責任も、全て忘れていたような気がする。本当は、よくないのだろうが」

「私も、……私、頑張ります、ね。フィオルド様の、婚約者として……私、本当はあんまり、勉強が好きじゃないですけれど、ちゃんと、頑張ります」

「ありがとう、リリィ。私も努力する。国のために。そして、お前のために」

 今日はもう、外に出ずにこのままベッドの上にいて良いのではないかしら。
 そんな風に思うのもつかの間、遠慮がちに扉が叩かれた。

「お二人とも、昼食の準備が整いましたよ。……お邪魔をしたくはないのですが、本当に、本当にお邪魔をしたくはないのですが、断腸の思いで声をかけさせていただきました。お食事にしましょう……!」

 ものすごく苦し気なドロレスの声が聞こえて、私とフィオルド様は顔を見合わせた。

 苦笑交じりにフィオルド様が「起きようか」と言う。

 困ったように微笑む表情も素敵。

 フィオルド様が私の体を清めてくださる間、私は終始うっとりしていた。



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