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しおりを挟む彼女のことは知っていた。
一度も話したことはなかったが、何度か同じ酒場に居合わせたことはある。
気の強そうな目元と、きゅっと閉じた小さな口が猫のように気まぐれな性質なのかと警戒していたが、こだわりがなくさっぱりした性格と大きく口を開けて笑う様に……目を奪われた。
時々男といるが旅人を選んでいるのか、特定の相手を作らない。
一人でいる時の彼女の、まとめ髪からこぼれた一筋の毛に指を絡めたい衝動に襲われた時は困った。
見かけるたびに、彼女の些細な動作に釘づけになる。
手に入れたら印をつけて、必要なら真綿でくるむように大切にして二度と離さない、そんな性質の自分と交わることはないだろう。
そう思っていたのに、これは神からのギフトかもしれない。
ディルクは山の中を歩きながらこれからのことを考えた。
***
夕食にディルクが狩った肉のシチューをご馳走になった。
多くを語る男ではなかったが、思ったよりも居心地は悪くない。
完全に気を抜いてはいけないとは思うが特に問題はなさそうだった。
ディルクが風呂の準備をしている間、ハンナは手作りだという果実酒を舐めるように飲んだ。
甘酸っぱくて美味しい。
山で採れたものを混ぜて漬け込んでいるらしく味に深みもある。
意外な男。
実はすごくマメなのかもしれない。
ハンナは酒に弱くない。けれど、山で迷った分精神も肉体も思ったより疲れていたのか酔いが回るのがずいぶん早い。
いつの間にか眠りこけてしまい、ディルクが風呂の準備を終えて戻って来たことに気づかなかった。
***
肌に触れる温かさに、ゆっくり覚醒する。
「なぜ?」
気づいたらディルクと向かい合わせで、体を預けて湯船に浸かっていた。
「何がだ?」
「どうして一緒にお風呂に入っているの?」
「風呂ができたと声をかけたら、一緒に入ろうと誘われた」
あり得ない。
「……少し嘘をついた。ハンナが風呂場へ向かおうとして脚がふらついたから、危ないし入るのはやめるように言ったんだ。そうしたら俺と」
「あー、はい。わかりました」
酒癖は悪くないはずだが、汗もかいたし風呂に入りたいとは思っていたから勢いで言ったのかもしれない。
全く覚えていないけれど。
出会ったばかりであり得ないし、ディルクも断ってくれたらよかったのに。
「魅力的な誘いを断れなかった」
ディルクは静かに笑うが、お腹に硬いものがあたっている今、頭の中で警報が鳴り響く。
「……もう出るわ」
「そうだな……嫌だと言われたらやめるから」
そう言いながらハンナの顎を掴み、何を?と問う前に、深く舌を絡めてきた。
肉体的に惹かれているかもなんて考えたけど、風呂でしたいなんて思ってない。
なんで急にこんなことになっているんだろう。
ディルクの舌が上顎をなぞり、ぞわりと震える。
唇に吸いつかれ彼から与えられる熱にぴくりと体が動いてしまった。
思考力を奪う口づけに、お腹の中も疼く。
これ以上はまずい。
ハンナが離れようと腰を浮かせると、その隙を利用して剛直がずぶりと侵入してきた。
「……っ……!」
異物感に声を漏らす。
受け入れる準備などまったく整っていない。
驚いて見開いたハンナの瞳を間近で見つめながら腰を掴まれぐっと腰を引き寄せられた。
「……全部、入った」
圧迫感に喘ぐ。
痛みはないが体から熱がすっと引く。
これはない。
抗議しようとするも、すぐさま髪を撫でながらがっちりと頭を引き寄せられて唇を塞がれた。
「ん……っ」
鼻から息が漏れる。
もう片方の手で二人の繋がる先に触れられて、内壁を締めてしまい、体の中からも甘い感覚も拾ってしまう。
「……くっ……」
眉間にしわを寄せたディルクが秘核をむき出しにしてそっと撫で続ける。
じわじわとハンナの体が高まり、ここまでしたら今さらか、と抵抗するのを諦めた。
それに気づいたディルクが無遠慮に秘核を引っかき、撫で回す。
ハンナは吐息を漏らし、あと少しで達するという時ディルクの手が腰に回され唇が離れた。
「……はぁ……」
もう少しだったのに。
ハンナが不満げな顔をしたのを目にして、ディルクが口角を上げて言った。
「……移動しよう」
剛直をおさめたまま立ち上がろうとするディルクに、ハンナは慌ててぎゅっとしがみつく。
その様子を小さく笑われてむっとした。
濡れた身体で寝台に下ろされてもつながったままで。
「……初めてだったら泣いているわよ。ところで前戯って知らないの?」
「すまない、本能に負けた」
これから挽回する、とつけ加えて耳を食まれて腰が跳ねた。
彼にすっぽり包まれるのは心地いい。
耳に響く低い声も吐息も好ましい。
そのままうなじまで唇で吸いつかれてその度に体が震えてしまう。
柔らかい膨らみは彼の手で形を変え、立ち上がった先端のまわりをそっと撫でてから摘まれ、口に含まれれば内壁をきゅっと閉めてしまった。
「素直な身体だな。……俺を締めつけてどこがいいか教えてくれる」
異物感と圧迫感はどこかへ消え、熱くて硬い存在感に頭がおかしくなりそうになる。
でもディルクは動かない。
悔しくて肩にがぶりと噛み付いた。
ディルクは宥めるように髪を撫でてから、半分ほど腰を引くとゆっくり押し進める。
そうすると、内壁が誘うようにうごめいた。
「そろそろいいか……」
なにが、と言う言葉はディルクの動きに呑み込まれた。
腰をぐるりと回してから緩急つけて動かれて、漏れる吐息をハンナは自分の手で覆う。
「んっ……!」
その手にディルクが口づける。
「声を」
ぐっと奥まで腰を進めると堪えきれずに声を漏らした。
そこを小刻みに突いてくるから、先ほどから高まっていた体はなすすべもなく達してしまう。
やわらかな灯の中で艶かしく揺れる体を眺めながら、ディルクは緩慢に動き続けた。
ハンナは快感を引き伸ばされ口を閉じていられない。
「あぁっ、あ、あっ……」
大きく揺さぶられて嬌声が上がる。
「いいな、耐えてる姿もそそられたが」
「もう、無理っ、お願い、ディルク!」
もうやめて、と言いたかったのに。
両足を深く抱え強く腰を打ちつけられて、もう一度昇りつめた。
「……ああぁぁーーっ!」
収縮が終わるまでゆっくり抜き差しされてぐったりしていると、ディルクに口移しで水を飲まされる。彼はまだ張り詰めたままだった。
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