3 / 9
2 誤解!
しおりを挟む「え、無理。つーかなんで俺に頼むんだ。やばい、殺される」
親友サム・A・クリスタルが道場にいたところを捕まえて、すみっこで頼んだ。
「え? 父に知られても怒らないよ。母もね。カレンはめんへら……えっと、心が安定してるしナイフとか持ち歩いてないだろうし、いきなり背後から刺してくることもないよ」
なんてったって、乙女ゲーのヒロインだし、純粋だし心優しいし、素直だから。
「いやいや、ないない、だめだって。はい、この話はもう終わり!」
やけに小声で言いながら、きょろきょろ辺りを見回して行動が不審。
誰も私たちに注目してないのに。
「親友の頼みを断るのか? 難しいことじゃない。サム、私の恋人になってくれ!」
フリでいいのになんで断るかなぁ!
「わぁ~、声がでかい! リン、落ち着け。気の迷いにも程がある。……そうだ、一回やるか? 頭の中を空っぽにしたほうがいい」
お互いの視線が、立てかけられた木剣へ向かう。
手合わせして、汗かいてスカッとしたい。
「そうだな、一旦出したほうがすっきりするよな」
思ったよりストレスを感じていたみたい。
ごちゃごちゃした頭の中を整理したら、もっといい案出てくるかも!
「思いっきり、突っ込んでこいよ。たまってるから本気でいきたい。手加減しなくていい」
「あぁ、わかった」
ニッと笑ったサムが一瞬で青ざめる。
「……ッ⁉︎ ふぁ、えっと、ケンさん! こ、こんにちは! あの、えと……聞こえていました?」
いつの間にか近くにやって来た兄弟子のケン・スティーブン・ウッドがサムにすごんでいた。
こわッ。
ものすごく機嫌が悪そう。
もしかして聞こえていた?
「……こんにちは、ケンさん」
挨拶するとチラッと私をみたけど、すぐサムを見る。
視線で殺すって、こういうのかな?
いつも私とサムの打ち合いの時、下手くそすぎるからか、ケンさんはまるでなってないって顔で見ていた。
騎士団に所属していたら、私たちなんて隙だらけなんだろうな。
あとでたっぷりしごかれるのは、サムのほうが多かったのは、私相手で手加減していたのがバレていたのかも。
休憩中もふざけていると睨みつけるくらい、ケンさんはストイック。
マッチョの中のマッチョ。
「……どう言うことだ?」
「いえ! その、俺たちの間にはなんっにも、ありません! その、リィン! ケンさんに説明して! ほら、頼んだらどうだ? 頼りになるし! 頼んでみろって」
サムの顔色がみるみる白くなって、声が裏返っている。
ケンさんは黙っているし、今度は私を見つめてくるし!
怖いよ~、だって叱られるんじゃない?
ケンさんに恋人役を頼めってことだよね⁇
サムの目が早くしろって言ってる。
えー、一緒に並んだら恋人に見えるかなぁ。
なんていうか完全にBLな雰囲気?
いや、それはサムも一緒か。
「……リン、言ってみろ」
ケンさんが唸るように言った。
嘘はつけない。
ゆりエンド回避したいのも本当だし、ダメ元で!
「こ、恋人がほしいんです!」
叱られると思ってぎゅっと目を閉じて歯を食いしばって足に力を入れた。
たるんでいるって、ケンさんに背中をバシッと叩かれると思ったから。
まぁ、そんなことされたのは数年前までだけど。
「わかった、俺がなる」
「えッ⁉︎」
驚いて目を開けると、さっきまでサムがいた位置にケンさんがいる!
「いやなのか?」
ギロリとにらまれて、首を横にブンブン振った。
「よかったなぁ、リン! 無事解決じゃん⁉︎ じゃあ、お、俺行くわ! 師匠の手が空いてるみたいだから! リンはケンさんに相手してもらって。じゃ、じゃあ、ケンさん、リンのことよろしくお願いしまっす!」
サムが逃げた!
思わず後ろ姿を見ていると、ケンさんに腕を取られた。
「移動するぞ」
「あ、はい」
どこか人気のない所のほうが説明しやすいもんね。
ケンさんは私の性別に薄々気づいていそうだけど……クラスメイトの件もあるし勘違いしないように気を引き締めよう。
うーん、でも女だって言わないまま恋人になってもらったほうがカレンが諦めやすいかも?
リン・パットンは隣国に旅立って、代わりにミドルネームのマリーとして生きるわけだし。
「俺のうちでいいか?」
「はい、よろしくおねがいします。困っていたので助かりました」
「…………」
唸って早足になったの、なんでだろう。
ケンさんは早く理由が知りたいのかな。意外とせっかち?
「ケンさん……あの」
「もう少しで着く。我慢しろ」
我慢?
我慢って何?
そんなにしゃべりたそうにしてた⁇
5分も歩くとこじんまりしたアパートみたいな造りの家に着いた。
「ここは俺が借りている部屋だ。この時間は周りも人がいないから気にしなくていい」
「はぁ……」
伯爵家の四男で騎士団に所属しているのに、休みの日にまで師匠の元で鍛錬するストイックなケンさん。
強いしすごいと思っているけど、部屋は初めて。もしかしたら、弟子たちの中で1番目に入るかも!
扉を開けるとあまり物が置いていない殺風景な部屋。あと、ちょっと薄暗いのはカーテンが半分くらい閉じてるからかも。
よそ様の家に入ったらどこか褒めるのがマナーって留学生が言っていたっけ。
前世の記憶だけど。
「ケンさん、キレイに、ンンぅ⁉︎」
玄関が閉じた瞬間、後ろからすっぽり抱きしめられておおうようにキスされちゃってる!
えー、なんで⁉︎
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
最終回まで予約投稿済みです。
毎日8時・20時に更新予定です。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる