灰色の瞳に宿る想いに気づいた時、元騎士は静かに手を伸ばす

能登原あめ

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「ロゼール、最初は痛いと思う」
「はい」

 蜜口にマルスランの陰茎が触れた。
 想像以上の質量のあるものに感じて、身体を拓かれる行為に慄く。

「……ロゼール」

 あれほどじっくり触れられたのに、じわじわと鈍い痛みに襲われる。
 身体を倒したマルスランにより、ぐぐっと深く穿たれた。

「……!」

 痛みに声を出すこともできず、彼の背中に手を回して首筋に顔を押しつけ、痛みを逃す。
 浅く息をするロゼールを、彼がしっかり抱きしめた。
 
「ロゼール、大丈夫か?」
「……はい」

 顔を見られたくなくて肌に顔を押し当てたまま、返事をした。
 マルスランは、髪を撫でてそのまま抱きしめたままでいてくれる。
 けれど、陰茎がわずかに動いてこのままじゃ終われないのがわかっていた。

「マルスラン」

 顔を上げて、彼を見上げる。
 ロゼールをみつめる瞳は愛情と欲望が入り混じっていて――。

 彼になら。
 彼となら、この先に困難があっても生きていける。
 
「私……これから先も、あなたとずっと一緒にいたい」

 マルスランが、ずっと一緒に決まってると低く囁いてから深く口づけを交わした。
 脚の間に異物感と痛みはあるものの、唇を重ねるうちにわずかに痛みが緩む。

「ロゼール、もっと欲張っていいんだよ。俺にできることはすべて望みを叶えるから」

 マルスランの額に浮かぶ汗と張りつめた表情が、ロゼールの為に動かずに耐えてくれているのかと思えて胸がいっぱいで言葉にならない。

 代わりに頷いて、背中に回した手をおずおずと彼の額に伸ばして、そっと拭った。

「ありがとう。ロゼール、辛かったら遠慮せずに言ってほしい」

 彼が優しく目を細めて、頬に触れる。

「はい」
 
 もう一度軽く唇を合わせてから、マルスランがゆっくりと腰を引いた。
 鈍い痛みはあるものの、我慢できなくもないと思っていると、マルスランの指が花芯に触れた。

「……あ」

 身体がさっきまでの快楽を思い出して、あっという間に体温が上がる。
 彼の指が再びロゼールを絶頂に押し上げようとなめらかに動いた。

 ロゼールは目の前が白く霞んだ次の瞬間、マルスランが一息に腰を突き出した。

「……っ‼︎」

 絶頂を迎えたばかりで、刺激が強すぎる。
 けれどロゼールの身体は彼を包み込み、離したくないと食い締めた。

「ロゼールッ……」
 
 顎に力を入れて奥歯を噛み締め、マルスランが耐える。
 二度三度深く呼吸をしてから、ゆったりと揺さぶり始めた。
 これほどまで深く身体をつなげて、気持ちを重ねる行為にロゼールは圧倒される。

 痛みが消えたわけではないけれど、それを上回る脳が痺れるような甘い刺激に溺れていく。
 何も取り繕うことのできない顔も、感極まって流れた涙も、すべてマルスランに晒して。

 彼も苦しげな表情の後、ロゼールの奥深くで精を放った。
 汗に濡れた身体を抱きしめ合って、お互いの鼓動を聞きながら眠りに落ちた。









 背中を撫でられているのを感じて、ロゼールは目を覚ました。
 まだ夜は明けておらず、蝋燭が灯っていたから、思ったより時間が経っていないのかもしれない。

 いつの間にかマルスランの身体の上に乗せられて抱きしめられていて。
 ゆっくり顔を上げると、そっと頭を胸に押しつけるように撫でられる。

「マルスラン……?」
「……もう一度したいのを我慢している。顔を見たら、無理をさせそうだ」

 ロゼールはマルスランの胸に頭を乗せたまま横からそっと彼を伺う。
 なぜかばっちり視線が合った。
 初めての行為の時と同じ表情を浮かべていたから、さっきまでのことを一気に思い出して羞恥に染まる。

「……可愛いな」
「…………」

 彼以外に言われたら何とも思わないのに、可愛いと言われてこんなに嬉しく思ったことはない。
 髪をすくように地肌にも触れられて、震えた。
 些細なことで快感を呼び覚ますなんて、恥ずかしい。

「ロゼール」

 その様子に気づいたマルスランが、ロゼールの後頭部に指を差し入れ、止まる。
 思い切って、彼を見上げた。

 切望。
 彼の瞳を見てその言葉が浮かんだ。

「マルスラン、我慢しないで……」

 それ以上は恥ずかしくて言えなかったけれど、気持ちは伝わったようで一緒に上半身を起こして抱きしめられた。
 ロゼールの瞳をのぞき込み、甘い笑みを浮かべる。

「愛おしいな……」

 このまま溶けてしまうのではないかと、胸がいっぱいで幸せで苦しい。
 お互いが吸い寄せられるように唇が重なり、舌が絡む。
 口づけが深くなるにつれ、お腹の奥が重くなった。

「私、おかしくて」
「……?」
「マルスランに触れられると、身体が……自分じゃないみたいで、制御できなくなるわ」
「……少しもおかしくない。俺もだ」

 そのまま喉の奥で笑うから、困惑した。
 やっぱりどこかおかしいのかもしれない。

「相性がいいんだろう……ロゼールがおかしいと言うなら俺もおかしい」

 ほら、止まれなくなった、そう言ってロゼールの身体に触れる。
 初めての時とは違って、穏やかに始まった営みは、彼の腿に座ったまま陰茎を受け入れることとなった。

「……っ、マルスラン」

 身体を拡げられるのは慣れないロゼールには苦しい。
 でも、彼だと思うと愛しく思えて。
 マルスランが柔らかく背中を撫でて労ってくれる。

「しっかり掴まって」

 彼の首に腕を回し、隙間なく身体を合わせる。
 マルスランがさらに引き寄せ、静かに息を吐いた。
 満たされて幸せで。

「ロゼール」

 耳元で低く囁かれて、身体が震えそうになるのを我慢して顔を上げた。
 榛色の瞳を見つめたまま唇を重ね、甘やかな時を過ごした。
 
 
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