ヒロインの攻略対象は私? 男装の麗人にマッチョな騎士が迫ってくる!

能登原あめ

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1 ヒロインに告白された!

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「リン様、お慕いしております。どうか私と……け、結婚を前提につき合ってくださいませんか?」

 乙女ゲーのヒロイン、カレンに言われたのが今日の午後。
 子犬みたいな瞳で見つめてきたけど、無理なものは無理!

「ごめん……私とでは幸せになれないよ」
「リン様、私! 街で野蛮な男たちから助けてくださったあの日から、心の中はリン様だけなのです。だから……どうか……おそばにいさせてください」

 カレン・セリア・スミスは引っ込み思案で男性が苦手。
 可愛いからどこにいても声をかけられる。
 あの時は乙女ゲーのフラグだって気づかなくて、私は彼女を助けた。
 
 気をつけて、子猫ちゃんくらいは言ったかもしれない。カッコつけたかったんだ。ヒーロー気分だったし。
 あ~、色んな意味で記憶を消したい!

「私、リン様と結婚できなかったら、一生誰とも結婚しないと思うのです。どうか……前向きに考えて」

 押しが強いよー。
 エンディングまであと少しだから、気持ちはわからないでもない。
 だけど!

「カレン……すまない、気持ちには応えられない」
「では……卒業まで、おそばにいても?」
「……学園にいる間なら」

 私のバカ!
 今にも泣きそうな顔するからダメとか言えなくなっちゃった。
 
「……わかりました。約束ですよ? 逃げないでくださいね。私……諦めませんから!」

 走り去る後ろ姿をクールに見つめながら、脳内は大混乱中。

 あああっ、わかっていたけどゲームのストーリーと同じ流れだ!
 この後は変わらぬ日々を過ごし、想いを固めたリンから秘密を明かした上でせつなく告白の流れなんだけど!

 カレン、ごめん!

 私、体だけでなく心も女なんだわ。
 女子に恋愛感情もてないんだわ。
 男装の麗人リン・マリー・パットン。
 ミドルネームは終盤まで非公開。
 
 2年前に弟が産まれるまで、私は後継ぎの男として育てられた。

 この国は男しか継げないし、母は体が弱く2人目は望めないと思ったらしい。
 金遣いの荒い伯母の子を養子にしたくない父が私を男として育てることに決めた。

 それで私は領地経営のこととか、馬術、剣術、体術とか色々学ぶことになったし、幼い頃から当たり前の生活で不満はなかった。体を動かすのが好きだったからね。

 でも奇跡が起こって弟が生まれ、その頃に前世の記憶を思い出した。
 ちょうどよかったのかも。
 性別を隠すのが大変になったのは学園に入ってからだから。

 学園を卒業したら、大叔父の養女になって花嫁修業をすることになっている。
 相手はいないけど!
 
 そろそろ男でいるのは限界。
 ヒゲ生えないもん。
 喉仏ないから、いつも首元までヒラヒラしたブラウス着ている。暑い。
 
 声変わりもないから低めのトーンで話すけど、男の姿のままでは結婚できないってこと、じわじわと実感している。
 女の子にモテたってさ、先が見えないんだよー。

 カレンのことは友だちとして好きだよ?
 でもエンディングのスチル――女同士でキャッキャしながらバブルバスとか絶対無理だから!
 
 無心でサウナ入って、耐えて耐えて水風呂飛び込んであ゛あ゛~ってオッサンみたいな声上げたい私にはそういうの無理なんだわ!
 
 アフターストーリーは男装のまま劇場へエスコートしてデートしてたし。

『本当のリンを知っているのは私だけ♡ ずっとそのままでいてね』って言われるんだけど、それはない。
  
 一生男装? 無理無理!
 女の子とイチャイチャエンドなんて……私には絶対無理なんだよ。
 今世では男性と結婚してみたい!
 






 私の前世は女子大生だったところまでぼんやりした記憶がある。

 周りに乙女ゲーをする子はいなくて、友だちにも内緒で楽しく遊んだ。
 ゆりエンドはコンプのためだけに進めたからあまり記憶がない。
 
 だからカレンと出会った後もすぐ気づかなくて、仲良くなってリンルートに入ったんだ。

 カレンには前世の記憶なんてないみたいだし、男らしい男が苦手。
 攻略対象者たちはみんなイケメンなのに、ほとんど関わらない。
 空気のよう。

 女性としては背の高い私は剣を振るうからそこそこ筋肉もあるし、中性的に見えるのだと思う。

 すね毛もないし、女の子にガツガツしてないのも、下心感じなくて過ごしやすいんだろうな~。

 日本人の記憶から風呂好きだし、清潔感バッチリ!
 汗かいたらシャワー浴びられる乙女ゲー世界最高。
 
「まいったなー。無理だわ。……どうしたらいいかな」
 
 あっ、そうだ。
 私が恋人作ればいいんだ!
 簡単、かんた……んなわけあるか――!

「でもやるしかない」 
 






「私の恋人になってほしい」

 1番最初に声をかけたのは、クラスメイト。
 理由は目が合ったから。

「……俺に、男色の毛はない」
「私もない」
「ならどうして声をかけた。……まさか、女に飽きたのか?」
「は?」 
「モテるからって冗談ならもっと面白いことを言え」

 あっさりフラれた。
 よく目が合うし、こっち見ているから女だって気づいてて言わないんだと思ったんだよ。
 
 意識してたのは私だけかぁ。
 好きってわけじゃなかったけどさ。
 
 もう18歳、脱いだら一応女の子なんだ。
 気づかれていないってことは完璧な男装なんだけど複雑……。

 親友のサムは私の性別も知っていて、つき合いが長い。
 そろそろ男装も限界だなって言われたばかりなのに。

 隣のクラスだし、一緒に並んでいると女の子たちがチラチラ見てくる。
 サムはゲームに出てこないけど、細マッチョで中々のイケメンなんだ。
 いいコンビだって……。

 ん?
 あ、なんだ。
 つまり、サムに恋人になってもらえばいいんだ。
 近すぎて気づかなかった!

 せめてフリくらいしてくれるはず。
 サムとは剣術の師匠が一緒で、小さい頃はよく組まされた。
 
 今でこそ体格と力に差が出たから本気で打ち合いはしてくれないけど、手合わせは楽しい。
 夢中になりすぎて、兄弟子のケンさんに叱られることがよくあるくらい。
 
 兄弟子はゴリラとクマをかけ合わせたような大男で、強くて怖くて一度も勝てたことがない。 
 ストイックに鍛錬に励む姿は尊敬する。

 もしも知られたら、色恋にうつつを抜かすなってしごかれそう。万一の時、兄弟子に頼むのは……ナシだな。

 よし!
 サムに頼もう。
 親友の頼みだ、絶対断らないはず!
 
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