ヒロインの攻略対象は私? 男装の麗人にマッチョな騎士が迫ってくる!

能登原あめ

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2 誤解!

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「え、無理。つーかなんで俺に頼むんだ。やばい、殺される」

 親友サム・A・クリスタルが道場にいたところを捕まえて、すみっこで頼んだ。
 
「え? 父に知られても怒らないよ。母もね。カレンはめんへら……えっと、心が安定してるしナイフとか持ち歩いてないだろうし、いきなり背後から刺してくることもないよ」

 なんてったって、乙女ゲーのヒロインだし、純粋だし心優しいし、素直だから。
 
「いやいや、ないない、だめだって。はい、この話はもう終わり!」

 やけに小声で言いながら、きょろきょろ辺りを見回して行動が不審。
 誰も私たちに注目してないのに。
 
「親友の頼みを断るのか? 難しいことじゃない。サム、私の恋人になってくれ!」

 フリでいいのになんで断るかなぁ!
 
「わぁ~、声がでかい! リン、落ち着け。気の迷いにも程がある。……そうだ、一回やるか? 頭の中を空っぽにしたほうがいい」

 お互いの視線が、立てかけられた木剣へ向かう。
 手合わせして、汗かいてスカッとしたい。
 
「そうだな、一旦出したほうがすっきりするよな」

 思ったよりストレスを感じていたみたい。
 ごちゃごちゃした頭の中を整理したら、もっといい案出てくるかも!
 
「思いっきり、突っ込んでこいよ。たまってるから本気でいきたい。手加減しなくていい」
「あぁ、わかった」

 ニッと笑ったサムが一瞬で青ざめる。
 
「……ッ⁉︎ ふぁ、えっと、ケンさん! こ、こんにちは! あの、えと……聞こえていました?」

 いつの間にか近くにやって来た兄弟子のケン・スティーブン・ウッドがサムにすごんでいた。

 こわッ。
 ものすごく機嫌が悪そう。
 もしかして聞こえていた?

「……こんにちは、ケンさん」

 挨拶するとチラッと私をみたけど、すぐサムを見る。
 視線で殺すって、こういうのかな? 
 
 いつも私とサムの打ち合いの時、下手くそすぎるからか、ケンさんはまるでなってないって顔で見ていた。
 騎士団に所属していたら、私たちなんて隙だらけなんだろうな。
 
 あとでたっぷりしごかれるのは、サムのほうが多かったのは、私相手で手加減していたのがバレていたのかも。

 休憩中もふざけていると睨みつけるくらい、ケンさんはストイック。
 マッチョの中のマッチョ。

「……どう言うことだ?」
「いえ! その、俺たちの間にはなんっにも、ありません! その、リィン! ケンさんに説明して! ほら、頼んだらどうだ? 頼りになるし! 頼んでみろって」

 サムの顔色がみるみる白くなって、声が裏返っている。
 ケンさんは黙っているし、今度は私を見つめてくるし!
 
 怖いよ~、だって叱られるんじゃない?
 ケンさんに恋人役を頼めってことだよね⁇
 サムの目が早くしろって言ってる。

 えー、一緒に並んだら恋人に見えるかなぁ。
 なんていうか完全にBLな雰囲気?
 いや、それはサムも一緒か。

「……リン、言ってみろ」

 ケンさんが唸るように言った。
 嘘はつけない。
 ゆりエンド回避したいのも本当だし、ダメ元で!
 
「こ、恋人がほしいんです!」

 叱られると思ってぎゅっと目を閉じて歯を食いしばって足に力を入れた。
 たるんでいるって、ケンさんに背中をバシッと叩かれると思ったから。
 まぁ、そんなことされたのは数年前までだけど。
  
「わかった、俺がなる」
「えッ⁉︎」

 驚いて目を開けると、さっきまでサムがいた位置にケンさんがいる!
 
「いやなのか?」

 ギロリとにらまれて、首を横にブンブン振った。

「よかったなぁ、リン! 無事解決じゃん⁉︎ じゃあ、お、俺行くわ! 師匠の手が空いてるみたいだから! リンはケンさんに相手してもらって。じゃ、じゃあ、ケンさん、リンのことよろしくお願いしまっす!」

 サムが逃げた!
 思わず後ろ姿を見ていると、ケンさんに腕を取られた。

「移動するぞ」
「あ、はい」

 どこか人気のない所のほうが説明しやすいもんね。
 ケンさんは私の性別に薄々気づいていそうだけど……クラスメイトの件もあるし勘違いしないように気を引き締めよう。
 
 うーん、でも女だって言わないまま恋人になってもらったほうがカレンが諦めやすいかも?
 リン・パットンは隣国に旅立って、代わりにミドルネームのマリーとして生きるわけだし。
 
「俺のうちでいいか?」
「はい、よろしくおねがいします。困っていたので助かりました」
「…………」

 唸って早足になったの、なんでだろう。
 ケンさんは早く理由が知りたいのかな。意外とせっかち?

「ケンさん……あの」
「もう少しで着く。我慢しろ」

 我慢?
 我慢って何?
 そんなにしゃべりたそうにしてた⁇

 5分も歩くとこじんまりしたアパートみたいな造りの家に着いた。

「ここは俺が借りている部屋だ。この時間は周りも人がいないから気にしなくていい」
「はぁ……」

 伯爵家の四男で騎士団に所属しているのに、休みの日にまで師匠の元で鍛錬するストイックなケンさん。

 強いしすごいと思っているけど、部屋は初めて。もしかしたら、弟子たちの中で1番目に入るかも!

 扉を開けるとあまり物が置いていない殺風景な部屋。あと、ちょっと薄暗いのはカーテンが半分くらい閉じてるからかも。

 よそ様の家に入ったらどこか褒めるのがマナーって留学生が言っていたっけ。
 前世の記憶だけど。

「ケンさん、キレイに、ンンぅ⁉︎」

 玄関が閉じた瞬間、後ろからすっぽり抱きしめられておおうようにキスされちゃってる!
 
 えー、なんで⁉︎
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