異世界でパクリと食べられちゃう小話集

能登原あめ

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結婚式に私を番だと言ってさらった竜人を愛せない ①☆※

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* シリアス、軟禁、無理矢理描写ありのアンチ番もの、暗くて重め、ざまぁ要素あり。
 前半胸糞、後半はケンカップル登場でほんわか?です。Rはあっさり、地雷多めのためご注意ください。別名義の改稿版全3話。

* こちらのif幸せな番バージョン「結婚式に私を番だと言って現れた竜人が溺愛してくる」は単独で読めます。


 


******

 
 侯爵令嬢の私は、幼い頃に王子の婚約者となった。
 激しくも熱い愛はなかったけれど、彼のことは尊敬していたし、信頼を積み重ねていい関係を築けていたと思う。

 1つ年下の王子の成人を待ち、19歳で本日花嫁になる。

「クレア様、本日はおめでとうございます。とてもおきれいですわ」

 真っ白な婚礼衣装を身につけ、みんなに祝福されてこの日を迎えることができ、とても幸せだった。
 教会の入り口に立ち、祭壇の前に立つ王子に目を向ける。
 私の緊張を解くようにほんの少し彼が笑んだ。

 もうすぐ、私は彼の妻となる。

 王子妃としてたくさんのことを学んできたし、これからも彼の助けになるよう頑張っていくつもり。
 父の腕にそっと手をかけてゆっくりバージンロードを歩き出した。

「待て! 彼女は私の番だ。この結婚は認められない」

 来賓の竜人の国からやって来た美貌の公爵が声を張り上げ、私の目の前に立ち腕の中に閉じ込めた。

「そんな……っ」
「まさか、クレアが!」
「なんてこと……!」

 周りのざわめきが大きくなり、私はハッとした。
 公爵の腕から逃れようともがく。

「愛しい人、今は戸惑っているだろうが心配しないで。貴女を幸せにする」

 公爵はうっとりと見つめるけれど、私の心は混乱して少しもときめかない。
 助けを求めるように王子、それから王族の方々に視線を向けたけれど諦めの表情で目をそらされた。
 父も母も弟も、顔に出さないようにしているけれど、怒りや困惑がにじみ出ている。
 だけど誰もこの腕から逃してくれない。

 相手が大国の王弟だから。
 人とは生き方の違う竜人で、人間より高位の存在とされているから。
 彼の一言でこの国はあっという間に滅びてしまうから。

「では番を連れて行くよ。……代わりにあとで貴国に詫びの品を届けさせる」

 私は一言も嫌と言えないまま、誰にも別れを告げることも許されずその場を後にした。






「愛しい、愛しい、私の番。これから二人きりで蜜月を過ごそう」

 王子の為に3年もかけて準備したドレスのまま、公爵に犯された。
 私はひと月の間、自分で寝台から降りることもできず、目が覚めれば公爵が触れてくる。
 それが蜜月なのだと、時折顔を出す使用人達が嬉しそうに私たちを祝福した。

「おめでとうございます、とうとう旦那様にも番様が見つかりましたね。私どもも幸せです」

「おめでとうございます、番様に誠心誠意お仕えします。旦那様の愛を受け止めることだけが番様の仕事ですよ」

「番様は愛されて、幸せですね。旦那様は情熱的でとても愛妻家ですね。今日も番様のために遠方から取り寄せた果実を用意させていただきました」

 みんなおかしい。私はさらわれたのに。
 私は少しも幸せじゃない。
 
 もう戻れないとわかっていても心は結婚式の前に戻る。
 王子とは穏やかな愛を育んでいたと今なら思う。大変なこともあるだろうけどきっと幸せになれた。

 それに対して、愛している、貴女だけだと情熱的に愛をささやかれても、私の気持ちを何一つ考えずに連れ去った公爵を愛せるわけがない。
 少しも私の話を聞いてくれず、勝手に気持ちを決めつけて待ってくれなかった。心が納得できない。

 旦那様? そんなの認めない。
 憎い、幸せを奪った男が。
 勝手に幸せだと決めつけるこの国の人たちが。
 とにかくすべてが憎かった。

「愛しい人、何をそんなに泣く? 番の私がいれば幸せだろう?」
「…………」

「あぁ、話さずともわかるよ。幸せすぎて、今までと生活が違うのも怖いのかな。貴女の心は私が全て引き受け、受け止める。さあ、愛し合おう」

 竜人と人との間では番であっても子に恵まれにくいと言う。

 孕みたくない。
 この男の子どもなど宿したくない。

 男は私の体を愛おしむ。
 気持ち悪い、こんな体などいらない。
 男が慣れた手つきで私を奪うから、私の心はますます凍っていった。






「おめでとうございます。ご懐妊です」

 このところずっと体の調子がおかしかった。
 胃のあたりがムカムカして体が熱っぽくてだるい。
 月のものはここに連れて来られてから一度もなかったし、急激な生活の変化に止まってしまったのだと思っていたのに。

 授かりにくいはずが、あっさりと子がやってくるなんて。
 神様も意地悪なことをする。

「公爵様、生まれるまでは夜の営みはお控えください」

「……いつまでだ?」
「そうですね……体調にもよりますがひとまず産後に奥方の体調が戻るまでは……人の子ですから」

 医者の言葉に私は少しほっとした。
 これで、共寝しないですむだろう。
 美貌の公爵などと呼ばれているが私にとってはそれさえも憎らしい。

「これほど早く子を授かるとは……私達は相性がいいのだな。これからも貴女を愛しむと誓う」

 うっとりとした顔で私を見つめる。
 子どもが生まれても私は解放されないのか。
 番というのは、いまいましい。

「……貴女は本当に無口だな。何が欲しい? 貴女の願いを叶えたい」

 それならば、私を解放してほしい。
 でもそれをそのまま口に出したらこの男は私を部屋に閉じ込めるだろう。
 一度逃げ出そうとしてすぐに使用人に見つかった時は、男から朝なのか夜なのかわからないくらい貪られた。
 
 愛が足りなかったのだろう、と言って男はベッドから私がおりることを許さなかった。
 寝室には高いところに小さな窓があるだけ。そこから見える景色をただひたすら見つめて時間をやり過ごす。

 今だって屋敷の外へ出られないのに、これ以上自らの首を絞めるのは嫌だった。
 ニコニコして好意的な使用人たちだって、私にとってただの監獄の番人でしかない。
 この屋敷の中では一人になれる時間は一切なく、逃げようにも逃げられないのだから。

 男に気分転換に買い物や食事に連れて行って欲しいとねだって媚びることができればいいのだろうが、不快感と嫌悪感から言葉にすることが全くできない。
 王族の一員となるべく学んできたことが、少しも役に立たなかった。
 
 それに男は屋敷にドレス、装飾品、異国の菓子など商人に何でも持ってこさせる。
 私が外へ行きたいと思わないように。
 そしてすべての人間関係を断ち切られた。

「私は貴女の家族であり、友人でもある。私がいれば他に誰もいらないだろう? 寂しいことなんてないよ。これから子どもが生まれたらにぎやかになるだろう」
 
 息が詰まる。
 子どもが生まれたら男に隙ができるだろうか?
 そうであって欲しい。
 それとも、再び私を貪るのだろうか……。

「何でも貴女の願いは叶えるよ。私のそばから離れること以外なら。……ゆっくり考えて、愛しい人」
 
 黙り込む私に男は甘ったるい声で言った。

 



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