リリアンナ・セフィールと不機嫌な皇子様

束原ミヤコ

文字の大きさ
156 / 200
聖女の魔力と豊穣の秋

 自己嫌悪のち開き直り ※フィオルド視点です 2

しおりを挟む


 私はやはり、リリィを食べてしまいたいと思っているのだろう。

 醜悪だと思う。

 けれど、己の醜悪さを認め、受け入れようと思えるほどに、リリィが愛しい。


「ぅん……っ、ぃっちゃう、ふぃおさま、あ、あぅ……いっちゃうから……もう、……っ」


 親指の先で開かれた足の間から覗く愛らしい赤い芽をかりかりと引っ掻いて、ゆるんだ秘所に指を差し入れる。

 柔らかい肉壁に包まれた指が、リリィのあたたかさを感じる。

 うねり、収縮し、もっと奥まで誘い込むようにして指をきつく締め付けるその場所に、早く入りたいと思う。

 けれどそれと同時に、リリィをもっと追い詰めたいと思う。

 私の腕の中で蕩けるほどに、リリィは私を強く求めてくれる。

 求められるほどに、満たされる。

 自分のことなど、一度も好きだと思ったことはない。あの男の息子である私は、穢れた血が流れていると思えてならなかった。

 どんなに取り繕っても、所詮は表面だけだ。本性は、本質は、隠すことなどできない。

 その証拠に、――私のことを嫌っていると信じて疑わなかったのに、それでもリリィを、手放すことができなかった。

 それなのに、リリィは私を求めてくれる。愛してくれる。

 レイフィアのことで悩み、それでも私から離れたくないと思ってくれるほどに、私を。

 リリィの悩みなど、愛らしいものだ。

 私の心のうちを全てリリィに晒すことができるのなら、その昏く濁った執着に、怯えて逃げてしまうだろう。

 それとも、リリィは――いつものように、受け入れてくれるのだろうか。

 
「気持ち良い? リリィ、また達したのか。お前の中は、私の指を咥え込んで離さないように、きつく締め付けて震えている」

「ふぃお、さま……っ、指、もうやだぁ……っ」

「それでは、終わりにしようか、リリィ。これ以上声を出したら、きっと気づかれる」

「っ、いじわる……っ、やだぁ……」


 指を引き抜くと、リリィは大粒の涙をこぼした。

 恥ずかしがり屋のリリィが理性を失い、私を欲しがるのを見ていると、心にあいた虚に慈雨が染み渡るように、仄暗い執着や、混沌とした欲が、空の器に満ちていく。

 隠しても、隠しきれない獣欲も、リリィを喰らいつくしてしまいたいほどの独占欲も、全て私の一部。


「最後まで、してほしい?」

「うん……ふぃおさま、我慢、するから、声、がまんする……がんばる、から……っ」

「いい子だな、私のリリィ」


 耳元でそっと囁くと、リリィは嬉しそうに微笑んだ。

 ――本当は、図書室に入った時に、皆にもう帰るように告げて、人払いをしてある。

 調べ物があるから残りたい、私が鍵をするからと、司書から鍵を預かった。

 だからここには、リリィと私。

 それから、隠れて私たちをのぞいている、アニスとシリウスしかいない。

 シリウスは――今までまるで表面だけを取りつくろっていた私を嘲るように、享楽的な行動を繰り返していた。

 仲が悪いというわけではないが、何を考えているのかよくわからない弟だと思っていた。

 その視線がリリィに向けられていたことも知っている。

 誰にも興味がなさそうなシリウスが唯一視線で追っていたのが、リリィだった。

 けれど、今はその興味の対象がアニスにうつったようだ。

 このまま、アニスも――シリウスに食べられてしまえば良い。

 アニスはリリィの友人だが、友人としての触れ合いさえも腹立たしいと思う。

 リリィは私のもの。
 私のような悪趣味で最低な男を好きだと言って受け入れてくれるリリィを、私はきつく抱きしめた。


 ◆◆◆◆


しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...