山で出逢っていなければ

能登原あめ

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「もう少しつき合ってもらおう」
 
 ディルクが小さく笑って近くに置いてあった小瓶をあおると唇を重ねてきた。

 甘い香りがするこれは、何? 
 まさか媚薬?

 顎を掴まれ、歯を食いしばって侵入を拒む。
 胸を押すがびくともしない。
 鼻をつままれ、咄嗟に顔を左右に振るが息苦しさに観念して口を開けると生温かい液体が送り込まれた。

「ただの回復薬だ」

 ディルクの言葉に、迷った末飲みこんだ。
 ハンナが普段使用するものより数段ランクの高いそれ。
 彼も冒険者だった?
 体を重ねながら回復薬を飲ませる男なんて初めて会ったから、ハンナは眉をひそめる。
 ディルクが笑って言う。

「もったいなくて終われない」

 抜かずに足を持って回転させられたハンナは枕に顔を埋めていた。
 うつ伏せになると自分の激しい心音が身体中に響く。
 だから、空気を取り込もうと顔を上げ浅い呼吸を繰り返した。
 ディルクは後ろからのしかかりながら浅くゆるゆると動く。
 剛直がまんべんなく内壁をこする。
 
「これ、だめ……」

 お願いだから早く終わってほしいと、ハンナは潤んだ瞳に力を込めて振り向いた。
 体力に自信があると思っていたし回復薬も飲んだけれど、すでに何度も達していてつらい。
 なのに今すぐにも体は快感を受け取ろうとしている。

「こんなの死んじゃう」
「煽るな」

 そんな色っぽい顔で言われても、とディルクが呟く。
 背中に強く吸いついていくつもの赤い花を咲かせて満足すると、ハンナの腰を引き上げた。

「待って!」

 当たる位置と角度が変わり、内壁がうねってディルク自身を思い切り絞り込んだ。

「……っ! 早く終わってほしいのだろう?」

 ゆるゆると突かれて愛液が震える太ももへと伝う。
 それを塗りこむように秘核を撫でながら、腰を押しつけた。
 

「んっ、ふぅ」

 ハンナの腰が左右に揺れた。
 ゆっくり引いてからぐっと突くと、あからさまに腰が揺れる。
 快楽を受け取ろうとする様子をディルクは笑って楽しむ。

「ディルク!」
「遅い自覚はあるんだ……協力してくれ」

 手を伸ばし胸の先端を指で挟んだ。
 ハンナの内壁が誘い込むように蠢いている。

「んぅ、ん、んーっ……」

 それからディルクが思い切り揺さぶると、ハンナの嬌声が枕に吸い込まれ、肌が重なる音と水音が部屋に響く。

 ハンナの声が聞きたい、そう思ったディルクは口に指を突っ込んだ。
 そうされて思いがけない刺激に喉がつまる。
 口を閉じることもできず声が抑えられず、ハンナは負けずにその指を噛んだ。
 痛みに呻いたディルクだが、速度を早めハンナを絶頂に追い上げる。

「あうぅ……!」

 すぐさま剛直を離すまいと内壁が収縮して、ディルクもようやくハンナの中に白濁を吐き出した。

 

***



 なぜだろう、ハンナが目を覚ますと湯船に浸かっていて後ろから抱きしめられていた。
 先ほどが夢か、今が夢か……いや体の状態からわかっているけど現実だと思いたくない。

 窓の外はまだ薄暗く、夜明け前だろうか。
 ここに来たのは夕方前だったはずだけど。

 ハンナがゆっくり振り向くと、彼は目を閉じている。
 知り合って数時間で一緒に風呂に入り体を重ねた。
 いくらなんでもあり得ないのに、この男のことをなぜか嫌いになれない自分がいる。
 
 いつもなら一度寝たくらいじゃなんとも思わないし、整った顔と言うわけではないのに彼に惹きつけられた。
 体の相性がいい……? 

 こっちの気持ちに構わず始めるし。
 長いし、自分勝手だし。
 もっと下手くそだったらすぱっと切れてよかったのに……心が乱されて困る。

 じっと見つめていたからだろうか、ディルクの鳶色の瞳がまっすぐ見つめてきた。

「大丈夫か?」
「多分。お腹空いたわ」
「食事をしてから話をしよう」

 ハンナが頷くとディルクは先に浴槽から出て浴布を手にした。

「立てるか?」

 浴槽の縁に手をついて立ち上がるとハンナの足はがくがくと震えていて。
 ディルクは浴布を広げて包んで抱き上げ、手早く拭いた。
 
 ここまで脚に力が入らないとかあり得ない。
 ご飯食べたら帰ろう。
 ハンナは心に決めた。


 
***



 ディルクがスープを温めながら、オムレツを作り、棚からビスケットを出した。
 ハンナはその様子を横目に見ながら椅子に座って言われたとおりに野菜をちぎる。
 腹におさまれば何でもいいというタイプではなくて、美味しい料理が作れる男。
 それほど料理は好きじゃないからすごく楽だった。
 
 ハンナの手元をのぞき込み、上出来だと言うと皿に取り分け塩とオイルとヴィネガーをかけた。
 夜食には十分すぎる量の料理が並ぶ。
 
「今はビスケットしかないが、朝はパンケーキにしよう」
「朝? もうビスケットで十分よ」

 今食べて数時間後にパンケーキは入らない、と言うとディルクが首を横に振る。

「もう夜だ。今夜も泊まっていけばいい」
「……夜⁉︎」
「ああ、はりきり過ぎて寝過ごしたな」

 この疲れはそう言うことだったのかと、回復薬を飲んでこれなのかとハンナは力なく笑った。

 再び寝台に横になり悩む。
 敷布は先ほど替えた。壁側に横になると当然のようにディルクも隣に滑り込んできて、後ろからそっと抱きしめられる。

 一緒にいて違和感がない。
 もう絆されている?
 
 無理をさせてしまったからお詫びに元気になるまで世話をさせてほしいとディルクに言われたけど、明日には回復してるはずだから、帰れるだろう。
 いや、帰ろう。絶対に帰る。
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